元ワーナー戦略顧問、仏メディア・エグゼクティブ、 プチョン国際ファンタスティック映画祭フェスティバル・ディレクター他 ドイツ、セネガル、メキシコのAIフィルムメイカーら10名が参加
株式会社パシフィックボイスのプレスリリース
米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)は、10月26日、秋の国際短編映画祭において開催した国際カンファレンス「AIと映画制作の未来:創造性・協 働・倫理の探求」の模様を本日、アーカイブ映像として国内外に公開いたしました。
カンファレンスは、本映画祭エグゼクティブ・ディレクターの東野正剛より、SSFF & ASIAにおけるAI作品の現状説明からスタート。
「海外からの応募は毎年約5,000作品にのぼり、近年ではAIを活用した映像作品の割合が急増している。 2024年には約2%(112作品)だったAI活用作が、2025年には約6%(275作品)に達した」と伝えられました。
本カンファレンスには、10か国から映画監督、プロデューサー、研究者、業界リーダーが集結。 「創造性と協働(Creativity & Collaboration)」、「倫理と文化的責任(Ethics & Cultural Responsibility)」、 「AIシネマの未来(Future Vision of AI Cinema)」という3つのトピックについてディスカッションを繰り広げました。
AI技術が映画制作の現場にどのような変革をもたらしているのか、創造性や倫理、著作権の観点から活発な議論について、 次のページでイベントレポートとしてご紹介します。
※本イベントは令和7年度日本博2.0事業の一環として開催されました。
AIがもたらす「創造と協働」の進化
本国際会議では、AIを映画制作における「創造的パートナー」として活用する世界各地の実践が共有された。日本の 映画監督、串田壮史氏(『ラストドリーム』)は、AI支援による短編制作について「言葉で人類の記憶を引き出す“対 話の相手”であり、単なる道具を超えている」と語りました。同じく監督の山口ヒロキ氏(グランマレビト)は、「現時点では AIは創作者の意図を可視化するアシスタントに近いが、将来的には真の共創者になり得る」と指摘しました。 ドイツからは作曲家・映画監督のマルセル・バルゾッティ氏がAI映画 『Imperia』 の制作工程を紹介し、3万回を超える プロンプトを重ねた過程を通じて「どんな技術を使っても、映画の核は物語である」と強調しました。共同脚本家のグンドゥラ・バルゾッティ=バスト氏は、脚本そのものの本質は変わらない一方でAI制作に特有の負荷があると述べ、「脚本づくり 自体は実写とAIで大差ないが、プロンプトに入ると狙い通り出てこないので何度も書き直す必要がある」と話しました。 フランスのメディア・エグゼクティブ、アレクサンドル・ミシュラン氏は、「フランスではAIを文化的脅威と捉える議論もあるが、芸術史を振り返れば新技術は常に創造性を更新してきた」と述べ、技術と創造の関係を歴史的に捉える視点を提示しました。
各国が語るAI映画の可能性と課題
後半では、各地域でのAI導入状況と課題が共有されました。 イランのテヘラン国際短編映画祭のプログラマーであるジャヴィッド・ソブハニ氏は、AIは「単なる道具とも共創者とも一言 で言えない」としつつ、制約の多い環境ではAIが「盾のように不足する資源を補い、時にプロデューサーや共同脚本家の 役割すら果たす」と述べました。
セネガルの映画監督ウセイン・デンベル・ソウ氏もまた、AIが制約を飛び越える可能性を強調し、「私たちの地域ではAIは 産業を壊すものではなく新しい産業を作る力になる」と語り、AIがなければSFやファンタジーのような大規模VFX作品は 現実的に不可能だったと振り返りました。
米国のダグラス・モンゴメリー氏(元ワーナー・ブラザーズ戦略アドバイザー)は、AIが協働と制作速度を押し上げる点を 現実的に評価し、「AIは完璧ではなく人間を置き換えないが、毎日良くなっている」と述べたうえで、アニメ制作期間について「今後はわずかな短縮ではなく2〜5倍規模で短縮される可能性がある」と展望を示しました。
