文化庁のプレスリリース
事件の発端となる初段「大序(だいじょ)」から、上演機会が稀な二段目「安井汐待(やすいしおまち)の段」、四段目「北嵯峨(きたさが)の段」、五段目「大内天変(おおうちてんぺん)の段」を含む全五段上演は、昭和47年(1972)5月国立劇場小劇場での上演以来、じつに51年ぶりです。文楽座の面々が総力を結集し、初代国立劇場文楽公演の掉尾を飾るにふさわしい舞台をお届けいたします。
名作”菅原“の全貌が今ここに! お見逃しなく!
-
多彩な見どころ・聴きどころ満載の傑作 『菅原伝授手習鑑』
浄瑠璃の三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』は延享3年(1746)8月に竹本座で初演されました。
作者は、初代竹田出雲、竹田小出雲(のちの二代目竹田出雲)、初代並木千柳、三好松洛による合作です。二代目竹田出雲、初代並木千柳、三好松洛は、のちに残りの三大名作『義経千本桜』、『仮名手本忠臣蔵』をも手掛ける大ヒットメーカーです。
平安時代の政治家であり文人でもあった菅原道真(作品中では菅丞相と呼ばれています)が、政敵である藤原時平の讒言により筑紫国太宰府に配流された政変「昌泰の変」を題材に描いたスケールの大きな時代物です。
当時大坂では、天満で生まれた三つ子が話題となっていました。その三つ子を物語に巧みに取り込み、道真の飛梅伝説と絡めて、梅、松、桜になぞらえてキャラクター化し、道真と三つ子を取り巻く波乱万丈の物語が書かれました。
変化にとんだ場面の数々に、天神様として当時から人々の信仰が篤かった道真の人気も相まって、公演は大ヒットとなり、翌延享4年3月まで、実に8か月ものロングランを記録しました。
タイトルの由来ともなった荘重な場面である初段「筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)の段」、数ある浄瑠璃の中でも随一の格調の高さを誇る大曲「丞相名残(しょうじょうなごり)の段」、様式美に彩られた「車曳(くるまびき)の段」、三つ子とその親の運命が悲劇的な結末を迎える「桜丸切腹の段」、数ある文楽作品の中でも優れた劇的展開で人気の高い「寺子屋の段」など、各段・各場面に多彩な見どころ、聴きどころがあり、文楽を代表する傑作の一つです。
-
51年ぶりの全段通し上演で、作品の魅力を余すところなく堪能!
国立劇場は昭和41年(1966)の開場以来、演目の通し上演を大きな方針として掲げてきました。文楽の三大名作の通し上演は、昭和42年(1967)12月『仮名手本忠臣蔵』、昭和45年(1970)5・6月『義経千本桜』に続き、昭和45年9月に『菅原伝授手習鑑』が上演されましたが、この時は「加茂堤(かもづつみ)~車曳~佐太村~寺子屋」という三つ子のストーリーにフォーカスを絞ったものであり、菅丞相の物語を含めた本格的な通しでの上演が待たれていました。
そんな中ついに昭和47年5月、『菅原伝授手習鑑』の初段から五段目までの通し上演が実現します。その際、上演機会が極めて稀な二段目「安井汐待の段」、四段目「北嵯峨の段」を復活し、初段の「大序」から五段目「大内天変の段」までの全段通し上演を行ったのです。この形での全段通しは天保期以来140年ぶりの快挙といわれ、大変な評判を呼びました。そして長時間の公演となったことも語り草となっています。そのため、今回は5月公演と8・9月公演にわけて上演を行います。
それから51年、今回は今や伝説ともいわれる昭和47年の上演と同様の全段通し上演であり、傑作『菅原伝授手習鑑』の作品の魅力を余すところなくご堪能いただけるまたとない機会です。
国立劇場は本年10月いっぱいをもって、再整備のため6年ほどの工事期間に入ります。
工事期間中も都内の劇場をお借りする形で、引き続き文楽をお楽しみいただく予定ですが、ここまでの大きな規模での通し上演はしばらくお預けとなるでしょう。
文楽座の面々も総力を結集してこの通し上演に挑みます。
初代国立劇場文楽劇場の掉尾を飾る、そして現在の文楽を未来へつなぐためのエポックとなること必定の本公演。
ぜひとも劇場で、この歴史的な公演を体験してください!
