KAAT神奈川芸術劇場が企画製作・主催した「視覚言語がつくる演劇のことば」。ろう者と聴者により「見る」ことから演劇体験を立ち上げるプロジェクト、新作短編の作品を公開!

公益財団法人神奈川芸術文化財団(社会連携ポータル)のプレスリリース

視覚言語に軸を置いた演劇体験をろう者と聴者がつくるプロジェクト「視覚言語がつくる演劇のことば」。今年新たに創作された新作短編作品『夢の男』の演とアフタートークを2022年3月31日(木)よりオンラインにて公開いたしました。

 

■KAAT Youtubeチャンネルにて配信中
・短編作品『夢の男』(2022年)
https://www.youtube.com/watch?v=HeeLZN_xeTw

【『夢の男』あらすじ】
夢の中で会った、自分と顔が似た男。「身体をなくした」というその男に身体を探すことを頼まれた私は、ビルの屋上に辿り着く。指をさした先に目撃した気配の塊は、やがて私の身体を飲み込んでいくー  

・アフタートーク
https://www.youtube.com/watch?v=B21z0vzyAOY&t=3s

 

 

見どころ1  手話や字幕などを後からつけるのではなく、予め作品に組み込む

「視覚言語がつくる演劇のことば」は、演劇に手話や字幕などのアクセシビリティを後からつけるのではなく、あらかじめクリエイティブな要素の一部として組み込みながら、実験的で質の高い演劇をつくることを目指しています。今年は昨年に引き続きオンラインでの映像配信となりますが、昨年制作した短編作品『夢の男』(作:藤原佳奈)のテキストをもとにしながら、ろう者が演者としてだけでなく、企画から関わってきたことが特徴です。

見どころ2  身体性や専門分野の異なるろう者と聴者の協働による制作

ろう者の映画監督として活躍する今井ミカ、ろう者の俳優・今井彰人、そして聴者の俳優・大石将弘、聴者の舞台美術家の中村知美という、身体性や専門分野の異なる4名と、障がいと表現に関するさまざまなプロジェクトを企画してきた田中みゆきにより、『夢の男』の世界を新たに再構成しました。制作現場では、ろう者と聴者が対等に意見を出し合い、共有できる視覚言語や身体表現を探りながら、慎重に議論が進められてきました。
 

見どころ3  前例の少ない制作の過程を共有するアフタートークやグラフィックレコーディングも公開

ろう者と聴者は、身体や言語の違いだけでなく、それらの違いから育まれる、異なる文化を持っています。ろう者と聴者の境界はどこにあり、互いの身体や文化を尊重しながら、どのようにそれを乗り越えられるのでしょうか。昨年始まったばかりの探求を、今年は制作を通してさらに深めていきました。作品とともに、制作の過程での発見や気づきを共有するアフタートークを、グラフィックレコーディングとともに公開します。あわせてお楽しみください。

 
【コメント】

今井ミカ(映像)
『夢の男』は、ろう者と聴者のコラボレーションによって、現実の世界ではなく、夢の中の抽象的な世界の特徴や感覚などを描いた点が見どころです。ろう者と聴者が各々の専門性をもとに役割を分担し、日本手話と日本語という異なる二つの言語と文化が交じり合った会話の中で、視覚言語×身体表現を丁寧に時間をかけてつくり上げました。とりわけ、ろう者と聴者の文化の間の情景の想像をどう掻き立てるかに力を入れ、男二人の目の動きといった点などにもこだわりながら、これまでにない世界観をつくることに挑戦しました。夢の世界と現実との境界にあるモノを、観る人それぞれの多様な視点で体感いただきたいと思います。

田中みゆき(企画)
昨年制作した短編作品『夢の男』からテキストを引き継ぎ、ろう者と聴者による協働により重きを置いて制作したのが、今回の『夢の男』です。昨年は音声言語と手話という、言語の違いに伴う語り方の違いや、それぞれが視覚言語を生成する過程を扱いました。今年は言語の違いを超えて、ろう者も聴者も体感を共有できるような、視覚言語と身体表現によるナラティブのあり方を見つけるべく、試行錯誤してきました。見る人それぞれが言語を受け取り、物語を想像する余白を大きく残した作品となっています。視線や手の動きなどに着目しながら、ぜひ何度かご覧いただけたらと思います。

【制作チーム】
映像:今井ミカ
出演:今井彰人 大石将弘
美術:中村友美
照明:富山貴之
協力:數見陽子  岡本麻姫子
録音:大木洵人
整音:長尾憲一
手話通訳:蓮池通子 小松智美 山崎晋 新田彩子 立石聡子 村山春佳 武井誠
デザイン:畑ユリエ
企画:田中みゆき
企画製作・主催:KAAT神奈川芸術劇場
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会

【プロフィール】
 

今井ミカ(いまいみか)
映画監督。第一言語が、日本語と異なる日本手話。大学で映像制作を学び、手話言語学研究のため香港に留学。お笑い芸人「デフW」や「手話で楽しむ生きものずかん」など幅広くエンターテインメントをプロデュース、CMの手話監修。主な作品は、2019年劇場公開の長編映画『虹色の朝が来るまで』。2021年東京国際ろう映画祭上映『ジンジャーミルク』。2022年にYouTube公開の 日本財団電話リレーサービスCM監督作品『できることを、あきらめない。』。

 

今井彰人(いまいあきと)
俳優/映画監督。主な出演作は、日本ろう者劇団創立30周年記念公演「エレファントマン」主演、日本ろう者劇団「小次郎 対 武蔵」主演、NHK Eテレ「みんなの手話」スキット出演、映画美学校 アクターズ・コース 2021年度公演『かもめ』出演など。2009年に群馬県立ろう学校卒業後、淑徳大学入学と同時に 日本ろう者劇団へ入団。俳優として舞台をはじめ、テレビや映画など出演し、その他にも映画監督や手話指導等、幅広く活躍中

 

大石将弘(おおいしまさひろ)
俳優。ままごと、ナイロン100℃に所属。ロロ、木ノ下歌舞伎、KUNIOなど様々なカンパニーの作品に出演。また、劇場外での演劇創作のプロジェクトにも多数参加。2015年、スイッチ総研を設立。日本各地の商店街や広場など主に劇場外にて作品を創作・上演。「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」メンバーと共に立ち上げた「きくたびプロジェクト」では、美術作品や空間との新しい出会い方を提案する音声作品を発表している。

 

中村友美(なかむらともみ)
新潟県出身。舞台美術家・セノグラファー。舞台・ダンス作品中心に活動。近年参加作品に範宙遊泳『バナナの花は食べられる』(作/演出・山本卓卓)、全国共同制作オペラ歌劇『夕鶴』(演出・岡田利規)、Baobab『ジャングル・コンクリート・ジャングル』(振付/演出・北尾亘)。またリサーチ型のプロジェクト等にも参加。女子美術大学非常勤講師

 

田中みゆき(たなかみゆき)
「障害は世界を捉え直す視点」をテーマにカテゴリーにとらわれないプロジェクトを企画。表現の見方や捉え方を障害当事者を含む鑑賞者とともに再考する。近年の仕事に「音で観るダンスのワークインプログレス」(2017年〜)、「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT、2021年)など。2025年大阪・関西万博日本館基本構想策定クリエイター。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院非常勤講師

 

 

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。