聖域を暴く文学と音楽の融合。KATARI単独公演『聖域-sanctuary-』レポート活動2周年目、その先駆けに密着!

ISARIBI株式会社のプレスリリース

 未だ花冷える寒さを残す4月2日(土)。純文学樂団『KATARI』の第2回単独公演となる『聖域-sanctuary-』が、神奈川県横浜市の神奈川芸術劇場にて開催された。会場は多くのファンで満たされていた。

 

 会場となった神奈川芸術劇場は、その名の示す通り、主に演劇やミュージカル、ダンスなどの開催を主とする施設である。由緒正しいこの劇場に現れた、文学界・音楽会の異端児にして麒麟児のKATARI。彼らがどのような公演を魅せるのか?開演前の場内の静かなどよめきはそのような期待で膨れ上がっていく。

 『聖域-sanctucary-』と題された本公演が、KATARIにとってもかつてない規模の挑戦であったことは言を俟たないだろう。照明、音響、動員数、どれを取っても過去公演には及ばぬ密度である。場内に満ちる張り詰めた空気感は、まさしく「聖域」と呼ばれるに相応しい荘厳さを有していた。

 そしてこの後すぐに、聴衆は公演が聖域たる所以を身を以て知ることとなる。

 舞台はあらたかな大樹を思わせる太縄と、繭によく似たいくつかの照明で飾られている。穏やかに漂うスモークも相まって、そこはまるで蚕の巣を想起させた。

 ゆっくりと登壇した間宮が一際大きな繭へと腕を差し入れる。繭を突き破って現れた神尾。この誕生が触れ得ざる禁忌であったことを、悲壮なBGMと凄まじい振動が告げていた。

 鮮烈な夕焼けを思わせる紅色の照明は、眼を灼かんばかりに眩い。2人の純白の衣装は、聖と俗の径庭を示すかのように紅色に対して目覚ましい。

 そうして1曲目に歌われたのは『女 相聞 詩集 / 芥川龍之介』。人間性の深淵を映し出すかのように荒涼とした灯りが、神尾の殺伐とした語り口に色を添える。

2人の語りは場内を一挙にして席巻する。その「語り」は、同時に卓越した表現力に拠る「騙り」でもあり、聴衆に荒野を幻視させた。

 「なし……なし……」。皮肉げな、しかし同時に哀しげでもある神尾の声が響き渡る。次の曲『HUMAN LOST・かくめい / 太宰治』が始まる合図だ。不気味な舞台で歌われる「にんげんの底からの革命」を訴える音色は、絶望の最中で垣間見えた希望の光に縋り付く、太宰治の哀切さをありありと表現していた。

 

 続くのは発表されたばかりの新曲である『三十歳 / 坂口安吾』。「あの人」との官能的な過去に対して寂寞とした郷愁に耽る世界観が、聴衆に寒々しさを覚えさせずにはおかない。間宮の奏でる怜悧なポップ調の音色は、坂口安吾もかつて身を竦めたであろう東京の冬、その乾ききった空気を感じさせる。

 鬱々とした空気を振り払うかのように次いで語られたのは『雨ニモマケズ / 宮沢賢治』。言わずと知れたこの詩作品を語る2人の舞台は、雨上がりを思わせる澄み切った光に包まれている。KATARIはこれまでの3曲で冷たく握り潰した観客の心根に、暖かな水を注ぐかのような一面を見せた。

KATARIの濃密な世界観は、今や聴く者の感情を恣にしていた。観客が2人の紡ぐ音に翻弄され続ける様は、人の手及ばぬ荘厳な「聖域」で傅く亡者を思わせる。

 転調は未だ已まない。静かに、しかしその緩慢な歩みへ震えんばかりの力強さを込めて『秋の瞳 / 八木重吉』と『星、夢 / 寺田寅彦』が続く。間宮の乗せる音色はEDMのようにリズミカルで、時には凱歌を思わせるトランペットも挿まれた。雨空の下で育まれた善への意思が、夜空に捧げる生への賛歌へ昇華していった。心優しい老父を思わせる神尾の語りが、聴衆の胸を賦活する。 

 そして一度の暗転。病室の廊下か、あるいは死刑を告げる官吏か、廊下を歩む思い靴音が木霊する。酔いが冷め、寒さを思い出したかのように、KATARIはまたも陰鬱とした曲『死の淵より / 高見順』『邪宗門 / 北原白秋』へ移る。新たに深い黒を基礎色とした衣装を纏った2人は、先ほどまでの穏やかさが嘘かのように、生の卑しさへの痛烈な蔑みと嘲りを表現した。

 人の卑しい在り様は滑稽だが、しかし同時にその滑稽さにこそ人は美しさを見出さずにはいられない。あるいはそれほどまでに卑しくしがみついていたものを、惜しげも無く続く命へ譲り渡す気高さにこそ美しさはあるのやもしれない。

