株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ レガシープラスのプレスリリース
<ピーターと仲間たち>と題された本公演のオープニングを飾るのはヒット曲「ピーターラビットとわたし」。さらに「色彩都市」とファン垂涎の2曲が続き、静かな興奮が会場全体を包む。この2曲は1982年発表のアルバム『Cliché』に収録されたもの。続く「ぼくの叔父さん」は1987年の『A Slice of Life』に収録。そう、この日のライブは、主に1980年代の楽曲を中心に構成されるものになった。
いわゆる生のバンド・サウンドから、ストリングスのカルテットを従えたコンサート、オーケストラとの共演など、さまざまなライブ・スタイルを見せてきた大貫だが、意外なことにこの時期の楽曲がライブで披露されることは極めて少なかった。近年は特に。それは、この時期の楽曲が、いわゆる打ち込み系、レイヤード・サウンドと呼ばれるもので、生(なま)のライブを指向する大貫の考えにそぐわないものになりつつあったこと、またなにより、当時の音を忠実に再現することの難しさもあった。
しかし、1980年代作品を愛するリスナーは多い。そこで、まずレコーディングされたオリジナルのマルチ・トラックのテープの探索からはじめ、その状態をチェックし、音源を抜きとる作業を行なった。中には、テープ自体は見つかったものの、それをかけられるテープレコーダーがすでに世界中のどこにも無くなっていた、というようなこともあったという。そういったものについては、当時のシンセサイザーや機材を用いて新たに作り直した。
こうして、“打ち込み”なオケは再現できた。そこに、ステージに立つ卓越した実力派メンバーの演奏が重なって、より豊かな音の世界が築かれていく。ピアノ、キーボードは、80年代から長くコラボレーションしてきたフェビアン・レザ・パネ。ベースも大貫ファンにはお馴染み、鈴木正人。シーケンス、松井寿成。本ライブの肝となる、かつての音の再現に関して果たした、彼の功績は大きい。ドラムスは、今回初参加となる伊吹文裕。ギターも同様に初めて大貫のライブに参加の伏見蛍。そして、ここ数年、大貫のライブには欠かせない存在となっているキーボードの網守将平。それぞれがプロデューサーとしても活躍する実力派ばかりであるが、伊吹、伏見、網守によって「サポート・メンバーの平均年齢がグッと下がって」と大貫。「若者に囲まれて、幸せな大貫さんです……そんなに若者でもないか」と会場を笑わせた後、「どんな職業でも世代交代はしていくわけですが……まだ私は頑張らせていただきます!」という言葉に大きな拍手が贈られた。
この、打ち込みと生音の融合が見事なダイナミズムを伴って伝わってきたのが、「Volcano」。こちらは1997年発表のアルバム『LUCY』に収録されたもの。ライブ前半を締めくくる曲となった。
オープニングからいつものようにゆるやかでたおやかな空気でライブは進み、ジョークまじりの楽しいMCに客席も笑顔で応えていたが、こういったスタイルのライブに慣れていないという大貫のヴォーカルは、はじめはやや緊張している印象もあった。けれども、ライブが後半に入ってくる頃から次第に固さもやわらぎ、「PATIO」「Rain」という静かな名曲をしっとりと歌い上げ、唯一無二の大貫ワールドに聴き手を巻き込んでいく。
「LULU」は1997年の作品だが、80年代のテイストを残す印象的なベースの打ち込みからスタートする。続く「SIESTA」「テディ・ベア」と、このライブのために用意された“記憶の中の音色“ が大貫のヴォーカルと絡み合って、これまでのライブとは違ったグルーヴを醸し出す。
出色は「CARNAVAL」。シーケンスによる一定のリズムに乗ってメンバーによるソロまわしが繰り広げられたが、ディジタルとフィジカルの格闘のような一面も見られ、歌い終えた大貫が「すごい拍手もらってません? これ何?」と驚きと戸惑いを漏らすほどの大きな拍手が会場全体を包み込んだ。
「ベジタブル」「宇宙みつけた」で本編終了。
うねるような拍手の波に迎え入れられて登場した大貫、「なんか今までのコンサートの中で一番盛り上がってません? どうしちゃったの?」と戸惑いながらも嬉しそうな表情。
