現代の観客のための能『新作能「長崎の聖母」「ヤコブの井戸」』上演決定。2演目セット券をカンフェティで限定発売。

ロングランプランニング株式会社のプレスリリース

銕仙会による座・高円寺 夏の劇場08『新作能「長崎の聖母」「ヤコブの井戸」』が2021年8月4日 (水) ~8月8日 (日・祝)に座・高円寺(東京都杉並区)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 ⼤剛)にて発売中です。

カンフェティでチケット発売中。
http://www.confetti-web.com/tessenkai
通常チケット:一般:4,500円(全席自由・税込)
2演目セット券:8,000円(全席自由・税込)
※セット券はカンフェティ限定発売です。日時によってA~Hパターンがございます。

公式ホームページ
https://tessen-contemporary.com/2021/
 

現代の観客のための能

中世に生まれ、何百年とその命脈を保ってきた能。その伝統的な形式・技能の保存・継承は大切です。しかし、いま、能は多くの人に観られているとは言い難い状態です。古典作品を繰り返し上演するだけでは、現代の観客は自分との関わりを見出せないのではないか…。そのような思いから、本企画では、現代の観客に能を自分の生きる社会を表現する芸術だと感じてもらうために、新作能2作品を上演します。

能で問う、現代の課題

本企画で上演する故・多田富雄作「長崎の聖母」(2005 年長崎にて初演)とディートハルト・レオポルド作「ヤコブの井戸」(2019 年欧州にて世界初演。今回が日本初演)は、まさに現代の観客のための能です。「長崎の聖母」は原爆投下を描くことで、近代科学技術が産み落とした核兵器の悲惨を訴えます。「ヤコブの井戸」は、異なる民族同士が砂漠で水を分け合うという新約聖書の一節を元に創作されました。今なお世界中で続く民族・宗教間の諍いの和解への可能性を描き、真の多様性とはなんなのかをグローバル時代を生きる私たちに問いかけます。

 

​現代の多様な観客に訴える新しい能の表現を追求
本企画では、作品内容だけではなく表現方法の面でも、現代の多様な観客に訴えるために、現代舞台芸術の劇場である座・高円寺での上演、舞台美術・照明・映像の導入などに挑戦します。そのために、現代演劇で長く活躍する劇作家・演出家の佐藤信(演出協力で参加)や、映像デザインの飯名尚人ら異なる才能を集めて、チームづくりを行いました。また、英語字幕投影も実施し、日本語話者以外の層にリーチアウトします。
さらに、通常は地域の合唱団に依頼している「長崎の聖母」の聖歌を、メゾソプラノ歌手の波多野睦美が引き受け、表現の一翼を担います。そして、「ヤコブの井戸」ではオーストリアとポーランドの俳優が参加、アイ狂言(野良猫)は原語のドイツ語で上演します(日本語・英語字幕あり)。
 

  • 演目について

『長崎の聖母』作:多田富雄
津和野からの巡礼者が真夏の陽の下、長崎・浦上天主堂を訪れ、一人涙する老女に出会う(津和野は明治初年の厳しいキリシ タン弾圧「浦上四番崩れ」によって浦上から多くの信者たちが流され拷問にかけられた土地の一つ)。老女は1945年8月9日に 火の海となった浦上での被爆の有様を語り夕闇に消えていく。巡礼者は天主堂の修道僧とともに祈り、聖歌が響く中、青い ベールの女が現れる。その姿は被爆者の霊か聖母か。女は聖母マリアの慈悲を伝えるために現れたと言い、長崎の復活、世界 平和と魂の救済を祈り舞を舞う。原爆の能をという長崎市民の求めに応じて創作され、2005年浦上天主堂で初演された。科学 と世界諸問題に関するパグウォッシュ会議長崎や、核拡散防止条約検討会議開催中のニューヨーク、そしてウイーン・パリ・ワ ルシャワなどでも上演。曲中の聖歌は毎回現地の合唱隊によるが、今回はメゾソプラノ歌手の波多野睦美が出演。 

『ヤコブの井戸』作:ディートハルト・レオポルド
二人のユダヤ人がヤコブの井戸でパレスチナ人の女に出会う。女は、何百年もの昔、ユダヤ人はサマリア人との接触を避けていたにもかかわらず、サマリア人の女性にこの井戸で水を分け与えたユダヤ人男性の話をする。
対立する二つの民族が砂漠で一つの井戸の水を分け合うという「新約聖書」ヨハネの福音書の物語を題材にした能。今なお世界で絶えぬ民族間、宗教間の諍いに疑問を呈し、象徴としての水を分け合うことの意味を問う。ウィーンの心理学博士でアート・キュレーターのディートハルト・レオポルドと清水寛二が数年に渡り対話を重ねて創作した作品。2019年にウィーン(主催:墺日協会主催、会場:オデオン座)、パリ(主催・会場:パリ日本文化会館)、ワルシャワ(主催:ワジェンキ美術館、会場:ロイヤルシアター)で世界初演、今回が日本初演となる。2019 年の初演では現地の俳優が参加し、多国籍プロダクションで上演された。今回もポーランドとウィーンから初演に出演した俳優が参加、アイ狂言はドイツ語で上演する(英語・日本語字幕あり)。
 

