https://www.wowow.co.jp/music/kai/
株式会社WOWOWのプレスリリース
2024年11月にデビュー50周年を迎え、1年間にわたるアニバーサリープロジェクトを展開した甲斐バンド。その集大成として16年ぶりに凱旋した昨年11月8日の日本武道館公演では、歴史に刻まれた名曲の数々で圧倒的な存在感を示した。さらに、終演直後には、50周年イヤーの“EXTENSION”と位置づけた一夜限りのライブ「ニュー・ブラッド」開催をサプライズ発表。大団円だけでは終わらない彼らの美学がそこにあった。
年の瀬も押し迫った12月26日。東京・豊洲PITにはプラチナチケットを手にしたファンが長蛇の列を成した。武道館の直後に開催されるライブハウス公演。甲斐バンド史上初めてステージの映像演出にLEDスクリーンを導入し、歌詞をフィーチャーした新機軸に臨むとの事前アナウンスもあった。高まる期待と迸る熱気が冬至の寒さを吹き飛ばしていく。会場に入ると、舞台前方に下ろされた紗幕に映し出された[Kai Band]のロゴマークが、旗印のようになびいていた。
定刻を過ぎ場内が暗転すると、ステージ全面を覆う薄い幕の向こうに甲斐バンドの雄姿が浮かび上がる。歌い出されたのは「破れたハートを売り物に」だ。一語一語噛み締めるように歌う甲斐よしひろ、松藤英男、田中一郎。三人で声を合わせてのリフレインが、固い絆を感じさせる。明朝体で認(したた)められた歌詞が、心の繋がりをなぞっていく。田中のギターソロは、今なお渇望する魂の叫びのようだ。
続く「きんぽうげ」では情感のある言葉が綴られ、大人の男女の愛と刹那が歌われる。震えるふたつの鼓動のようにユニゾンする田中と稲葉政裕のツインギターが、深い印象を与えていく。前月の武道館ファイナルでは演奏されなかった代表曲が続き、冒頭から場内のテンションは最高潮だ。
そして、バンドが鳴らす爆音が合図だった。ついに幕が下り、地鳴りのような歓声と雄叫びが湧き上がる。骨太なリズム&ブルースが刻まれたのは「翼あるもの」だ。甲斐の漂流する魂を結実させた屈指の名曲。LEDスクリーンにはさまざまな風景がインサートされ、大海原の彼方夕焼けの空に向かって鳥たちが羽ばたいていく。この夜のために作られた映像が、楽曲に新たなインスピレーションを与えていく。
「新しいアプローチで新しい試みのライブを今日やります。最後まで楽しんでいって欲しい」甲斐の力強い宣言に続いたのは、ハンフリー・ボガート主演の米サスペンス映画にインスパイアされた「三つ数えろ」だ。28台のテレビモニターを積み上げたモノクロアートな世界が描かれ、破裂しそうな衝動を内包した言葉が真っ赤に染め上げていく。都市の暴力性がスリリングに描かれる中、甲斐のブルース・ハープの尖った響きが聴き手の胸に突き刺さる。
50年代のロックミュージックへのオマージュにあふれた「ランナウェイ・ブルース」も最高だった。往年のアメリカのジュークジョイントから繁華街そして燃え盛る炎の中をくぐり抜けるレイルウェイへと情景が移り変わる中、甲斐はロックの先達たちへのリスペクトを体現するかのように、腰をくねらせる。疾走感をより際立たせる岡沢茂の緩急自在なベースラインも見事で、“これぞロックンロール!”と唸った。
ニール・ドーフスマンがミックスを手掛けたことでも知られる「フェアリー(完全犯罪)」では、ダンサブルなポップロックに会場全体がダンスフロアと化す。三日月が高層ビル街を照らすロマンティックな夜景の下、甲斐の囁くようなスキャットもいつも以上に艶やかだ。甘いメロディラインが秀逸な「ビューティフル・エネルギー」では、甲斐がファースト・ヴァースを、ギターを抱えた松藤がセカンド・ヴァースを歌い、最後は二人で声を揃える。大きく映し出されたマーガレットが、彼らが築き上げてきた歴史を祝福しているかのように花開いていた。
甲斐の憂いを帯びたウェットな歌声が心に沁みた「BLUE LETTER」も格別だった。心の傷や見えない涙の粒が詰まった切ない息遣いさえも聞こえてくる、そんな繊細な歌が届けられた。メンバー紹介を経て、甲斐がハイスツールに座って歌った「安奈」では、キャリアを彩るシングル・アルバムのジャケット写真の数々が大型ビジョンに流され、深い感慨を分かち合う。誰もが大きな余韻に浸ったひとときだった。
続く「黄昏に消えた」は、最新アルバム『ノワール・ミッドナイト』オープニング・ナンバー。キーボードの前野知常が耳に残る印象的なフレーズをリフレインし、甲斐が星勝と共に練り上げたアレンジを屈強なミュージシャンたちが極上のアンサンブルに構築していく。現在進行形の甲斐バンドの名刺代わりとも言える一曲。立ち止まることなく“NEXT”へと向かう彼らの針路が示された名演だった。
圧巻は怒涛のラストスパート四連発だった。静かな立ち上がりから加速していく「氷のくちびる」、デビューのきっかけとなったことでも知られる「ポップコーンをほおばって」、スリリングで最もハードボイルドな「冷血(コールド・ブラッド)」、甲斐と満場の観衆の叫びが木魂した「漂泊者(アウトロー)」。砕け散る氷の破片、続けざまに放たれる言の葉、飛び散る血しぶき、駆け抜けるハイウェイ。アクセルを全開にする甲斐の歌とバンドの演奏を映像が追走し、会場の誰もがリミッターを完全に振り切りレッドゾーンを越えていった。
