株式会社WOWOWのプレスリリース
WOWOW UFCオフシャルサイト(https://www.wowow.co.jp/sports/ufc/)
(写真左より)グローヴァー・テイシェイラ、ジャマール・ヒル/Getty Images
日本時間の1月22日(日)、ブラジル・リオデジャネイロのジュネス・アリーナで『UFC283』が行われる。メインイベントは、昨年12月11日の『UFC282』で行われたヤン・ブラホビッチvsマゴメド・アンカラエフのライトヘビー級王座決定戦がドローに終わったため、グローヴァー・テイシェイラvsジャマール・ヒルで王座決定戦を行うこととなった。この試合の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。
――『UFC283』のメインイベントは、前回ブラホビッチvsアンカラエフのライトヘビー級王座決定戦がドローに終わったことで、2大会連続、別カードであらためて王座決定戦が行われることとなりました。
「これは前代未聞ですよね。テイシェイラのほうは、もともと前王者のイリー・プロハースカが肩のケガで王座返上しなければ12月にタイトル挑戦の予定だったので、ある程度の準備はできていたんでしょうけど、ジャマール・ヒルもそういう話があったんですかね?」
――ヒルの方は、ブラホビッチvsアンカラエフの判定がドローになった直後にUFCから電話がかかってきたらしいです。だからこそ『UFC282』試合後の記者会見で、すぐテイシェイラvsヒルが発表されたという。
「なるほど。突然、ビッグチャンスが転がり込んできたので、ジャマール・ヒルも“やるしかねえぞ”ってことで、敵地ブラジルに乗り込む決意をしたわけですね」
――ヒルは昨年2月にジョニー・ウォーカーを1ラウンドでKOした時から、タイトルマッチをアピールしていたので、チャンスを待っていたんでしょうね。
「そういう意味では今回ジャマール・ヒルは相当高いモチベーションで臨んでくるじゃないかと思うし、すごくいい状態のパフォーマンスを試合で出してくると思うんですよ。となるとこれ、テイシェイラはやばいかもしれないですね」
——元王者のテイシェイラ危うし、と。
「それはモチベーションの高さだけじゃなくて、過去の試合映像を観るかぎり、ヒルはテイシェイラの試合づくりにまったく付き合ってくれなさそうなんですよ。ヒルは試合展開もとにかくスタンドでKOすることを重視して進めているフシがあって、グラウンドにならないようにするための努力をものすごくやってると思うんですよ。
例えがちょっと違うかもしれないですけど、RIZINで平本(蓮)くんがドミネーター(弥益ドミネーター聡志)とやったとき、グラウンドに付き合わないどころか打撃のプレッシャーの掛け方からすべて、グラウンドにいかせないための戦い方をしていました。ジャマール・ヒルもそういったスタイルが自分の中で完成しつつあるんじゃないかと思うんですよね」
ジャマール・ヒル/Getty Images
——ヒルは現在3連続KO勝利中ですけど、とにかく自分の得意なスタンドで戦うことを徹底した結果なわけですね。
「前回、組みが強いティアゴ・サントスと対戦したときはテイクダウンを取られることも何度かあったんですけど、立つ動きが早いんですね。倒されてもマットに背中は付けず、すぐスタンドに戻すし、戻してからの打撃への移行も速いので、これはグラウンドのやり取りを一切やらずに、スタンドだけで勝負しようとしているあらわれですよね。そしてこういう戦いをするようになったのは、ポール・クレイグに敗れた反省というのもあると思うんですよ」
――4試合前のポール・クレイグ戦では、腕ひしぎ三角固めを極められたまま頭にエルボー連打を打ちつけられてTKO負けでした。
「あの試合では、ポール・クレイグの引き込みでグラウンドになった時、ヒルは立ちたかったと思うんですけど、上のポジションだったんで一旦間を置いたんですよ。そうしたらクレイグに腕を極める体勢を作られてしまい、後手後手に回ったことで極められてしまった。あの反省から、もう2度と同じ轍は踏まないようにしようと、早め早めの対処でスタンドに戻すっていうことを徹底するようになったんじゃないかな」
――では寝技師のテイシェイラに対しては、それこそグラウンドにいかせないことに注力しそうですね。
