株式会社新潮社のプレスリリース
デザインは本作の単行本、そしてクリープハイプのEP『だからそれは真実』ジャケットなども手掛けるアートディレクターの寄藤文平さん。文庫を装う新イラストは、なんと「ガチャガチャの眼球」です。
小学生の女の子の視点で、マッサージ店で働く母の秘密を見つめた尾崎世界観さんの小説『母影』。
この芥川賞候補にもなった話題作の文庫化にあたり、単行本同様、寄藤文平さん(文平銀座)がカバーデザインを担当しました。
もともと単行本装画は、尾崎さんが幼い頃に暮らし、物語舞台のモデルにした葛飾区小菅の街をイメージしたイラスト。その一部を“窓”枠で覆うデザインで、カーテン越しに母を見る少女のように、読者も窓から景色を覗き見る形でした。
そして今回の文庫装画は、単行本からがらりと変わり、物語に登場するガチャガチャと100円玉、そして少女がモチーフに。
寄藤さん曰く、
「それぞれを立体的に並べたら、ちょうど眼球のようになりました。“見る”というのは『母影』のキーワード。100円玉の黒目とその影の中点として少女を置くことで、物語に通ずる不穏さも漂わせています」
単行本のカラーを踏襲しつつ、新鮮な驚きに溢れた文庫の「ガチャガチャの眼球」。書店で“目が合う”日を、どうぞお楽しみに……!
『母影』は新潮文庫8月新刊として7月28日に発売。全国の書店、各ネット書店にて予約受付中です。
■内容紹介
小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の“探し物”を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。第164回芥川賞候補作。
■著者紹介
尾崎 世界観/おざき・せかいかん
1984(昭和59)年、東京都生まれ。2001(平成13)年結成のロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギター。’12年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。’16年、初小説『祐介』を上梓し話題となり、’20(令和2)年には「母影」で芥川賞候補となる。エッセイに『苦汁100%』『苦汁200%』『泣きたくなるほど嬉しい日々に』、直木賞作家の千早茜との共作小説に『犬も食わない』、対談集に『身のある話と、歯に詰まるワタシ』、歌詞集に『私語と』などがある。2023年現在、読売新聞読書委員、NHK Eテレ「NHK短歌」第3・第4週MC。
■書籍データ
【タイトル】母影(おもかげ)
【著者名】尾崎 世界観(おざき せかいかん)
【発売日】7月28日
【造本】新潮文庫
【定価】605円(税込)
【ISBN】978‐4‐10‐104452‐1