一方、メキシコの映画監督オスカー・パレス氏は、同国ではAI映画の普及がまだ限定的で制度も追いついていないと指 摘し、「AIは創作ではなく道具だとみなされ、著作権制度が技術の進化に追随できていない」と警鐘を鳴らし、教育と倫理の重要性を訴えました。また韓国・富川国際ファンタスティック映画祭ディレクターのシン・チョル氏は、「毎朝のようにゲームチェンジャーが現れる」と急激な進化を指摘しつつ、「フルオート・クリエーションの方向に進むのは怖い。創作者の意図が失われるリスクがある」と懸念を示した。しかし同時に、AIが若い創作者にとって「ジェームズ・キャメロンと同じスタートラインを与える」民主化の側面もあると述べ、今後は技術より創造性が勝負になると語りました。
AI作品の応募が急増 ― 新たな映画表現の潮流に
「AIは創造性を奪うのではなく、拡張する」
「AI技術を取り入れた作品応募が増加する中、AIシネマはもはや一過性の実験ではなく、新たな映像表現のジャンル として確立されつつあるのではないか。」この問いのもと、議論を通じて繰り返し共有されたのは、AIは人間の創造性を奪う存在ではなく、それを拡張する存在であるという認識です。
SSFF & ASIA 代表の別所哲也は挨拶で、「技術革新の時代にあっても、物語の力を祝福し続けることが私たちの使命だ」と述べ、会場全体が「人間とAIが共に創る次の映画時代」への期待を分かち合ったまま、セッションは盛況のうちに幕を閉じました。
国際カンファレンス「AIと映画制作の未来:創造性・協働・倫理の探求」開催概要
🔸日時:2025年10月26日(日)10:00-13:00
🔸場所:赤坂インターシティコンファレンス the AIR
🔸主催:株式会社パシフィックボイス、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
【日本博】
「日本博 2.0」では、2025年日本国際博覧会の機運醸成やインバウンド需要の回復、国内観光需要の一層の喚起を目指しつつ、日本の美と心を体現する 我が国の文化芸術の振興及びその多様かつ普遍的な魅力を発信します。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/nihonhaku/index.html
【ショートショートフィルムフェスティバル & アジア】
米国俳優協会(SAG)の会員でもある俳優 別所哲也が、米国で出会った「ショートフィルム」を、新しい映像ジャンルとして日本に紹 介したいとの想いから1999年にアメリカン・ショート・ショートフィルムフェスティバル創立。2001年には名称を「ショートショート フィルムフェ スティバル(SSFF)」とし、2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定されました。
また同年、アジア発の新しい映像文化の発信・新進若手映像作家の育成を目的とし、同年に 「ショートショート フィルムフェスティバル アジア(SSFF ASIA 共催:東京都)」が誕生し、現在は 「SSFF & ASIA」を総称として映画祭を開催しています。
2018年には、映画祭が20周年を迎えたことを記念し、グランプリ作品はジョージ・ルーカス監督の名を冠した 「ジョージ・ルーカス アワード」となりました。 2019年1月には、20周年の記念イベントとして「ショートショートフィルムフェスティバル in ハリウッド」が行われ、2019年の映画祭より、ライブアクション部門(インターナショナル、アジアインターナショナル、ジャパン)および ノンフィクション部門の各優秀賞4作品が、2022年からはアニメーション部門の優秀賞を含む5作品が、翌年のアカデミー賞短編部門へ のノミネート候補とされる権利を獲得しました。SSFF & ASIAは映画祭を通じて引き続き、若きクリエイターを応援してまいります。
国際カンファレンス「AIと映画制作の未来:創造性・協働・倫理の探求」パネリスト
2024年、マルセル・バルゾッティは『TRANSFORMATION』で映画監督としてデビューした。 このディストピア的で、精巧にAI生成されたSF短編映画は、12の国際賞と37のノミネーショ ンを獲得し、ドイツで「貴重な作品」の評価を受けた。『IMPERIA』では、BAI Picturesおよ びSchmerbeck Entertainmentと共に、2作目の大規模AI SFプロジェクトを実現し、ト ロント国際平和映画祭で「名誉トリビュート映画賞」を受賞したほか、東京、ローマ、トロント、ユタ、ミュンヘン、パリなど世界各国の映画祭で上映される予定である。