ヤコブの井戸 撮影;銕仙会ヤコブの井戸 撮影;銕仙会

 

  • プロフィール

『長崎の聖母』作者 多田富雄(ただ・とみお)
1934~2010年。免疫学者、文筆家。東京大学名誉教授。免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞の発見など、免疫学者として優れた業績を挙げ、野口英世記念医学賞、朝日賞、エミール・フォン・ベーリング賞などを受賞。1984年に文化功労者に選ばれる。能への造詣が深く、新作能『無明の井』『望恨歌』『一石仙人』のほか、戦争三部作『原爆忌』『長崎の聖母』『沖縄残月記』などを創作。著書に『イタリアの旅から̶科学者による美術紀行̶』『免疫の意味論』(大佛次郎賞)『生命の意味論』『私のガラクタ美術館』『独酌余滴』(日本エッセイスト・クラブ賞)『脳の中の能舞台』『寡黙なる巨人』(小林秀雄賞)『残夢整理昭和の青春』『寛容のメッセージ』など多数。

『ヤコブの井戸』作者 Diethard Leopold(ディートハルト・レオポルド)
1956年ウィーン生まれ。精神療法医。神経心理学を専門とする心理学博士。オーストリアの代表的な近代絵画を数多く所蔵するレオポルド美術館の設立者であるルドルフ・レオポルドとエリザベス・レオポルドを両親に持ち、自らもキュレーターを務める。日本のアートや伝統芸能に造詣が深く、根付、浮世絵、屏風、能面等のコレクターでもあり、オーストリア・日本間の文化交流に深く寄与。2019年のオーストリア・日本間外交および経済交流150周年実行委員も務めた。

演出・出演(シテ)清水寛二(しみず・かんじ)
1953年奈良県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、銕仙会に入門し、故観世寿夫、故八世観世銕之丞、九世観世銕之丞に師事する。銕仙会公演などで古典曲の上演を続ける一方、復曲や新作能創作にも励み、故多田富雄氏作の新作能『一石仙人』『沖縄残月記』『長崎の聖母』などの演出・シテをつとめる。現代劇、ダンスなど他の表現分野とのコラボレーションにも取り組み、小池博史・佐藤信・田中泯らの作品に参加、2018年より高橋アキらと「青山実験工房」を実施している。また、琉球の組踊、中国の昆劇、インドのクーリヤッタムなど、他の伝統芸能と共同での舞台作りも行う。2005~2015年沖縄県立芸術大学非常勤講師。現在、東京藝術大学非常勤講師、銕仙会理事。

主催 公益社団法人 銕仙会(てっせんかい)
銕仙会は江戸後期に能楽シテ方観世流十五世宗家観世左近元章のときに分家した、観世銕之丞家を中心とした演能団体。第二次世界大戦後は観世寿夫・榮夫・静夫(八世銕之丞=人間国宝)らを中心に、広く舞台芸術の視野から能を見直し、地謡をはじめ、ワキ方、囃子方、狂言方の全ての役を大切にすることで密度の高い舞台を実現し、高い評価を確立した。現在も九世銕之丞を中心に、従来の作品の演出的見直しや現代に生きる演能活動を続けるほか、他の芸術分野とのコラボレーション作品や現代演劇、映画などにも参加するなど、意欲的に活動している。近年の新作能の取り組みとして『調律師―ショパンの能』『鎮魂―アウシュヴィッツ・フクシマの能』(ともに前駐日ポーランド共和国大使ヤドヴィガ・ロドヴィッチ作)などがある。
 

能面「猫」撮影:銕仙会能面「猫」撮影:銕仙会

 

  • 出演者/スタッフ

【出演者】
シテ:清水寛二
ワキ:殿田謙吉
ワキツレ:ヤクブ・カルポルク(ヤコブ)
アイ:小笠原由祠(長崎)
ニーナ・フォグ(ヤコブ)
笛:松田弘之
小鼓:飯田清一
大鼓:白坂信行
太鼓:金春惣右衛門(長崎)
地謡・後見:
観世銕之丞、
西村高夫、柴田稔、小早川修、北浪貴裕
長山桂三、谷本健吾、安藤貴康、観世淳夫
歌唱:波多野睦美(長崎)

【スタッフ】
作:多田富雄(「長崎の聖母」)、ディートハルト・レオポルド(「ヤコブの井戸」)
演出:清水寛二
ドラマトゥルク:小田幸子
演出協力:佐藤信
照明プラン:横原由祐
映像プラン:飯名尚人
美術協力:岡本羽衣
舞台監督:伊東龍彦
制作:武川芳樹、奥田安奈
提携:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
後援:杉並区、長崎市、株式会社長崎新聞社、長崎平和推進協会ほか
助成:芸術文化振興基金、(公財)関西・大阪21世紀協会ほか
主催:公益社団法人銕仙会

 

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。