30年前、水戸芸術館でシューベルト《冬の旅》の名唱を聴かせたクリストフ・プレガルディエンが帰ってくる。
公益財団法人水戸市芸術振興財団のプレスリリース

30年前、水戸芸術館でシューベルト《冬の旅》の名唱を聴かせたクリストフ・プレガルディエンが帰ってくる。ドイツ・リートの伝達者として、またバッハの受難曲のエヴァンゲリストとして世界的な名声をほしいままにしたリリック・テノールは、古希を迎え、シューベルトの遺作となった《白鳥の歌》にあらためて取り組む。我が国を代表するフォルテピアノ奏者であり、ピリオド楽器による演奏の開拓者でもある渡邊順生という、またとないパートナーを得て。
シューベルトの《白鳥の歌》は、作曲者の死後にまとめられた歌曲集であり、連作が意図されたものではない。プレガルディエンと渡邊は、今日一般的となっている曲順を自由に入れ替え、さらに《白鳥の歌》には含まれない歌曲も加え、シューベルトの後期の名歌を独自の視点で編んだプログラムを作った。
シューベルトの後期は、ロマン主義の世界に入り込んでいる。18~19世紀の産業革命により、都市化した社会に疎外された作曲家は、暗闇からほのかに見える希望の光にすがり、歌で夢を綴った。
そして21世紀、この分断の時代。プレガルディエンと渡邊順生がつむぐシューベルトの歌は、現代をさまよう孤独な魂の救済の響きとなって、あたたかな光を放つであろう。
日 時 2026年4月5日(日) 14:30開場 15:00開演
開 場 水戸芸術館 コンサートホールATM
料 金 全席指定 一般6,000円 U-25(25歳以下・要身分証提示)2,000円
※U-25チケットの取り扱いは水戸芸術館のみ ※未就学児入場不可
出 演 クリストフ・プレガルディエン(テノール)、渡邊順生(フォルテピアノ)
H P https://www.arttowermito.or.jp/hall/lineup/div_4730.html
チケット購入
【窓口】水戸芸術館 エントランスホール内チケットカウンター(9:30〜18:00/月曜休館)
ヤマハミュージックジャパン水戸店 TEL: 029-244-6661(店頭販売のみ)
【電話】水戸芸術館 チケット予約センター TEL: 029-231-8000 (9:30〜18:00/月曜休館)
かわまた楽器店 TEL: 029-226-0351
【WEB】水戸芸術館 インターネット予約 https://www.arttowermito.or.jp/ticket/
e+(イープラス) https://eplus.jp
クリストフ・プレガルディエン&渡邊順生 出演者からのメッセージ

水戸のみなさまへ
長い年月を経て、再び水戸の皆さまの前で歌曲リサイタルを行う機会をいただけることを、心より嬉しく思っております。今回は優れた音楽的感性と深い詩情を併せ持つピアニスト、渡邊順生氏とともに、フランツ・シューベルトの遺作集《白鳥の歌》をお届けいたします。
ここで、1991年に始まった私自身にとってひとつの大切な交流の環が静かに結ばれます。
1991年、私にとって初めての来日となったその年、栃木[蔵の街]音楽祭でのバッハ《ロ短調ミサ曲》を歌い、静岡、東京等で渡邊順生氏とともに、シューベルト《美しき水車屋の娘》による歌曲リサイタルを開催いたしました。1994年4月には、水戸でバッハ・コレギウム・ジャパン、鈴木雅明氏とともに《マタイ受難曲》を演奏し、
1996年にはアンドレアス・シュタイアー氏と《冬の旅》を携えて再び水戸を訪れるという、忘れがたい音楽の記憶が、この街と深く結びついています。
そして今回お届けするのが《白鳥の歌》です。シューベルトが人生の最晩年に書き遺したこれらの歌曲は、《冬の旅》や《美しき水車屋の娘》のような物語的な連作ではなく、ルートヴィヒ・レルシュタープとハインリヒ・ハイネの詩による13の歌曲から成る、約50分の珠玉の作品集です。その構成の自由さゆえに、私たち演奏家は楽曲の配列を再構成し、さらに数曲を加えることで、一夜のリサイタルとして完結したひとつの音楽世界を描くことができます。
本公演では、第1部にレルシュタープの詩による7曲を中心に、そこへ音楽的・ドラマ的に美しく呼応するシューベルトの3曲を加えてお聴きいただきます。第2部は、エルンスト・ヴィルヘルム・シュルツェの詩による4曲で幕を開け、やがてハイネの詩による6曲へと至ります。その内省的で陰影に富む響きは、心理的にも音楽的にもきわめて自然な流れを生み出し、小さな「内なるドラマ」を形づくります。とりわけハイネの歌曲については、私は長年にわたり、慣習的な配列とは異なる順序で演奏してまいりました。この構成こそが、この作品に秘められた感情の物語を、最も明晰に、そして深く浮かび上がらせると信じているからです。
水戸という、私の音楽人生において特別な場所で、皆さまとこの《白鳥の歌》を分かち合えることを、心より楽しみにしております。このリサイタルが、皆さまの心に静かな余韻として長く残るひとときとなりますように。
心よりの感謝とともに。
クリストフ・プレガルディエン