-
祭囃子が響く路地裏で、侠客の意気地が弾ける 第3部『夏祭浪花鑑』
5月公演の第3部は『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』を上演いたします。本作は、『菅原伝授手習鑑』初演の1年前、延享2年(1745)7月に竹本座で初演されました。作者は、初代並木千柳、三好松洛、竹田小出雲と、三大名作を手掛けたヒットメーカーたちによる合作です。初代国立劇場さよなら公演に名手の手による傑作が並んで上演されることとなりました。
延享元年(1744)に堺の魚屋が大坂の長町裏で人を殺した実在の事件を題材に、団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)・釣船三婦(つりぶねさぶ)・一寸徳兵衛(いっすんとくべえ)という3人の侠客たちと、その女房たちの“意気地(いきじ)”を描いた世話物です。世話物として初めての長篇となった作品といわれており、初演の大ヒット後すぐに歌舞伎化され、人形浄瑠璃・歌舞伎ともに人気演目として上演され続けています。
住吉大社、内本町、そして高津宮夏祭の宵宮という夏の大坂。団七は恩人の息子玉島磯之丞(たましまいそのじょう)とその恋人琴浦(ことうら)の難儀を救うため、一寸徳兵衛や釣船三婦、お梶(かじ)やお辰(たつ)といった女たちにも助けられながら尽力しますが、悪人たちと強欲な義父・三河屋義平次(みかわやぎへいじ)のために追い詰められてしまいます。
本作の大きな見どころは、団七が義平次に詰め寄られ、心ならずも手にかけてしまう「長町裏の段」の殺しの場面、通称“泥場(どろば)”です。高津宮夏祭の宵宮の祭り囃子が鳴り響く中、泥まみれで繰り広げられる壮絶でありながらも美しい殺しのシーン。その圧倒的な陶酔と虚無感は、劇場で感じてこそのもの。ぜひともあの高揚感を客席で感じてください。
8・9月公演の第3部でも、文楽を代表する人気演目を上演いたしますので、通し狂言『菅原伝授手習鑑』と併せてお楽しみください。
プレスリリースはこちらから
https://prtimes.jp/a/?f=d47048-594-4adb15a62691abb98f4d3873b21ea47d.pdf
初代国立劇場さよなら公演
公益財団法人文楽協会創立60周年記念
5月文楽公演
【第一部】(午後10時45分開演)
通し狂言 菅原伝授手習鑑
初段 大内の段/加茂堤の段/筆法伝授の段/築地の段
【第二部】(午後2時開演)
通し狂言 菅原伝授手習鑑
二段目 道行詞の甘替/安井汐待の段/杖折檻の段/東天紅の段/宿禰太郎詮議の段/丞相名残の段
【第三部】(午後5時45分開演)
夏祭浪花鑑
住吉鳥居前の段/内本町道具屋の段/釣船三婦内の段/長町裏の段
※字幕あり
※休憩あり
主催=独立行政法人日本芸術文化振興会
【公演詳細】
令和5年 5月11日(木)~30日(火) ※18日(木)は休演
国立劇場 小劇場 (〒102-8656 千代田区隼町4-1)
【料金[各部・税込]】
1等席 8,000円(学生5,600円)
2等席 7,000円(学生4,900円)
※障害者の方は2割引です。(他の割引との併用不可)
※車椅子用スペースがございます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初代国立劇場さよなら公演
8・9月文楽公演
通し狂言 菅原伝授手習鑑
三段目 車曳の段/茶筅酒の段/喧嘩の段/訴訟の段/桜丸切腹の段
四段目 天拝山の段/北嵯峨の段/寺入りの段/寺子屋の段
五段目 大内天変の段
【公演詳細】
令和5年 8月31日(木)~9月24日(日) ※7日(木)、15日(金)は休演
国立劇場 小劇場 (〒102-8656 千代田区隼町4-1)
その他公演詳細は、決まり次第、菅原伝授手習鑑特設サイトなどでお知らせいたします。
最新情報はこちらから
菅原伝授手習鑑特設サイト
https://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu/2023/sugawara-denju.html
チケットのお求めは
国立劇場チケットセンター 0570-07-9900
プレスリリースはこちらから
https://prtimes.jp/a/?f=d47048-594-4adb15a62691abb98f4d3873b21ea47d.pdf
国立劇場について
日本の伝統芸能の保存及び振興を目的として昭和41年(1966)に開場。外観は奈良の正倉院の校倉造りを模している。大劇場・小劇場・演芸場・伝統芸能情報館を備え、多種多様な日本の伝統芸能を鑑賞できる。初心者や外国人を対象とした解説付きの鑑賞教室も開催している。
所在地:東京都千代田区隼町4-1
03-3265-7411(代表)
「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」
明治以来の国立劇場設立構想からおよそ100年。
伝統芸能の保存と振興に取り組むため昭和41年国立劇場が誕生しました。
そして半世紀。
これは国立劇場が未来へ向けて新たな飛躍を目指す一大プロジェクトです。
特設サイト