大小島真木個展「not〈 I 〉, not not〈 I 〉 」のお知らせ

アイランドジャパン株式会社のプレスリリース

その間に展示をした、角川武蔵野ミュージアムでの「綻びの螺旋」や、千葉市美術館での滞在制作つくりかけラボ09 「コレスポンダンス」から発展した作品群になります。調布市文化会館にておこなわれる「千鹿頭 | A THOUSAND DEER HEADS」とも合わせてお楽しみください。

©️Maki Ohkojima©️Maki Ohkojima

【アーティストコメント】

私ではなく、私ではなくもなく

“not〈 I 〉, not not〈 I 〉 “

大小島真木

文化人類学者のレーン・ウィラースレフは著書『ソウルハンターズ』において、北方の先住民ユカギールの民が、エルクと呼ばれるヘラジカを狩猟する際に行う、ある風習について記述している。

ウィラースレフによれば、ユカギールのハンターはまず夢の中でエルクと性交渉を取り結ぶ。さらにエルク革のコートを纏い、エルクの動きを巧妙に模倣することで、エルクそのものになりきっていく。そうすることで、彼らは実際の狩りの場において、エルクの群れに接近することができるようになると言われている。

ウィラースレフはこのプロセスを「ミメーシス(模倣)」と呼んでいる。またウィラースレフはこの時のユカギールの状態を、「動物ではないが、動物ではなくもない」と言いあらわしている。

ユカギールの世界において、身体という容器を満たしているのは、ソウルだ。狩猟行為において、ユカギールは捕獲対象であるエルクと、そのソウルを介して交感する。ソウルはまた一箇所に留まり続けているものでもない。それは私たちの身体を満たしている細胞と同じように、絶えず流動しながら、複数の身体のあいだ――人間とエルクのあいだを、往来し続けている。

私が〈私〉だと感じているものもまた、絶えず移ろいつづけているソウルの大河に生じた、束の間の澱みのようなものだろう。その澱みであるところの〈私〉が存続していくためにはしかし、その澱みはただちに解消され、再び流れだしていかなければならない。細胞が絶え間なく流動を続け、部分が活発に入れ替わることで、全体としての恒常性が維持される。生物学者の福岡伸一によれば、この「動的平衡」こそが、生命体が「生きている」という状態である。

〈私〉が〈私〉としてありつづけるためには、〈私〉は〈私〉でありつづけることを諦めなければならない。すると、その時の〈私〉とは一体、何者なのだろうか。

それはきっと〈私〉ではない。

そしてまた〈私〉ではなくもない。

【展覧会概要】
タイトル:大小島真木 個展「私ではなく、私ではなくもなく”not〈 I 〉, not not〈 I 〉 “」
会期:2023年9月30日(土)- 10月22日(日) ※月、火、水 休廊
会場:HARUKAITO by island
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-12-9 BLOCK HOUSE 2F
開廊時間:13:00〜19:00 (※月、火、水 休廊)

◎入場料:無料
◎主催:アイランドジャパン株式会社
URL :http://islandjapan.com/​​
SNS:
Twitter @islandjapan
Instagram @islandjapan

©️Maki Ohkojima©️Maki Ohkojima

【アーティストプロフィール】

東京を拠点に活動するアーティストおよびアートユニット。
「絡まり、もつれ、ほころびながら、いびつに循環していく生命」をテーマに制作活動を行う。
インド、ポーランド、中国、メキシコ、フランスなどで滞在制作。2017年にはTara Ocean 財団が率いる科学探査船タラ号太平洋プロジェクトに参加。 近年は美術館、ギャラリーなどにおける展示の他、舞台美術なども手掛ける。

2021年「ククノチテクテクマナツノボウケン」KAATで舞台美術を手がける。 主な参加展覧会に、「コレスポンダンス」(2022年、千葉市美術館 | つくりかけラボ09 )、「地つづきの輪郭」(2022年、セゾン現代美術館)、「世界の終わりと環境世界」(2022年、GYRE)、「コロナ禍とアマビエ 」(2022年、角川武蔵野ミュージアム)、「Re construction 再構築」(2020年、練馬区立美術館)、「いのち耕す場所」(2019年、青森県立美術館)、「瀬戸内国際芸術祭-粟島」(2019年)、個展「L’oeil de la Baleine/ 鯨の目」(2019年、フランス・パリ水族館)、個展「鳥よ、僕の骨で大地の歌を鳴らして」(2015年、第一生命ギャラリー)。主な出版物として「鯨の目(museum shop T)」など。

2023年より、かねてより制作に関わっていた編集者・辻陽介との本格的な協働制作体制に入り、以降、名称をそのままに、アートユニットとして活動している。

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