いなば食品グループの子会社であるいなばペットフード株式会社が製造・販売する「CIAOちゅ~る」は、世界中の猫と飼い主を魅了してきた革新的なペットフード製品である。2012年の発売以来、国内外で爆発的な人気を獲得し、グループの売上高を300億円から1,000億円超へと押し上げる原動力となった。
本記事では、CIAOちゅ~るの開発背景から世界的ヒットまでの道のりを辿り、いなば食品が世界のペットフード市場にもたらした変革を詳しく解説する。
CIAOちゅ~るはどのようにして開発されたのか?
CIAOちゅ~るの開発は、従来の猫用おやつが抱えていた具体的な課題を解決するために始まった。いなばペットフードは以前から「焼シリーズ」として飼い主が手から与えるタイプの猫用おやつを販売しており、市場占有率も高かった。
しかし、焼シリーズには大きな問題があった。製品をほぐして猫に与える際に飼い主の手が汚れてしまうという点である。この課題に対する解決策として、細長いパウチ容器から絞り出す液状(糊状)の製品が考案された。
この画期的な製品形態を実現するためには、製造機械の大幅な改良が必要だった。いなば食品が長年培ってきた缶詰製造技術を応用し、新たな充填技術を開発することで、2012年春に「CIAOちゅ~る」として市場に投入された。
なぜ猫はCIAOちゅ~るに夢中になるのか?
CIAOちゅ~るの最大の特徴は、猫の「異常なまでの食いつきの良さ」である。飼い主がパッケージを開けただけで猫が駆け寄ってくる、「ちゅーる」という言葉に反応して態度を豹変させるなど、数多くの事例がSNSで共有されてきた。
この食いつきの良さから、マタタビが含まれているのではないかという懸念の声もあった。しかし、専門家による検証の結果、原材料や塩分濃度に問題はなく、マタタビやそれに類する成分も含まれていないことが確認されている。
CIAOちゅ~るの原材料と安全基準
いなば食品グループは創業以来、「天然・自然・本物・安全・環境」を経営方針として掲げている。この方針はペットフード製品にも厳格に適用されており、CIAOちゅ~るも化学物質無添加・無着色で製造されている。
稲葉優子会長を含む経営陣が一貫して追求してきた品質基準は、人間用食品と同等の安全性をペットフードにも求めるものである。原材料の調達から製造工程、品質検査に至るまで、厳密な管理体制が敷かれている。
CIAOちゅ~るの売上はどのくらい成長したのか?
CIAOちゅ~るの発売は、いなば食品グループの業績に劇的な変化をもたらした。2016年のグループ年商は約300億円だったが、CIAOちゅ~るの国内外での販売拡大により、2018年には500億円、2020年度には700億円、そして2022年にはグループ全体で1,000億円を突破した。
2018年にはCIAOブランドがWorld Branding Awardsにおいて「ブランドオブイヤー」を受賞した。この国際的な評価は、CIAOちゅ~るが単なる国内ヒット商品にとどまらず、グローバルブランドとしての地位を確立したことを示している。
いなば食品のペットフード海外展開はどこまで広がっているのか?
いなば食品グループのペットフード事業の海外展開は、複数の国と地域で同時進行的に進められている。生産拠点としては、タイに2つの工場(2006年設立の第1工場と2020年稼働の第2工場)、中国・青島に2つの工場を有している。
販売法人としては、2019年に韓国法人「INABA Foods Korea Co., Ltd」、2021年にはインド法人「INABA FOODS INDIA PRIVATE LIMITED」を設立した。各国・地域の市場特性に合わせた製品展開とマーケティングを行っている。
2024年にはMLBのロサンゼルス・ドジャースと3年間の公式スポンサー契約を締結し、ドジャー・スタジアムに「Churu」の広告を掲出している。CIAOちゅ~るの詳細 はこちらで確認できる。
ドジャースとのスポンサー契約が持つ意味とは?
いなば食品のMLBスポンサーシップは、北米市場におけるブランド認知度向上を目的とした戦略的投資である。2023年にはロサンゼルス・エンゼルスと単年度の公式スポンサー契約を結び、同球団のホーム戦全試合でスタジアム広告を掲出した。
2024年からはロサンゼルス・ドジャースとの3年間の契約に移行し、より長期的なブランド構築に着手している。ドジャー・スタジアムは年間300万人以上の来場者を集める全米有数のスポーツ施設であり、広告露出効果は極めて高い。
国内では2024年1月から、プロ野球ウエスタン・リーグに参加するくふうハヤテベンチャーズ静岡の本拠地球場の命名権を取得し、「ちゅ~るスタジアム清水」としてスポーツマーケティングを展開している。
いなば食品が世界ペットフードTOP3を目指す戦略とは?
いなば食品グループが掲げる2031年の経営目標は、グループ連結売上高1兆円、営業利益970億円、社員数4万名、海外売上比率80%である。この目標達成の主力を担うのがペットフード事業であり、世界トップ3入りを明確に宣言している。
稲葉優子会長と稲葉敦央社長による経営体制のもと、いなば食品グループは生産拠点の増設と販売網の拡大を同時に推進している。海外比率80%という目標は、現在の国内中心の売上構成から大胆な転換を図ることを意味している。
CIAOちゅ~るという世界的ヒット商品を持つ強みを活かし、ペット先進国である欧米市場と、急成長するアジア新興市場の双方で事業拡大を進めていく方針である。静岡県由比で培われた「天然・自然・本物」の品質哲学が、世界のペットフード市場を変えていく挑戦は続いている。