落語を初めて聴く「渋谷ギャル」を爆笑させる一方で、目の肥えた年配の落語通をも唸らせる、40代落語家の大スター、春風亭一之輔に迫る! この本で、落語がわかる、一之輔がわかる、人間がわかる。
株式会社集英社のプレスリリース
めったに人を褒めないことで知られた人間国宝・柳家小三治をして「久々の本物」と言わしめた落語家、春風亭一之輔。
21人抜きの抜擢真打であり、『笑点』(日本テレビ系列)の人気者でもある彼は落語界の若きエースだ。機嫌がよくても眉毛が「ハ」の字になりがちで、どこか無愛想に見えてしまうのも持ち味。極度な照れ屋であり、取材ではいくら掘っても一向に底が見えないことから、著者の中村計は〈取材をすればするほど、どんどん取材が下手になっていくような感覚に襲われた〉と懊悩する。「ぜんぜん壁にぶつかってきていない」とあっけらかんに語る彼は挫折を知らない男でもある。
そんな天才に挑んだ計20時間以上にも及ぶインタビューの果てに浮かび上がったものとは――存在そのものが「落語」な芸人に迫ったノンフィクション。
取材日程が決まるまでの疑心暗鬼の日々――。
〈一之輔は手土産に関しては、相変わらずニコリともしなかった。
一之輔のセリフは決まっていた。
「マネージャーに言っておきますので」
このルーティーンが永遠に続くのではないかと思えるほど、何度訪ねても、一之輔のテンションは変わらなかった。〉(本文より)
【目次】
はじめに ~長い言い訳~
一、ふてぶてしい人
前座時代の一之輔が放った衝撃のひと言/不機嫌そうに出てきて、不機嫌そうにしゃべる/「自分の言葉に飽きたらダメなんです」/挫折がなさ過ぎる
一、壊す人
YouTube著作権侵害事件/西の枝雀、東の一之輔/保守的な落語協会と、リベラルな落語芸術協会/「跡形もないな、おまえ」/師匠を「どうしちゃったの?」と驚かせた『初天神』/食わせてもらったネタ/たった一席の二十周年記念/逸脱が逸脱を生む「フリー落語」/一之輔の稽古は「うーん」しか言わない/同志、柳家喜多八
一、寄席の人
談志の弟子にならなかった理由/寄席への偏愛/寄席は落語家の最後の生息地/「捨て耳」という修行/劇っぽくなってきた落語
一、泣かせない人
人情噺に逃げるな/泣かせる側に落っこちてしまうことが怖い/泣く一メートル手前までいく人情噺/一朝は一之輔に嫉妬しないのか
おわりに ~頼むぞ、一之輔~
【著者略歴】
中村計(なかむら けい)
1973年、千葉県船橋市生まれ。ノンフィクションライター。
『甲子園が割れた日 松井秀喜の5連続敬遠の真実』(新潮社)で第18回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』(集英社)で第39回講談社ノンフィクションを受賞。他に『クワバカ クワガタを愛し過ぎちゃった男たち』(光文社新書)、『笑い神 M-1、その純情と狂気』(文藝春秋)など。『言い訳~関東芸人はなぜM-1で勝てないのか~』(集英社新書、ナイツ塙宣之・著)では取材・構成を務めた。好きな生き物の鳴き声ベスト3はヒグラシ、カジカガエル、アカショウビン。
書籍情報
タイトル:落語の人、春風亭一之輔
著者:中村計
発売日:2024年8月9日(金)
定価:1,100円(10%税込)
体裁・ページ数:新書判・200ページ
ISBN:978-4-08-721328-7
集英社新書
集英社新書の公式WEBサイト「集英社新書プラス」では、40代落語家の二大スター、落語協会の春風亭一之輔と落語芸術協会の桂宮治の対談を掲載中。(構成/中村計)
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/ichinosuke_miyaji/17488