バルゾッティはまた、100本を超える国際的な映画作品(『教皇ヨハンナ』『海の狼』『ベルン の奇蹟』など)の音楽を手掛けた国際的な映画作曲家であり、その映画音楽やミュージックビデオで50以上の国際賞を受賞している。さらに、Sky、コンコルド、RTL2 などテレビ局や配信向けに多くのCMや企業映像の音楽を作曲している。バルゾッティはヨーロッパの大学で講義を行い、世界各地で自身の映画音楽によるオーケストラコンサートを実現している。また、国際サウンドライブラリー「ETHNO WORLD」と音楽制作会社「TUNESFORMOVIES」のCEOも務めている。さらに、VSL、Waldorf、UVI製品のブランドアンバサダーでもある。
グンドゥラ・バルゾッティ=バストは、ミュンヘンのルートヴィヒ=マクシミリアン大学教育科学部 の学部長室を管理している。彼女は数十年にわたり、ソプラノとしてミュンヘン国際合唱協 会のメンバーでもあった。現在は夫マルセル・バルゾッティの映画音楽や、BAMミュージックパブリッシング社における音楽出版のコンサルタントとして活動している。グンドゥラ・バルゾッティ=バストは、映画プロジェクト『Transformation』および『Imperia』の共同脚本家でもある。
シン・チョル氏は2019年より富川国際ファンタスティック映画祭(BIFAN)のフェスティバ ル・ディレクターを務め、韓国映画の近代化において中心的な役割を果たしてきました。プロ デューサーとしては、『マリッジストーリー』『嘘』『猟奇的な彼女』といった影響力の大きな作品を手がけています。とりわけ『猟奇的な彼女』は“韓流”ブームの火付け役となり、アジア全域に広がるとともに、ハリウッドや中国など世界各国でリメイクを生み出しました。その成功は新たな才能を映画界に呼び込み、大手企業による投資を促し、韓国映画に新たな黄金期を もたらしました。韓国映画を刷新したプロデューサーとして広く認められるシン氏は、今も新たな目標に挑み続けています。2024年のBIFANからは、「BIFAN+」プロジェクトを主導し、生成AIがもたらす影響を探究しています。本プロジェクトは、表現の自由を拡張し、映画および映画祭の未来的進化に向けたビジョンを提示することを目指しています。
ウセイン・デンベル・ソウは、映画制作における人工知能の活用を先駆的に進めるセネガルの映画監督・脚本家である。彼は自身の映画『『ティアロエ44』で2025年のWorld AI Film Festival(WAiFF)を受賞した。現在、アフリカに生成系映画スタジオを立ち上げ、映像制作へのアクセスを民主化し、アフリカの物語を世界規模で発信することを目指している。新しいテクノロジーとその映画産業への影響に情熱を持ち、人工知能における協働的なイノベーションを推進する国際コミュニティ「AI Thinkerer」のダカール代表も務めている。
1982 年大阪生まれ。ピラミッドフィルム所属。長編デビュー作『写真の女』(20 )は、 大阪アジアン・SKIP シティ・東京国際・ファンタジアなど 90 の国際映画祭で上映されて 40 冠を達成し、10 カ国でリリースされた。長編第二作『マイマザーズアイズ』(23 )は、 イギリス最大のホラー映画祭・ロンドンフライトフェストで 《J ホラー第3波の幕開け》と評され、世界に向けて配給が行われている。長編第三作の『初級演技レッスン』(24) は SKIP シティ映画祭のオープニング作品として企画・製作された。最新作であるフル AI 短篇映画『ラストドリーム』(25) は、プチョン国際ファンタスティック映画祭の AI 部門で最高賞を受賞し、「AI 映画の未来を変える衝撃作」と評された。
ストーリーテリングにおける新たなフロンティアを絶えず追求してきたフランスのメディア・エグ ゼクティブ。パリ・プレミアケーブルテレビで放送の基礎を学び、その後Canal+に移りプロ グラムディレクターを務め、プレミアムテレビの創造的な大胆さや、Canal+グループ内でのヨーロッパにおけるデジタル革新を取り入れた。2005年には、インタラクティブ形式における先駆的な取り組みが評価され、France 5の番組『Cult』でインターナショナル・インタラクティブ・エミー賞を受賞し、革新への鋭い感覚を証明した。2006年には Microsoftに入社し、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域におけるMSNの責任者として10年 間従事、同社最大規模のグローバル地域のひとつを率い、3大陸にわたってデジタルコ ンテンツプラットフォームの基盤を築き上げた。2021年からは、フランス国立映画センター(CNC)のデジタル体験委員会の議長を務め、VR・AR・XRといった没入型フォーマットを推進した。2024年には「You + AI」というイニシアティブを立ち上げ、人工知能がいかに創造的な実践や文化的な関わり方を再定義するかを先取りした。現在は、Knowledge Immersive Forum(KIF)の創設者として、文化とテクノロジーの未来についての国際的な対話をキュレーションしている。
