株式会社新潮社のプレスリリース
株式会社新潮社は本日、小説家・吉田修一さんの文庫最新刊『湖の女たち』を発売しました。本作は週刊新潮に連載された当時から、介護施設で起きた殺人事件を捜査する刑事と、施設で働く女が陥るインモラルな関係、そして旧軍による人体実験など日本社会の負の歴史を読者につきつけるスケールの大きさが反響を呼びました。
本作は福士蒼汰さん、松本まりかさん主演で映画化されることが決まっており、2024年初夏に全国公開されます(※当初2023年11月公開とご案内していましたが変更になりました)。メガホンをとったのは『さよなら渓谷』の映画化以来のタッグとなる大森立嗣監督。詳しくは以下の特設サイトをご覧ください。昨日発売の「週刊新潮」29号には吉田修一さんと大森監督の対談が掲載されていますので、あわせてご覧ください。
https://thewomeninthelakes.jp/
■あらすじ
湖畔の老人介護施設「もみじ園」で、寝たきりの男性が人工呼吸器を外されて殺された。捜査にあたった刑事は施設で働く女性と出会うが、極限状態の取り調べの中で、二人はいつしかインモラルな関係に溺れていく。もっと最低なことをして、もっと汚してほしい……。一方、事件を取材する週刊誌記者は、死亡した男性がかつて満州で人体実験にかかわっていたことを突きとめるが、編集幹部からは突然、取材の中止を命じられるのだった。一体誰が意識もまばらな寝たきりの老人を、あざ笑うかのように死なせたのか? 吸い寄せられるように湖に集まる男たち、女たち、そしてーー。圧倒的な自然が悪も善も美もすべて呑み込んでいく結末に、読後あなたは言葉を失う。悪と欲望を描き尽くした「極限の黙示録」。
■諏訪敦さんが解説を寄稿
本書には昨冬の大規模展覧会「眼窩裏の火事」(府中市美術館)も話題となった画家、諏訪敦さんが解説を寄稿しています。その一節をご紹介します。
「犯罪とまで言えない咎で他人を吊るし上げるのも結構だが、インモラルな行為に埋没できる者たちだからこそ手にできる生の充実だってあるはずだ。二人から放たれる生命のつややかさはどうだ。そして佳代の幻視を描写する、著者の生き生きとした書きっぷりは。性愛に没頭する姿というものは、本来的に他者から見れば浅ましく滑稽なものだ。しかし自滅的で愚かであるからこそ底光りする生だって在り得るし、唾棄されようと少なくともそこには世間への忖度や、偽善の薄汚さはない。」
■書誌情報
書名 湖の女たち
著者 吉田修一
出版社 新潮社
定価 750円(税別)
発売日 2023年7月28日
ISBN 978-4-10-128759-1
■著者略歴
長崎県生れ。法政大学卒業。1997(平成9)年「最後の息子」で文學界新人賞。2002年『パレード』で山本周五郎賞、同年発表の「パーク・ライフ」で芥川賞、2007年『悪人』で大佛次郎賞、毎日出版文化賞を、10年『横道世之介』で柴田錬三郎賞、19年『国宝』で芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞を受賞。ほかに『長崎乱楽坂』『橋を渡る』『犯罪小説集』『逃亡小説集』など著書多数。2016年より芥川賞選考委員を務める。映像化された作品も多く、『東京湾景』『女たちは二度遊ぶ』『7月24日通り』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』『楽園』『路』『太陽は動かない』に続いて『湖の女たち』が映画化され、2024年初夏全国公開予定。