『夢と現実 / 与謝野晶子』『ゆづり葉、山の歓喜 / 河井酔茗』『暁と夕の詩 / 立原道造』の語りは、そのような省察を諭すかのようだ。間宮の乗せるローファイなビートに合わせ、神尾の語りが意地悪い青年から情熱的な教師まで自在に変化する。

クライマックスは『山羊の詩 / 中原中也』より始まる。

 悲しみを糊塗するかのような空元気、あるいは諦念を神尾が語る。幼年期から現在までを振り返る中原中也の詩を語る神尾の声もまた、なだらかに老いて嗄れていく。「汚れつちまつた悲しみに」、間宮と神尾の悲痛な合唱は観る者の裡に哀愁を抱かせずにはおかない。
 と思えば、次ぐ『閑天地 / 石川啄木』 ではポップな曲調に合わせて神尾の顔も笑顔をほころばせる。遊ぶ子供のように朗らかな声音で、曲は『崖端歩き』に続く。

 『崖端歩き』は、過去の文学作品の引用ではなくKATARIオリジナル楽曲だ。文学と音楽の融合という、未だかつて誰も歩んだことのない獣道を進むKATARIの在り方を謡う曲だ。崖の危うさを知りながら「楽しければいいじゃないか」と語る神尾の顔は、悪戯げな微笑で華やかである。

 最後に歌われる『朔にー真正の画工ー』もまたKATARIオリジナルの楽曲だ。この曲は「語り」あるいは「騙り」に対する彼らの所信表明であり、活動の始まりと同時に終わりでもあるのだろう。神尾と間宮の熱唱は、こちらを鼓舞するようでもあるし嘯いて韜晦するような迫力に満ち満ちていた。

 人の営為の最たるもの、言葉。その言葉が及ばぬ「聖域」の神秘を、KATARIは見事にその表現で暴ききった。

終演後まもなく、SNS等でKATARIはいくつかの驚くべき告知事項を発表した。その内容は以下の通りだ。

其ノ壱:アーティスト「YOASOBI」を産み出した小説作品プラットフォーム「monogatay.com」とKATARIの奇跡のコラボレーション企画開催が決定。KATARIが紡ぐ新たな純文学物語が始まる。
【音楽x純文学の樂団「KATARI」とのコラボ企画】文豪をテーマにした純文学を春夏秋冬ごとに楽曲・映像化するコンテスト「モノガタリカタリ」を開催!
https://monogatary.com/notification/notice/364758

其ノ弐:KATARI楽曲ストリーミング配信決定。
楽曲ストリーミングサービスリンク
https://nex-tone.link/4595121952018

其ノ参:ONKYO(オンキヨーホームエンターテイメント株式会社)より、KATARIボイス入りフルワイヤレスイヤホンの販売が決定。

其ノ肆:大手音楽専門誌「ロッキングオン」にインタビュー掲載。
声優・神尾晋一郎とゆよゆっぺこと間宮丈裕によるユニット・KATARIが創り出す「文学×音楽」の世界とは? インタビューで迫る。
https://rockinon.com/interview/detail/202093

其ノ伍:KATARI×米国州立オハイオ州大学のコラボ活動が決定。
米国オハイオ州立大学の日本文学専門教授や学生と共に、KATARIの楽曲を使用した歌詞の英語ローカライズと日本純文学資料作成に取り組む。

本公演の完成度のみならず、今後の活動においても瞠目すべき躍進を遂げたKATARI。今や日本国内に留まらず世界へと漕ぎ出したその物語は、これからどのような展開を見せるのか?期待はいや増すばかりだ。

 
【セットリスト】
01:女 相聞 詩集 / 芥川龍之介
02:HUMAN LOST・かくめい / 太宰治
03:三十歳 / 坂口安吾
04:雨ニモマケズ / 宮澤賢治
05:秋の瞳 / 八木重吉
06:星、夢 / 寺田寅彦
07:死の淵より / 高見順
08:邪宗門 / 北原白秋
09:夢と現実 / 与謝野晶子
10:ゆづり葉、山の歓喜 / 河井酔茗
11:暁と夕の詩 / 立原道造
12:山羊の詩 / 中原中也
13:閑天地 / 石川啄木
14:崖端歩き
15:朔にー真正の画工ー

【KATARI詳細】

神尾晋一郎&間宮丈裕(DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ) による純文学樂団

編纂:神尾晋一郎
作曲:間宮丈裕/DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ
朗読及び歌唱:神尾晋一郎、間宮丈裕

詠手
神尾晋一郎(SHINICHIRO KAMIO)
https://twitter.com/s_kamio113

紡手
間宮丈裕/DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ
https://twitter.com/yupeyupe

KATARI FANBOX
https://katari.fanbox.cc/

■オフィシャル YouTube: https://t.co/MBfDzIeaFV
■オフィシャル Twitter: https://twitter.com/KATARI0803
■楽曲ストリーミングサービスリンク:https://nex-tone.link/4595121952018

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