NHK技研と千葉大・京大共同で「発電できる有機ELディスプレーデバイス」を開発

~発光・発電を両立したデバイスでの青色発光は世界初~

NHK | 日本放送協会のプレスリリース

NHK放送技術研究所(技研)は、千葉大学先進科学センターの深川弘彦特任教授、京都大学大学院理学研究科の畠山琢次教授と共同で、一つの素子で「発光」と「太陽光発電」を切り替えて使用できる「発電できる有機EL(※1)ディスプレーデバイス」の開発に成功しました。発光と発電を両立したデバイスで青色の発光を実現したのは世界で初めてです。将来、発電機能を備えた有機ELディスプレーができれば、ディスプレー部で発電した電力を再利用して、災害時など電源がない環境でも映像を表示できるようになることが期待されます。

                                                    
これまで、電気を与えて光を発する発光と、光を受けて電気を得る太陽光発電は逆過程のため、これら2つの機能を一つの素子で両立するのは困難でした。しかし、今回、発光に必要な高い発光効率と太陽光発電に必要な強い光吸収特性を兼ね備えた材料(MR-TADF材料(※2))を用い、素子内部のエネルギーを精密に制御することで、発光と太陽光発電を切り替えて使用できるデバイスを実現しました。ディスプレー応用に向けて赤、緑、青の発光に成功し、特に、発光と発電を両立したデバイスで青色の発光を実現したのは世界で初めてです。今後は、発光と発電のさらなる高効率化や耐久性の向上を進め、消費電力の少ないディスプレーなどの実用化を目指します。

               開発したデバイスの構成
                                                 開発したデバイスの発光の様子(発光部3mm角)

【開発したデバイスの詳細】 

半導体の性質を持つ有機物は有機半導体と呼ばれ、有機半導体を用いて、発光機能をもつ有機ELや発電機能をもつ有機太陽電池の開発が一般的に広く進められています。有機ELと有機太陽電池は、デバイス構成が類似していますが動作原理が異なります。有機ELは電極から流れ込んだ電荷(正孔と電子)を結合させて発光するのに対し、有機太陽電池では外部からの光を吸収することで生成した電荷を分離させて発電するという逆の原理によって動作します。発光と発電には、それぞれに適した材料とデバイス設計があり、これらはトレードオフとなるため1つのデバイスで2つの機能を両立することは非常に困難でした。

しかし、今回、デバイスの中で発光および発電の中心となる活性層材料として、高い発光効率と強い光吸収特性を兼ね備えたMR-TADF材料を活用し、内部に流れる電荷などの動きを精密に制御することにより、発光効率と発電効率を世界最高値となる高いレベルで両立しました。

本デバイスで赤、緑、青の3色の発光を実現しました。また、本デバイスは青色から赤色、白色に至る全可視光領域での発電が可能です。

【開発の経緯】

本デバイスには、これまで技研が研究開発を進めてきたフレキシブル有機ELディスプレーの技術を応用しています。また、MR-TADF材料については京都大学と、動作原理の解明については千葉大学と共同で研究を進め、開発に成功しました。

技研が研究しているフレキシブル有機ELディスプレーは軽量性、収納性、衝撃耐性、可搬性などの優れた特徴により、ディスプレーの利便性やデザイン性を向上させ、さらには没入感・臨場感あふれる将来の新しい視聴スタイルを生み出すことが期待されています。フレキシブル有機ELディスプレーの研究開発の中で、ディスプレーの長寿命化を解決するため、柔軟なプラスチックフィルム上でも安定した発光を可能とする技術の研究に取り組んできました。

今回、有機ELを安定して動作させるために技研が培ってきた電荷注入材料とデバイス作製技術を応用して、これまで実現が困難だった「発光」と「発電」を両立したディスプレーデバイスの開発に成功しました。

この研究成果は2026年1月27日に世界的に著名な学術論文誌であるNature Communications誌に掲載されました。今後も、省エネルギーや災害時の情報提供に役立つディスプレーの早期実現に向け研究開発を進めていきます。

(※1)有機エレクトロルミネッセンスの略。ある種の有機化合物に電流を流すと発光する現象。

(※2) 多重共鳴型熱活性化遅延蛍光材料:ホウ素(B)、窒素(N)などの原子が特徴的な位置に交互に配置された構造の材料で、高い発光効率と高い色純度を持つ有機EL材料としても実用化されている。

今、あなたにオススメ