TOKYO FMのプレスリリース
この度、TOKYO FMで11月15日(日)19時00分~19時55分に放送した特別番組、『Positive~コロナとホテルとラインチャット~』が、「令和2年度文化庁芸術祭 ラジオ部門」において優秀賞を受賞しました。この番組は、新型コロナウイルスに罹患し、療養ホテルに隔離された人々による匿名チャットでのやりとりを、小説家・小川哲の脚本によってラジオドラマ化し、専門家への取材とともに特別番組として制作したもので、評者からは「時代を映し出す作品」と評価をいただきました。
そして、今回の受賞を記念してTOKYO FMとJFNが運営する音声サービス「AuDee(オーディー)」で、この番組のディレクターズカット版を配信することが決定しました。
この番組は、新型コロナウイルスが引き起こした、陽性反応が出た人への風当たりやハラスメントなどの様々な分断を、療養施設となった都内のホテルを舞台に描いたラジオドラマを軸に検証し、さらに医師、社会学者、そしてコロナ罹患者の証言を交えてお届けした作品です。「ポジティブ(陽性反応、積極的・前向き)」という言葉がはらむ日本のこれからを問いかけた物語の脚本は、『ゲームの王国』で第31回山本周五郎賞受賞し、『嘘と正典』で第162回直木賞候補となった新進気鋭の小説家、小川哲が担当しました。
さらに、ラジオドラマに加え、医師、社会学者、療養ホテルを退所した人への取材を通して、「療養ホテルのチャットとはどのようなものだったのか」を紐解いていきました。
そして、TOKYO FMでは今回の受賞を記念して、TOKYO FMとJFNが運営する音声サービス「AuDee(オーディー)」でこの番組のディレクターズカット版を配信することが決定しました。ぜひお聴きください。
この度の「令和2年度文化庁芸術祭 ラジオ部門」優秀賞の受賞を受け、番組に携わった作家・小川哲、国立国際医療研究センター・国際感染症センター長の大曲貴夫、社会学者で詩人の国学院大学教授・水無田気流、ドラマの登場人物で療養ホテル生活の経験者である番組の発起人・番組プロデューサーのTOKYO FM増山麗央からのコメントが届きました。
<作家・小川哲、受賞にあたってのコメント>
世間は今、新型コロナウイルスに関する情報で溢れかえっています。
どのようにすれば感染を防げるか、どれだけの感染者がいるか、感染するとどのような症状になるか。しかし、感染者の心に何が起こるかについては、あまり知られていないように思います。
病気との「もう一つの戦い」について描いたこの番組が、一定の評価をいただけたことを光栄に思います。
<国立国際医療研究センター/国際感染症センター長・大曲貴夫、受賞にあたってのコメント>
文化庁芸術祭での受賞、本当におめでとうございます。改めて拝聴しますと、2020年春当時の私達医療者の混乱ぶり・至らなさぶりに冷や汗が出ました。一方で、多くの方々が知ることのない新型コロナウイルス感染症患者さんの気持ち、悩み、社会復帰後こそが辛いという現状を包み隠さず示して頂いたことに、心からの感謝と敬意を表します。
<社会学者/詩人/国学院大学教授・水無田気流、受賞にあたってのコメント>
「Positiveコロナとホテルとラインチャット」文化庁芸術祭受賞誠におめでとうございます。依然感染者数に歯止めがかからないコロナ禍ですが、この病気の恐ろしいところは、感染者という本来ならば被害者が「加害者」化されてしまうところにあるように思います。未知の病気に罹患し未知の療養環境で孤立化した人達が、いかにして他人との繋がりをもち、心細い思いを共有して行くのか…という試みと、ラジオ特有の「リスナー同士の親密なコミュニティの醸成」が折り重 なった、ラジオならではの良さが活かされたがゆえの受賞かと存じます。人はどのような状況でも、つながりを持ちコミュニティを形成していく…という可能性を感じます。重ねて、おめでとうございます!
<番組プロデューサーのTOKYO FM増山麗央(物語中では、「マンタ」)>
「療養中の皆様、情報交換しませんか」このメモを療養ホテルのエレベーターの中で見つけて、恐る恐る匿名ラインチャットに入り、ホテル療養中の陽性者たち当事者しかわからない辛さ・悲しさ・喜びなどの共有に心救われたので、御礼の つもりでこの番組を企画しました。人は、誰かと「共感し」「繋がる」だけで心が救われるもの。今もまだ自宅やホテルで療養中の方々の心がラジオを通じて少 しでもポジティブになったとしたら、これ以上嬉しいことはありません。朝の来ない夜は無い。あと少し、Positiveに頑張りましょう!
- 【番組概要】
タイトル: TOKYO FM特別番組『Positive~コロナとホテルとラインチャット~』(令和2年度文化庁芸術祭 ラジオ部門 優秀賞)
放送日時: 2020年11月15日(日) 19:00~19:55 TOKYO FM
出 演 者: 藤間爽子、辻しのぶ、山崎一、玉置玲央
インタビュー取材:大曲卓夫(国立国際医療研究センター・国際感染症センター長)
水無田気流(國學院大学教授)・匿名チャットの中の人たち
番組ホームページ: https://www.tfm.co.jp/positive/
制作スタッフ:
プロデューサー:増山麗央 ゼネラルプロデューサー:延江浩
ドラマ脚本:小川哲 演出:伏見竜也 構成:西澤史朗 演出補:伊藤慎太郎
<あらすじ>
2020年4月の中旬、緊急事態宣言が発令された東京都では、医療崩壊を防ぐため、病院に入りきれないコロナ軽症者を隔離するために、宿泊療養という制度がスタートした。軽症者の彼らは、 PCR検査で2回連続して陰性になるまで退所できない。主人公の女性も、都内のビジネスホテルに連れてこられ、不安になる。部屋の外に出ていいのは、1日3回の弁当の配給時のみ。不安な心持ちを持っていたある日、エレベーターの中に小さな付箋が貼られているのに気づく。そこには「療養者の皆様、匿名チャットで繋がりませんか?」という言葉と匿名チャットのURL。そこにアクセスすると、陽性患者同士の極めて前向きな(=ポジティブ)な言葉が溢れていた…医療従事者の人、法律家、IT企業の人、主婦…LINEチャットの中には様々な人がいた!…この物語は、2020年4月に、東京にある『とある療養ホテル』の中で起きた、本当の話。陽性患者たちのラインチャットを元にした、ドキュメンタリードラマです。
<番組プロデューサーのTOKYO FM増山麗央が療養ホテル入院中に撮影したホテル内の様子>
(写真左:療養ホテル内のエレベーターホールに貼られたチャットの案内。ホテルのメモに書かれている。)
(写真中央:PCR検査用の試験管。療養ホテルを退所するには、2日連続で陰性反応が出る必要がある。)
(写真右: 2020年4月24日療養ホテルから撮影)