文化庁のプレスリリース
1935年にデビューしたのち、時勢や年齢に応じて、若い娘や、妻、母といった役を的確に演じつつも、役柄を超え出る存在感で、多くの観客を魅了しつづけた女優・原節子(1920-2015)。本特集では、デビュー間もない初々しい姿が魅力の現存最古の出演作『魂を投げろ』(1935)や、アーノルド・ファンク監督に大抜擢され、国内のみならず海外でも名前が知られることとなった日独合作映画『新しき土』(1937)に始まり、庶民の生活を細やかに表現し、演技の面で新境地を開いた『嫁ぐ日まで』(1940)や、『わが青春に悔なし』(1946)、『晩春』(1949)といった黒澤明、小津安二郎など巨匠監督の代表作、さらに、博打が大好きで夫の衣服まで借金のかたにしてしまう妻を演じたユニークな出演作『ふんどし医者』(1960)など、さまざまな女優・原節子の姿を堪能できるラインナップとなっております。多彩な計23作品(22プログラム)によって原節子の偉大な足跡を振り返るこの機会を、多くの映画ファンの皆さんに周知したく、ご協力賜りますと幸いです。
- 原節子 プロフィール
1920年、神奈川県生まれ。1935年、家計を助けるため横浜の女学校を中退し、義兄で映画監督の熊谷久虎のつてをたどって14歳で日活に入社。同年に『ためらふ勿れ若人よ』(田口哲)でデビューする。1937年、ドイツの名匠アーノルド・ファンクに大抜擢され『新しき土』にヒロインとして出演。理想化された芯の強い日本人女性を熱演し、一躍有名に。海外での公開に伴い、宣伝活動のため欧米を歴訪した。同年に東宝に移籍し、島津保次郎監督作など多くの作品で主演。1947年に東宝を退社しフリーとなった後も、小津安二郎、成瀨巳喜男といった監督と映画史に残る名作を生みだし、娘役から、妻や母親役へと役柄を変えながら、日本映画を代表する大女優として活躍した。最後の出演作となった1962年の『忠臣藏 花の巻 雪の巻』(稲垣浩)から半世紀以上たった現在に至るまで、国内外を問わず多くの人を魅了し続けている。2015年死去。
- 本特集の見どころ
デビュー間もない出演作から最後の出演作まで… フィルモグラフィから厳選した23作品を上映
生誕100年を記念して、原節子の映画人生をスクリーンで振り返る特集プログラムです。映画史上の名作や、再評価すべき秀作も取り上げて、原節子の足跡を辿ります。盲目の少女を演じ、獣のように周囲を警戒する姿が強烈な印象を残す『田園交響樂』や、病弱だが活発な娘をやさしく見守る母親を演じた『ノンちゃん雲に乘る』、戦後の庶民家庭の妻を演じ、喧嘩の最中にお茶漬けをかきこむシーンなどユーモラスかつ躍動感あふれる演技が魅力の『驟雨』など、若い娘を演じた作品から、母親や、倦怠期を迎えた夫婦の妻を演じた作品まで、キャリア全般にわたって上映します。デビュー間もないころの熱演が光る一篇や、スターとしての存在感を活かしつつ、確かな演技で好演した戦後のホームドラマの名作など、原節子の時代や作品ごとに変化する魅力に触れる機会になればと願ってやみません。
多彩な役柄とファッション
女学生(『魂を投げろ』)、時代劇での若い娘(『河内山宗俊』)、中国人姉妹の姉(『阿片戰爭』)、メガネ姿が珍しい探偵助手(『三本指の男』)、キャンバスと絵筆を持ち、チェックのシャツがよく似合う似顔絵描き(『東京の恋人』)など、原節子が演じた多彩な役と、役柄にあわせた制服や和服なども含む多様なファッションも注目です。
名監督や名優との協働
黒澤明、小津安二郎、成瀨巳喜男をはじめ、島津保次郎、千葉泰樹、稲垣浩などの名監督たちとの協働で生み出された映画史に残る名作の数々を上映。また、高峰秀子、笠智衆、淡島千景、三船敏郎、森繫久彌など名優たちとの息の合った掛け合いや、競い合うような名演も必見です。
- 上映作品
1『魂を投げろ』1935年、監督:田口哲/『生命(いのち)の冠』[短縮版]1936年、監督:内田吐夢
2『河内山宗俊』1936年、監督:山中貞雄
3『新しき土』[ドイツ版]1937年、監督:アーノルド・ファンク、伊丹万作
4『田園交響樂』1938年、監督:山本薩夫
5『東京の女性』1939年、監督:伏水修
6『嫁(とつ)ぐ日まで』1940年、監督:島津保次郎
7『阿片戰爭』1943年、監督:マキノ正博
8『わが青春に悔なし』1946年、監督:黑澤明
9『三本指の男』1947年、監督:松田定次
10『誘惑』1948年、監督:吉村公三郎
11『幸福の限界』1948年、監督:木村惠吾
12『晩春』1949年、監督:小津安二郎
13『白痴』1951年、監督:黑澤明
14『麥秋』1951年、監督:小津安二郎
15『めし』1951年、監督:成瀨巳喜男
16『風ふたヽび』1952年、監督:豊田四郎
17『東京の恋人』1952年、監督:千葉泰樹
18『ノンちやん雲に乘る』1955年、監督:倉田文人
19『驟雨(しゅうう)』1956年、監督:成瀨巳喜男
20『女であること』1958年、監督:川島雄三
21『ふんどし医者』1960年、監督:稲垣浩
22『忠臣藏 花の巻 雪の巻』1962年、監督:稲垣浩
- 開催概要
生誕100年 映画女優 原節子
会期:2020年11月17日(火)-12月11日(金)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2 階] 定員:156名(各回入替制・全席指定席)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/hara202010/
料金:
【前売指定席券 (全席指定席・128席)】
一般・シニア(65歳以上)・学生の方は前売指定席券をご購入ください。会場でのチケットの販売はございません。10月27日(火)10時より、チケットぴあにて全上映回の前売指定席券を販売します。[Pコード:551-165]
▷一般 520円/高校・大学生・シニア 310円/小・中学生 100円
【障害者・キャンパスメンバーズ等券 (28席)】
障害者ならびに国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズを対象に、各日の開館時より1階受付にて発券します。
▷障害者(付添者は原則1名)、キャンパスメンバーズ:無料