『駆け抜けたら、海。』の十川雅司が監督、ミュージシャン xiangyu(シャンユー)が主演。アイヌとの交流を通して、自分らしさにもう一度出会いなおす旅を描く。
株式会社ロフトワークのプレスリリース
株式会社ロフトワーク(東京都渋谷区)は北海道釧路市からの委託により、阿寒湖アイヌコタンを舞台に現代アイヌ文化の魅力を伝える短編映画『urar suye(ウララ スエ)』を制作しました。阿寒湖アイヌコタン公式YouTubeチャンネルにて公開します。
『urar suye』は、夢を叶えることを困難に感じるひとりの若者が、阿寒湖の大自然を舞台にアイヌ文化と出会い、深い交流を通して、より自分らしく生きるための身体感覚とマインドセットを獲得する物語です。監督を務めたのは、同性の親友との恋愛模様を描いた短編映画『駆け抜けたら、海。』(2023)を手がけた、若手気鋭の映画監督・十川雅司氏。
自然や身の回りのものに「カムイ(神)」が宿るとされるアイヌの世界観から、現代を生きる人々に向けて、社会や自然とのつながりを実感し、人間らしさを見つめ直すきっかけを提供する作品です。また、本作品に続く短編映画の第二弾が、2025年3月に公開予定です。
短編映画『urar suye』公開URL https://youtu.be/d42C4JWc1u0
ポスター
ストーリー
東京で音楽活動をしているユカリ(xiangyu)は、自分のアーティストとしての将来性を信じきれず、思い悩んでいた。そんな中、ユカリは大学の同級生であるダンサーのサヤに誘われ、釧路にある阿寒湖アイヌコタン(「コタン」は、アイヌ語で「集落」)を訪れることに。
アイヌコタンは〈創り手の街〉とも呼ばれており、人々の暮らしの中に伝統的に受け継がれた木彫りや刺繍、歌や踊りが息づいている。さらに、アイヌの世界観では、山や川、動物、樹木といった自然物や、火や雷などの自然現象、道具などに「カムイ」が宿ると信じられていた。
ユカリはアイヌコタンを巡りながら、人々の日々の営みとカムイの存在を全身で感じることで、自分自身と世界とのつながりを捉えなおしていく。
映画の見どころ
本作は、ユカリが阿寒湖アイヌコタンに住む人々との関わりを通して、アイヌの文化に触れ、その世界観の一端を感じることで、自分らしく生きるためのきっかけを得ていく姿を描いています。
歌い継がれた「ウポポ」との出会い:
アイヌの伝承歌謡・ウポポを初めて聴いたユカリ。自然への尊敬や繋がりから生まれたウポポの歌声に、少しずつ心が動きはじめます。作中で歌われている『霧の歌(urar suye)』は、映画のタイトルにも採用されています。
阿寒の自然の中で感じる、カムイの存在:
ユカリは阿寒湖畔の森を訪れ、人々が信じている「カムイ」とは何かを知ります。山や湖、生き物や道具に宿る魂やカムイの存在を確かめるように歩くたび、五感が研ぎ澄まされ、世界との繋がりを実感します。
監督・出演者からメッセージ
監督 十川雅司
「旅」は思いもよらない出会いに溢れています。振り返れば、今回の物語のシナリオ制作も旅のようなものでした。
映画を作るにあたって阿寒湖アイヌコタンに滞在し、現地でたくさんの人に出会い、お話を聞かせていただきました。
アイヌのこと、自然のこと、カムイ(神)のこと。そして、そこで生きる方々の人生について。
この物語は、現地で出会ったアイヌの方から取材した内容をもとに構成しました。ですので、当初考えていた案から思いもよらないシナリオになりました。
映画のタイトルであるアイヌの歌『urar suye』は、〈霧の歌〉とも呼ばれており、取材時にアイヌの方から教えいただきました。
「霧を払って海を渡り、進んでいくんだよ」と「クマ送り(アイヌの儀式)」で子熊の霊魂に言い聞かせ、安心させるための歌詞になっています。
「どこに向かえばいいのかわからない」。
将来に悩んでいる若者にとって、目の前の未来は霧に包まれていています。
そんな心細い心象風景を描きながらも、同じ不安を抱えている人にとってこの映画が少しでも寄り添える作品になればと思い、アイヌの歌と共にメッセージを込めて映画のタイトルにしました。
流動的で答えのないこの現代で「自分にとって本当に大切なものは何なのか?」そういうことを立ち止まって考える機会として、この映画が視聴者の方を旅へ誘うような作品になればいいなと思っています。
プロフィール:
徳島県出身。大学で演劇に没頭。卒業後は、映画制作に興味を持ち、深田晃司監督をはじめ、様々な監督のもとで助監督を務め映画づくりを学ぶ。傍ら、精力的に自主映画を監督。『駆け抜けたら、海。(2023)』が国内外22の映画祭にノミネート、賞を受賞。同作品がMIRRORLIAR FILMS season5の一つに選出され、日本全国15スクリーンで劇場公開を達成する。
主演 xiangyu(シャンユー)
学びたい、と常々思っていたアイヌ文化。なかなか学ぶ時間を設けられずにいましたが、そんな時に、丁度この映画のお話をいただきました。
一週間弱という短い期間でしたが、現地でアイヌの皆さんと交流したり、その土地の空気に触れることでなんだか心が洗われるような感覚がありました。
この映画の主人公であるユカリは、私ではないけど私の分身のようなキャラクターで。
自分も音楽という表現活動をしている中で葛藤が多々あるので、劇中のユカリの気持ちが痛いほどわかり、わかるからこそわかりたくなくて、撮影中はずっとずっと苦しかった思い出があります。
そんな苦しい自分の心をやさしく包んでくれた阿寒の土地は、行ってみないとわからない独特の空気があると感じました。かたくなっていた自分の身体を、勇気を出して委ねてみると不思議なくらいほろほろと解れていって、呼吸するのがすごく楽になりました。
十川監督とは初めてご一緒しましたが、お互いにどういう考えでこのシーンに臨んでいるか、たとえ時間がかかっても、魂をぶつけ合えてとても勉強になりました。多くのシーンをご一緒したデボさんにもたくさんアドバイスを頂き、本当に人としての学びが多い現場で、ありがたい時間でした。
東京で暮らしていると、日々何かに追われていて、自分がどういう生き方をしたかったのか分からなくなることがよくあります。そんな時には、ぜひ阿寒湖へ行ってみるのはどうでしょう? この作品がそのきっかけとなったら嬉しいです。
プロフィール:
2018年9月からライブ活動開始。 日本の女性ソロアーティスト。読み方はシャンユー。 名前は本名が由来となっている。23年11月1日gimgigamをサウンドプロデュースに迎えAmapiano、Gqomなどを取り入れ、町に落ちている“落とし物”を題材にしたコンセプトEP『OTO-SHIMONO』をリリース。今年リリースした最新曲「ラスイチのピザ」「ずっといるトマト」「はっちゃKO」では、ブレイクビーツ、ボルチモアブレイクス、バイレファンキ、アマピアノなどを取り入れた新しいサウンドを披露している。
出演 秋辺デボ
阿寒の森や湖、川に囲まれ日本一酸素濃度の高い空気を胸いっぱいに吸い込む!