アンコール1曲目「地下鉄のザジ」を歌うと、少し躊躇するように、「次の曲は……途中で歌えなくなっちゃうかもしれない。泣いたらごめんなさい」と口にした。初日、何も知らない観客からは親しげな笑いも漏れたが、次の言葉を聞いて会場は水を打ったように静かになった。
「次の曲は……、坂本龍一さんの曲、「SAYONARA」です」。
ここで観客は気づく。このライブで披露された楽曲の多くが、数曲を除いて坂本龍一のプロデュースによってレコーディングされたものだったことを。 2日目のライブでは、関わったスタッフの全てをステージに上げ、「会場の皆で歌いましょう」と言った後、「坂本さん、聴いていてください」。そういって右手を天に掲げ、指をさした。
「空の青さが しみこんできて ひとみで 字を書いた もう会うはずないから 青空 さよなら 空見あげ 流すさよなら」
三十数年前に鈴木慶一によって書かれた歌詞が、まるでこの日のために用意されたかのように、哀しく優しく聴衆の胸に響く。途中、声を詰まらせるところもあった大貫だが、会場の手拍子と声援に支えられる形で歌いきった大貫。去り行く人への、深く、しかし決して沈み込むことのない軽やかなレクイエム、大きな拍手が惜しみなく贈られた。
「坂本さん、ありがとう」。そう言って大きく会場に、天に手を振った後、大貫はステージを後にした。
「こんな感じのコンサートを、またやりたいと思います」と語った大貫。近い将来の再演を熱望してやまない。
【大貫妙子コンサート ピーターと仲間たち】
大貫妙子
フェビアン・レザ・パネ/Apf & Epf
鈴木正人/Bass
松井寿成/Sequence & Keyboards
伊吹文裕/Drums
伏見蛍/Guitars
網守将平/Keyboards
01 ピーターラビットとわたし
02 色彩都市
03 ぼくの叔父さん
04 Happy-go-Lucky
05 幻惑
06 Volcano
07 PATIO
08 Rain
09 LULU
10 SIESTA
11 テディ・ベア
12 CARNAVAL
13 ベジタブル
14 宇宙みつけた
<アンコール>
01 地下鉄のザジ
02 SAYONARA
【大貫妙子 Live Information】
■「EPOCHS 〜Music & Art Collective〜」
2023年10月1日(日) 9:00 OPEN/10:00 START/20:30 END(予定)
RISING FIELD KARUIZAWA(ライジングフィールド軽井沢)
長野県北佐久郡軽井沢町長倉山国有林2129
https://epochs.jp
■渋谷音楽祭「公園通りレコード インストアライブ」
出演者:大貫妙子、根本要(スターダスト☆レビュー)、渡辺美里、槇原敬之、山弦、ゆいにしお、SETA
ミュージシャン:佐橋佳幸(Guitar)、Dr.kyOn(Keyboards)、eji(Keyboards)、亀田誠治(Bass)、山木秀夫(Drums)、小倉博和(Guitar) ※ゲスト参加
2023年10月21日(土) 17:00 OPEN/18:00 START
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
■「大貫妙子 コンサート 2023」
【東京公演】
2023年11月18日(土) 16:30 OPEN/17:30 START
昭和女子大学 人見記念講堂
【大阪公演】
2024年1月6日(土)
16:30 OPEN/17:30 START NHK大阪ホール
https://tickets.kyodotokyo.com/onukitaeko23aw_hp
【大貫妙子 Release Information】
■CD『Taeko Onuki Concert 2022』
2023年11月15日発売予定 高品質Blu-spec CD2(通常のCDプレーヤーで再生可能)仕様
https://www.110107.com/s/oto/page/taeko_onuki?ima=1823
大貫妙子オフィシャルサイト. http://onukitaeko.jp
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