熱烈なアンコールを受けて、ロックショウは続いていく。松藤と吉田佳史によるツインドラムが地響きのように響き渡り、甲斐はマイクスタンドを左足で高く蹴り上げる得意のパフォーマンスを魅せる。小林旭のカバー曲「ダイナマイトが150屯」だ。昭和歌謡の代表曲にして至極のロックンロールが、強靭なBEATに乗せて演奏された。
ハイライトは、コーラスの亜美が加わって披露された最新アルバム表題曲「ノワール・ミッドナイト」だった。昨年亡くなった西村智彦(SING LIKE TALKING)と共に甲斐が創り上げた斬新なサウンド。マーヴィン・ゲイの新しい解釈に挑んだ渾身の一曲に全身全霊を込める甲斐と、そのすべてを受け止めようとするオーディエンス。新たな音楽表現に挑むその姿勢が実にスリリングで、誰もが固唾を飲んで演奏に聴き入っていた。
最後の曲は、彼らが日本を代表するロックバンドに上り詰めた国民的アンセム「HERO(ヒーローになる時、それは今)」だった。ステージ上と客席が魂の交感をする壮大な光景は、何度見ても尊く美しい。そして、この夜のパフォーマンスはまた新たな出発点に立つ甲斐バンドの“原点”を示しているようでもあった。「ありがとう。また来年やるからね」その言葉を残して、甲斐は舞台から下りていった。次の約束があることがまた嬉しかった。
50周年アニバーサリーの“延長戦”を、見事に打ち上げた甲斐バンド。彼らの作品で描かれてきた映画的な物語性や時に叙情的に時に叙事的にスケッチされた状景描写に映像表現を加えて、楽曲に新たな解釈と深い示唆を与えてくれた。極限まで追求したサウンド・クリエイティヴを昇華させた、最新にして最高のバンドサウンドも素晴らしかった。
振り返れば、甲斐バンドは常に前例の無い挑戦に挑み続け、金字塔を打ち立ててきた唯一無二の存在だ。この夜のライブでも輝かしい栄光の軌跡の先にまだ見ぬ未来を見据え、彼らはあえて“新機軸”を打ち出した。そして、その姿勢こそが甲斐バンドの矜持だ。デビューから半世紀以上が経過した今なお、最前線に立って新たな挑戦へと向かう。彼らの今後の活動への期待が高まるばかりの、まさにプレミアムな夜だった。
<甲斐バンド>
甲斐よしひろ(Vocal and Harp)
松藤英男(Drums, Guitar and Chorus)
田中一郎(Guitar and Chorus)
<サポートメンバー>
稲葉政裕(Guitars and Chorus)
前野知常(Keyboards and Chorus)
岡沢茂(Bass)
吉田佳史(Drums)
亜美(Chorus)
<セットリスト>
破れたハートを売り物に
きんぽうげ
翼あるもの
三つ数えろ
ランナウェイ・ブルース
フェアリー(完全犯罪)
ビューティフル・エネルギー
BLUE LETTER
安奈 -2012-
黄昏に消えた
氷のくちびる
ポップコーンをほおばって
冷血(コールド・ブラッド)
漂泊者(アウトロー)
【アンコール】
ダイナマイトが150屯
ノワール・ミッドナイト
HERO(ヒーローになる時、それは今)
【番組情報】
甲斐バンド 50TH ANNIVERSARY EXTENSION 「ニュー・ブラッド」 presented by WOWOW
2026年2月7日(土)午後8:00~
WOWOWプライムで放送/WOWOWオンデマンドで配信
※放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
デビュー50周年の集大成として16年ぶりの日本武道館公演を敢行した甲斐バンドが、一夜限りの特別ライブを豊洲PITで開催。その模様をWOWOWで独占放送・配信。
1974年のデビュー以来、日本のロックシーンの先駆けとして、数々の伝説的ライブをその歴史に刻み込んできた甲斐バンド。11月8日にはデビュー50周年の集大成として16年ぶりとなる日本武道館公演を行ない、圧巻のステージで先駆者としての矜持を満場の大観衆に見せつけた。だが、その成功をもってなお立ち止まることなく挑戦を続ける彼らが次に開催したのが、12月26日、東京・豊洲PITでの一夜限りのスペシャルライブ「ニュー・ブラッド」だ。
50周年の“EXTENSION”と位置付けられたこの公演は、彼らの歌詞や世界観を表現するため、初の試みとしてLEDスクリーンがステージ演出に加えられた。彼らの楽曲で描かれている映画的な物語性や、時に叙情的に時に叙事的にしたためられてきた情景描写がフィーチャーされるこのライブは、彼らの新機軸を示すものになるだろう。16カ月にわたってお届けしてきた「甲斐バンド 50周年記念 WOWOWスペシャルイヤー」のグランドフィナーレとなる本公演、それは甲斐バンドの新たな伝説の幕開けでもあるのだ。
収録日:2025年12月26日
収録場所:東京 豊洲PIT