いつの間にか木と水と光がアロマとなって躰の中と外から染みこむのがわかる!
自分という存在が小さく感じられる!
それがとても幸せなのだ!
無力感では無い充実していく感覚に細胞がリフレッシュされて染みてきたものが阿寒の自然界と一体化しようと頭のてっぺんから足の裏からまで飛び出して行く! 繋がっているのがわかる! 人ひとりのサイズを超えて神経細胞がデッカイ自然と混ざり合うのだ!
都会から来た彼女はカメラの都合を楽々と飛び越えて行った!
人の都合を聞いてくれない自然界は人の都合よりもより大きなものを彼女に与えてくれたのだ!
人も自然界の一部であり全体になった瞬間が映像に捉えられていると俺は思う! 自然は厳しく優しい! 人と自然は分け隔てられない! 来ればわかる分からないものが有ります!
プロフィール:
阿寒湖出身で、高校を卒業後、父に木彫りを学び、4年後父が営んでいた店の裏口に自分の店「ヌカンノ」を開店。その後、お店を継ぎ現在の「デボの店」として経営をしながら、俳優業やアイヌ舞踊のプロデュースなども手がけている。
制作背景
短編映画『urar suye』は、釧路市による令和6年度アイヌ文化関連観光プロモーション事業の一環として制作されました。本作は、アイヌの美術・工芸だけでなく、日常生活や周辺環境を含めた「生きたアイヌ文化」の魅力に焦点を当てています。また、アイヌ固有の世界観が現代の都市生活者の課題感をときほぐし、エンパワメントし得る可能性を、広く伝えることを目指しています。
阿寒湖アイヌコタンについて
本作の舞台となっている「阿寒湖アイヌコタン」は、約120人が暮らす北海道内有数のコタンです。
アイヌの信仰「全てのものに魂が宿る」の意識のもと、触れ合う・つくる・食べる・受け継ぐ・解き放つ・自然と生きる、といった体験ができる場所としてアイヌの文化を発信してきました。 北海道の雄大な自然と共存し、豊かで神秘的な精神世界を築いたアイヌの文化や歴史を体感できる場所です。
阿寒湖アイヌコタン Webサイト https://www.akanainu.jp/
関連イベント
「阿寒アイヌアートウィーク2024」オープニングイベントにて、『urar suye(ウララ スエ)』特別上映会を開催
短編映画『urar suye』の舞台となった阿寒湖アイヌコタンで開催される、「阿寒アイヌアートウィーク2024」のオープニングイベントを、2024年11月23日、アイヌ文化伝統・創造館「オンネチセ」にて開催。プログラムの一環として、本作の上映会を開催します。阿寒アイヌアートウィークの詳細はWebサイトをご覧ください。
阿寒アイヌアートウィークWebサイト https://akan-ainu-artweek.jp/
*来場者が多数の場合、入場制限を行う可能性がございます。
制作チーム
脚本・編集・監督:十川 雅司
出演:
xiangyu
Koharu Hiyori
秋辺 デボ
床 みどり
山本 栄子
郷右近 富貴子
鰹屋 エリカ
プロデューサー:伊達 善行 / 株式会社ロフトワーク
コ・プロデューサー: 許 孟慈 / 株式会社ロフトワーク
撮影監督:西岡 空良
撮影助手:大西 恵太
録音・整音:久保 琢也
音楽:高橋 遼
ヘアメイク:河本 花葉
制作応援:神出 空
ポスターデザイン:ddd.pizza
製作:釧路市
監修:阿寒アイヌ工芸協同組合
企画・制作:株式会社ロフトワーク
協力:
有限会社 阿寒ネイチャーセンター
株式会社阿寒湖バスセンター
阿寒観光汽船株式会社
阿寒湖アイヌシアターイコㇿ
株式会社プリズム
一般財団法人 前田一歩園財団
民芸喫茶 ポロンノ
ハポの店
阿寒摩周国立公園阿寒湖管理官事務所(環境省)
阿寒湖アイヌコタンの皆様
この事業はアイヌ政策推進交付金(内閣府)を活用して釧路市の委託により行っています。