プレガルディエンとシュトライヒャーのピアノ
1990年の5月、水戸芸術館の開館記念シリーズでチェンバロを弾かせて頂いた時には、ホールの素晴らしい響きに強い感銘を受けました。それまでお目にかかる機会のほとんどなかった故吉田秀和館長(当時)と親しくお話しできたことも忘れ難い思い出となっています。あの時も午年でしたが、それからちょうど日本風に言うと三周り、再びあの素晴らしいホールで、しかも今度は敬愛するプレガルディエン氏との共演のために水戸へ行ける、というのは夢のような話です。
《白鳥の歌》の第7曲〈別れ〉という歌曲をご存じですか。馬のひづめの音も軽やかにこれから
楽しい旅に出ようという曲で、その馬のひづめの音を模したピアノ伴奏のとても印象的な曲です。私の頭の中では、その軽快な響きがくるくると回っています。歌ももちろんですが、シューベルトは何と美しいピアノ伴奏のパートを書いたのでしょうか。それは彼が愛用していた当時のピアノでなければ出すことのできない音なのです。
今回の公演で私が特に嬉しく思っているのは、ナネッテ・シュトライヒャーの製作したフォルテピアノの音を水戸の皆さんに聴いて頂ける、ということです。ナネッテ・シュトライヒャーは、19世紀の最初の四半世紀のウィーンにおける最高のピアノ製作者で、彼女の作り出す、玉を転がすような軽快さと重厚なまでの渋みを兼ね備えたピアノの音はベートーヴェンを熱狂させました。ナネッテ・シュトライヒャーのピアノは現存数が少ないために録音でも聴ける機会はなかなかありません。プレガルディエン氏の美しい声とシュトライヒャー・ピアノの音色は、シューベルト自身が思い描いていた歌曲の響きの理想を皆様にお聴かせできるのではないか、と今からわくわくしています。
渡邊 順生
出演者プロフィール
クリストフ・プレガルディエン

「若々しい輝きがありながら、切ない美しさと鋭い洞察に満ちている」(ニューヨーク・タイムズ紙)。クリストフ・プレガルディエンは、世界を代表するリリック・テノールとして、その輝かしい音色、精緻な声のコントロール、そして深い表現力で国際的に高く評価されている。リートの第一人者として、シューベルティアーデはじめ、世界各地の主要音楽祭やホールに出演。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団等、ダニエル・バレンボイム、ニコラウス・アーノンクール、ケント・ナガノ、ジョン・エリオット・ガーディナーといった名指揮者のもとで共演。
オペラでは《魔笛》のタミーノ、《セビリアの理髪師》のアルマヴィーヴァ、《ドン・ジョヴァンニ》のドン・オッターヴィオなどの主要役を演じている。150枚を超える録音では、オルフェ・ドール、ディアパゾン・ドール、グラモフォン誌エディターズ・チョイスなど数々の国際的な賞を受賞。近年は指揮者としても活躍。
水戸芸術館では1996年にリサイタルを行い、アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)との共演でシューベルト《冬の旅》を歌った。
渡邊 順生(わたなべ よしお)

1950年鎌倉に生まれる。チェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード奏者および指揮者として活躍。2010年度サントリー音楽賞、2024年度毎日芸術賞受賞。一橋大学社会学部卒業。アムステルダム音楽院にてグスタフ・レオンハルトに師事し、ソリスト・ディプロマ及びプリ・デクセランスを取得。ブリュッヘン、ビルスマ、エルウィス、B・クイケン等、欧米の名演奏家・名歌手等と共演多数。ソニー、コジマ録音等から多数のCDをリリース。2006年及び2016年のレコード・アカデミー賞を受賞。
論文、エッセイ等も手がけ、モーツァルト《幻想曲とソナタK.475/457》、《トルコ行進曲付きソナタK.331》の校訂楽譜を刊行(全音楽譜)。著書『チェンバロ・フォルテピアノ』(東京書籍、2000)、『バッハ・古楽・チェロ』(アルテスパブリッシング、2016)も好評を博した。2020年にはドキュメンタリー映画『分子の音色』に出演して注目を浴びた。日本チェンバロ協会会員。
水戸芸術館では1990年の開館記念コンサートシリーズでチェンバロ・リサイタルを行っている。
WEB連載「シューベルトの歌曲の楽しみ方」
本公演に関連し、シューベルトの音楽に造詣が深い音楽学者の堀朋平氏がエッセイを寄稿します。
(全3回)
連載「シューベルトの歌曲の楽しみ方」第1回
「さすらうシューベルト、さすらうあなた」

