能の名作「隅田川(すみだがわ)」がオンライン配信!6月13日(日)16時から

公益財団法人 山本能楽堂のプレスリリース

大阪市で最も古い歴史を持つ山本能楽堂。大阪城を築城した秀吉の町割りがそのまま残る城下町にある、大都会の真ん中のビルの谷間に残る国登録有形文化財の小さな能楽堂です。歴史の陰翳が刻まれた、約95年の歴史を持つ能楽堂から 能の名作「隅田川」がオンライン配信されます。6月13日(日)の午後4時から。初夏の午後のひと時、650年の伝統を持つ能の世界をじっくりとお楽しみください。(終演後、1週間の期間限定でアーカイヴ配信も行われます)
公演期間:2021/06/13(日)~2021/06/19(土)
料金:2000円
イープラス Streaming+でライブ配信します。
下記URLよりお申込み下さいませ。https://eplus.jp/
アーカイブ配信は6月19日(土)23:59まで行わせていただきます。

 

「隅田川」は、能の中でも名作と言われ、人気の高い演目です。
わが子が人買いにさらわれたために心が狂乱し、狂た女となって息子をはるばると最果てまで探し歩く母親。ようやく息子の消息を知りますが、わが子はすでに亡くなってちょうどその日が一周忌の法要でした、、、、
あまりにも悲しい物語ですが、人々の心を捉え続け、歌舞伎や浄瑠璃をはじめとする後の芸能にも影響を与え「墨田川もの」というジャンルが形成されるまでなりました。

http://www.noh-theater.com/performance.php

6月13日16時オンライン配信!

 

 

【登場人物】
◇シテ 狂た女(山本章弘)

シテ:子を探し歩く母親

梅若丸の母。一人息子を人買いにさらわれ、京の都から東国まで子を探す旅をしている。

 

 

手に持つ笹は「狂い笹」と呼ばれ、狂乱している人物が、その状態を象徴するように持つ小道具。

◇子方 梅若丸(古田東聖)

 

人買いにさらわれ、奥州へ向かう途中、隅田川の川岸で亡くなる。
◇ワキ 渡守(原 大)
隅田川の渡し守。対岸への舟を出している。
◇ワキツレ 旅人(橋本 宰)

 

 

 

 

 

 

 

女のことを渡守に教える。

 

 

 

【あらすじ】
 渡守が隅田川のほとりで船に乗せる客を集めていると、都からの旅人がやってきて、後から女が来ることを教えます。その日は大念仏が催されていました。女は都北白川に住んでいましたが、子どもが人買いにさらわれたために心が狂乱し、子どもの行方を尋ね歩き、はるばる東国までやってきたのでした。そして、渡船を頼みますが、渡守は船に乗せるかわりに、面白く狂ってみせるように言います。すると女は『伊勢物語』の話を引用し、「隅田川の渡守ならば“日も暮れぬ舟に乗れ”というべきだ」とやりこめます。そして古歌を引いて嘆きますが、その様子を哀れに思い、渡守は船に乗せてやります。

 

 

 川を渡っている途中、渡守は対岸で行われている大念仏は、一年前に人買いに連れさられ、そこで病死した子どもの一周忌の回向であると話します。その子供は、京都の北白川に住む、吉田のなにがしの息子、梅若丸だったと説明します。女は、それが我が子であることを知り泣き伏します。女に同情した渡守は、子供が埋葬されている墓へ連れて行きます。女が墓前で泣きながら念仏を唱えると、子どもの声が聞こえ、我が子の亡霊が目の前に現れます。母が息子を抱こうとすると、子供は姿を消してしまいます。やがて夜が明けると、そのまぼろしは消え失せ、我が子と思ったのは、墓の上の草でした。

 狂気女物は、子どもや夫など愛する人と引き離された女が狂気におちいるものの、相手に再会し、正気に戻るというハッピーエンドのものが一般的ですが、「隅田川」だけは主人公が生きて巡り会うことができない、悲劇的な演目です。人買いに子をさらわれた話、子どもを失って悲観にくれる母の話は当時たくさんあったと思われますが、『伊勢物語』の王朝文芸を取り入れながら、緻密な表現や演出で、母というものの悲しさを見事にうたいあげた名曲です。

 

 

 

【作り物『小山・柳挿』】
梅若丸の塚(お墓)を表している。竹で組んだ枠に布を巻き付け、上部には柳の葉を付ける。

【能の型『シオリ』】
指を伸ばした手を、顔より少し離れた前方で目を覆うように上げて、こぼれる涙をおさえる動きをすると同時に面が少し下を向くようにして、悲しみなどを表現する型。片手の場合と両手の場合がある。両手の場合は号泣していることを表す。

シオリ

【狂気女物と能「隅田川」の背景】

狂気女物と言われる能には、「隅田川」「桜川」「三井寺」「百万」「花筐」「班女」などがあります。

その多くは、愛する人との離別により狂乱状態になった女性の主人公が、狂気に事寄せて遊芸を見せることを眼目としており、最後には思う人に再会、狂気が収まり大団円となりますが、「隅田川」では探し求めている我が子は既に世を去り、再会することは叶わない、という点で、その他の狂気女物とは趣を異にしています。

「隅田川」の物語は、現在も東京都墨田区、隅田川の川辺に建っている木母寺に伝わる「梅若伝説」が元になったと言われています。平安時代中期の貞元二年(九七七)に天台宗の僧、忠円阿闍梨が梅若丸の供養のために建てられた念仏堂が起源のこの寺は、梅若寺と名づけて開かれました。今も毎年四月十五日には梅若丸の命日として、梅若丸大念仏法要などが行われています。

【「隅田川」にみる「伊勢物語」】

能「隅田川」の詞章には「伊勢物語」の九段目「東下り」が下敷きとなっています。

曲中に引かれている「名にし負はば いざ言問はん 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」という和歌は「伊勢物語」以外に、「古今集」にも在原業平の歌として収録されており、遥々と旅をしてきた隅田川で、都にはいない鳥なのに「都鳥」という名前の鳥に出会い、都に残してきた恋人を思いやって詠んだ歌です。

 隅田川という土地と、遠く離れた人を思う気持ちが共通する「隅田川」と「伊勢物語」。「ありやなしや」と問いかけるこの和歌を引用することで、母親が遠くに行ってしまった我が子を尋ね求める気持ち、そのために都から遥か東国までやって来たという状況が、より奥行きを持って表現されているのではないでしょうか。

少しわかると、おもしろい!

オンラインでお目にかからせて頂くのを楽しみにいたしております!

【出演者】

シテ(狂気女・梅若丸の母)   山本 章弘
子方(梅若丸の亡霊)   古田 東聖
ワキ(隅田川の渡守)   原 大
ワキツレ(旅人)     橋本 宰

笛     左鴻 泰弘
小 鼓   古田 知英
大 鼓   守家 由訓

後 見 赤瀬 雅則 笠田 祐樹 山本 麗晃
地 謡 杉浦 豊彦 浦田 保浩 河村 和晃 河村 浩太郎

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