放送倫理・番組向上機構のプレスリリース
委員会は、本件放送には、民放連放送基準の「(3)個人情報の取り扱いには十分注意し、プライバシーを侵すような取り扱いはしない」に反し、「適正な言葉と映像を用いると同時に、品位ある表現を心掛ける」よう求める放送倫理基本綱領および「人権の尊重」と「報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない」と求める民放連の報道指針に反する放送倫理違反があったと判断した。
■ 委員会の判断――放送倫理違反があった
本件放送は、特に性的少数者の人権や当事者の社会的困難への配慮が課題として議論されている時代に、もっとも感性が鋭敏であるべき放送が、著しく配慮を欠くやり取りを放送した点で看過できない問題がある。
委員会は、本件放送には、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準「(3)個人情報の取り扱いには十分注意し、プライバシーを侵すような取り扱いはしない」に反し、「適正な言葉と映像を用いると同時に、品位ある表現を心掛ける」よう求める放送倫理基本綱領および「人権の尊重」と「報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない」と求める民放連の報道指針に反する放送倫理違反があったと判断した。
■おわりに~10年目の「痛恨」
本件放送には明確な放送倫理違反があったものの、放送の中でコメンテーターから直ちに的確かつ厳しい指摘がなされたことに加え、放送後の読売テレビの対応は、自主・自律の理念に基づく放送局の対処の在り方として高く評価したい。
また、本件放送の検証を通して明らかになった問題は、近年「報道ニュース番組」と「情報バラエティー番組」との境界が、どんどん曖昧でボーダレスになっていることの「危うさ」でもある。
「報道番組」であるうちは、プライバシーの尊重、人権意識や事実を確かめる裏取りといったことについて神経をとがらせていたチェック体制が、「情報バラエティー番組的」になったからといって、軽んじられていいはずはない。逆に、政治や社会問題を扱うようになった「情報バラエティー番組」においても、「報道番組」同様の、深い問題意識やチェック体制は必要であろう。むしろ、曖昧でボーダレスになったからこそ、それぞれの知見や認識を共有し、これまで以上に視聴者のプライバシーや人権に配慮した番組作りを、放送局、放送界全体で希求しなければならない。
ベテランの番組関係者は、今回の失敗を「痛恨」という言葉で結んだ。開始当初は、試行錯誤を繰り返し、視聴率も低迷していた番組が、10年たってやっと、「ここぞ」という時に見てもらえるように育ってきた、と言う。
10年かけて築いた信頼を、一瞬で失うこともある。しかし同時に「痛恨」からしか、深く心に刻まれないこともある。その「喪失」と「痛恨」から、放送へのより深い信頼は生まれるのか?彼らのこれからに期待したい。
■委員会決定の全文はこちら
https://www.bpo.gr.jp/?p=10156&meta_key=2019
<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903
■ 放送倫理・番組向上機構 概要
名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とした非営利・非政府の団体。言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって設置され、以下の三委員会から構成される。
委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所:
東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:
濱田 純一