グローバルメディアの専門家。モントゴメリー氏は20年以上のメディアと小売業界での経験を 持ち、ウォルマートストアズで新しく取得した海外小売を統合する仕事に従事する。その後、 モンゴメリー氏は15年間、3つの異なる国(米国、日本、英国)でワーナー・ブラザース戦略アドバイザーとして勤務し、WBの経営陣や主要なパートナーに対するコンサルティングに携わる。 さらに、氏は114年の歴史を持つ日米協会南カリフォルニア支部の会長を務め、マリー・コンドウ と大谷翔平を「国際市民」として表彰するイベントを取り仕切る。2021年には、 「グローバル・コネクツ・メディア」を設立し、社長兼CEOとして就任。グローバル・コネクツ・メディア は、クライアントが世界のエンターテインメントや小売市場にアクセスできるようコンサルティング、 サポートする企業である。また、AIを活用したショートアニメのコンテンツ制作とプラットフォーム開発を行う株式会社TOKYO EPICのアドバイザーに就任している。
人工知能を専門とするメキシコのエンジニアであり、インディペンデント映画作家である。彼 の作品は、テクノロジーがいかに芸術や物語表現の限界を広げることができるかを探求して いる。2023年には、メキシコ国会下院(連邦議会)の公式な場に招かれ、AIが多様な分野で果たす役割について講演し、社会や文化の複数の領域にこの技術を導入することへの関心を示した。彼のデビュー短編映画『Who is God?(神とは誰か?)』 (2023)は、全編が人工知能によって制作され、世界でも最初期のAI生成短編映画 のひとつとして、メキシコ著作権庁に正式に登録された。このプロジェクトにより、彼は映画、 スピリチュアリティ、そして新興技術の関係を再定義する新しい世代のクリエイターの一員と して位置づけらた。現在、彼はこの探求をさらに発展させる作品『Yo Soy(私は在る)』 を制作中。本作は神へのラブレターとして構想されており、個人的かつ精神的な探求を映し出す二部作の第2作目にあたる。この新しいプロジェクトは、象徴的な物語と技術革新を融合させ、国際的な観客に届けることを目指す、彼の歩みにおける次なる一歩を示める。
ジャヴィド・ソブハニは、1991年イラン生まれの脚本家・映画監督で、工学修士号(産業工学)を持つ。イラン脚本家協会のメンバーであり、2018年からアカデミー賞公認のテヘラン国際短編映画祭にてプログラマーおよび国際プログラム・コーディネーターを務めている。同映画祭 はアジア最大級の短編映画イベントのひとつであり、彼は戦略的企画、プログラミング、国際調整を担っている。2020年以降は、世界有数の短編映画制作・教育機関であるイラン青少年 シネマ協会において国際プログラムコーディネーター兼代表を務めている。彼の作品には長編映画脚本『Torpedo』や複数の短編映画があり、最新作『The White Horse』は2024年、 ロシア・カザン国際映画祭にて長編企画部門グランプリを受賞した。現在は2作目の長編映画 脚本を執筆中である。ソブハニは、ポルトガル、フランス、イタリアなどの国際映画祭で審査員や選考委員を務めてきた。また、2024年の第41回テヘラン国際短編映画祭においてAIコンペ ティション部門を導入し、それ以来、正式な国際コンペティション部門として定着している。
京都府出身。 立命館大学映画部第39代部長。19歳で監督した『深夜臓器』でインディー ズムービー・フェスティバル グランプリを受賞後、学生時代に制作した初の劇場用長編作品『グ シャノビンヅメ』が2004年に劇場公開。この作品はモントリオール・ファンタジア国際映画祭受賞、プチョン国際ファンタスティック映画祭など数多くの海外映画祭に正式招待された後、各国で配給が決定した。実写映画の代表作は『メサイア』シリーズ(原作:高殿円)、『血まみれ スケバンチェーンソー』(原作:三家本礼)、『トリノコシティ』(原曲:40mP)など。自身初の生成AI映画『IMPROVEMENT CYCLE-好転周期-』が2024年プチョン国際ファンタスティック映画祭・釜山国際AI映画祭・トリエステSF映画祭などのAI部門に正式招待され、 2025年8月にはAI映画『グランマレビト』が劇場公開された。現在は映画制作現場での生成 AIの使用方法について数多くの登壇を行なっている。