「そこに徹するんじゃないかと思うんですよ。テイシェイラって、前回のイリー・プロハースカのようにやりあってくれる相手だとすごく活きるんです。組もうとする相手を切り返してバックを奪うとか、寝技でスイープを仕掛けながらタックルに切り替えて上のポジションを取ったりとか。そういう技術をたくさん持ってるんですけど、それが使えるのも相手がやり合ってくれるからなんですよね」
――相手が寝技で攻めてくれるからこそ、寝技のカウンターを仕掛けることができる、と。
「でもヒルの場合、なかなか触らせてももらえない可能性もある。となると、テイシェイラは仰向けになって“猪木-アリ状態”になってしまったりするのかなと、ちょっと思ったりもしましたけどね」
グローヴァー・テイシェイラ/Getty Images
――無理に何度もタックルを仕掛けたら、体力も消耗しますしね。
「ただ、テイシェイラにとってひとつ好材料は、ジャマール・ヒルは構えが基本サウスポーなんですよ。テイシェイラはサウスの構えの相手に右のパンチを振りながらスイッチして、相手の右足にタックル入るというのがすごく得意で、プロハースカやティアゴ・サントスなどたいていサウスポーの選手はこれでテイクダウンを取られてるんです。そしてヒルもサウスポーのワイドスタンスで右足が前に出ているので、テイシェイラからすると取りやすいと思うんですよ。とは言え、何回もやってる技なので、ヒルも当然そこは対策を練ってくるでしょうけどね」
――そこに重点を置いて試合の準備をしてきそうですよね。
「だからタックルを切りながら、離れた瞬間に右のフックを合わせるとか。そういう動きもヒルは考えていそうではありますね」
――前手のフックは得意ですもんね。
「右のパンチがとにかく強いんですよ。ジョニー・ウォーカー戦ではオーソドックスにスイッチして右のパンチ1発で倒して、その前のジミー・クルート戦では前手の右フック。しかも、体をちょっと開きながらKOしてるんですよ。この打ち方って、イズラエル・アデサニヤが得意のフックの打ち方なんですよね。身体を開きながら、スウェーバックしながら当てて倒すような」
——ロバート・ウィテカーやパウロ・コスタを倒したパンチですよね。
「ヒルはそういうテクニックと体の使い方も持ち合わせているんで、やみくもにテイシェイラが前に出てタックルを狙いにきたところで、逆にパンチをもらってしまう可能性が高い。だから、ヒルの試合を観れば観るほど“テイシェイラやばいんじゃないか”と、思わずにはいられないんです」
――昨年のUFCはミドル級のアレックス・ペレイラ、ウェルター級のレオン・エドワーズと、それぞれアデサニヤとカマル・ウスマンという絶対王者を破った新王者が誕生しましたけど、ライトヘビー級もジャマール・ヒルという新王者が誕生するかもしれないですね。
「その可能性は充分ありますね。それだけの技術と野心、勢いがあると思いますから。ただ、技術的な引き出しの多さではテイシェイラが圧倒的に上回っていると思うので、いろんなものを駆使して、寝技に持ち込んでいくかもしれない。その辺の騙し合いも見ものだし、いずれにしても新鋭のストライカーであるジャマール・ヒルと、大ベテラン・グラップラーのテイシェイラの一戦というのは好対照で、異種格闘技的な面白い試合になるんじゃないかと思いますね」
(取材・文/堀江ガンツ)
◆◆◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール◆◆◆
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC283 in ブラジル ライトヘビー級王座決定戦Ⅱ/フィゲイレードVSモレノⅣ』
1/22(日)午後0:00[WOWOWプライム]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
1/26(木)午前1:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
【放送カード】
ライトヘビー級王座決定戦/グローヴァー・テイシェイラ vs ジャマール・ヒル
フライ級王座統一戦/デイブソン・フィゲイレード vs ブランドン・モレノ
【収録日・収録場所】
2023年1月21日<現地>/ブラジル・リオデジャネイロ ジュネス・アリーナ
【出演】
解説:髙坂剛、堀江ガンツ
実況:髙柳謙一
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