「楽器店」市場 アニメ効果で底打ち『ぼっち・ざ・ろっく!』も影響 若者向けが好調

TDBのプレスリリース

株式会社帝国データバンクは、2022年度の楽器店市場の動向と今後の動向について調査・分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 「楽器店」市場、アニメ効果でコロナ禍から底打ち 在宅需要も下支え

  2. 長期的には国内市場の縮小避けられず 「ライト層の引き留め」課題に

※調査対象:[注] ギターやピアノ、DCM等「楽器」販売を主力とする国内のべ1300社が対象

※調査期間:2023年8月までに2022年度業績が判明したもの

※調査機関:株式会社帝国データバンク

「楽器店」市場、アニメ効果でコロナ禍から底打ち 在宅需要も下支え

楽器販売の勢いが好調だ。2022年度の楽器店市場(事業者売上高ベース)は、前年度から0.6%増の1939億円となった。21年度の1927億円を上回り、2年連続で前年を上回った。また、売上高の動向では前年度から「増収」となった企業の割合は24%と、21年度(27%)に比べて縮小したものの、前年度並みを維持した企業の割合が多かった。損益ベースでは、22年度は「増益」が34%を占め、約6割が黒字を確保した。嗜好性の強い楽器では販売価格へ比較的反映させやすく、安定した利益を確保した楽器店が多かった。他方、楽器製造の原料となる金属や木材価格の高騰に加え、輸入品も多いことから物流費の上昇や円安による影響を受けて楽器の仕入れ価格が上昇しており、赤字となった企業も約4割を占めた。

楽器店市場は、少子高齢化や習い事・趣味の多様化を受けて近年は頭打ちの状態が長く続いてきた。こうしたなか、2020年度はコロナ禍の感染拡大に伴う外出制限の影響で一般顧客向けの店舗販売が大きく落ち込んだほか、付随して運営するケースも多い音楽教室なども休講を余儀なくされたことで、大幅な市場縮小を余儀なくされた。一方、20年度後半以降は巣ごもり需要の拡大でギターなどの弦楽器や電子ピアノなどの需要が増加したほか、学校での部活動やサークル活動なども再開したことで、ティーン層を中心に販売が増えている。なかでも、特に22年度はガールズバンドを題材としたアニメ・マンガ作品『ぼっち・ざ・ろっく!』の影響で、新たにギターを始めるライト層向けの販売が増加した楽器店もみられた。総じて、エレキギターを中心に新しく楽器演奏にチャレンジする巣ごもり特需の発生が、楽器店市場を下支えする形となった。

 

国内最大手の島村楽器によると、22年度下半期に販売した楽器のうち、前年から最も伸長したのは「エレキギター」で73%増加したほか、アンプやエレキギターなど「バンド関連」楽器が上位を占めた。過去には、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』、『響け!ユーフォニアム』などのテレビアニメ・マンガ作品がきっかけとなり、音楽に興味を持ったライト層向けの楽器販売が好転したケースは多く、楽器演奏人口のすそ野の広がりにも寄与している。

長期的には国内市場の縮小避けられず 「ライト層の引き留め」課題に

コロナ禍で打撃を受けた楽器店市場は、足元では行動制限の緩和や「5類」移行による音楽教室の再開、ライブ活動・コンサート向けの楽器需要が回復傾向にある。また、アニメなどの影響も重なり、楽器演奏に新たにチャレンジする巣ごもり需要などの発生が楽器店市場を下支えし、2年連続で前年度を上回るなど、ポストコロナに向かうなかで市場回復の兆しが見えつつある。

                 

今後は、広がる楽器演奏のすそ野をいかに維持するかが、少子高齢化で長期的な縮小が避けられない国内市場を今後も維持するカギになるとみられる。コロナ禍で販売量が増加したエレキギターは、販売店から「中古販売の在庫がやや多い」といった声も出始めるなど、難易度の高さなどを理由に楽器から離れてしまうケースも散見され、楽器演奏に興味を持ったライトなファン層の引き留めが課題となる。

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