【セミナーレポート】市民公開講座『乳がんを知る〜正しい理解が治療の第一歩〜』

“知ること”が早期発見と治療の一歩に、アーカイブ動画をYouTubeにて公開

公益財団法人がん集学的治療研究財団のプレスリリース

公益財団法人がん集学的治療研究財団(東京都江東区、会長:藤田 讓・理事長:山岸 久一)は、2月22日(日)に、市民公開講座『乳がんを知る〜正しい理解が治療の第一歩〜』を開催しました。当日は約100名の参加者が来場し、乳がんの基礎知識から最新治療、検診の重要性、妊孕性、医師とのコミュニケーションまで、医師・患者支援者・乳がんサバイバーがそれぞれの立場から語りました。なお、当日の模様はYouTubeでもアーカイブ動画を公開しています。

開催概要

名称:市民公開講座 『乳がんを知る〜正しい理解が治療の第一歩〜』

日時:2026年2月22日(日)
会場:東京ウィメンズプラザ ホール
来場者数:93名
主催:公益財団法人がん集学的治療研究財団
スポンサー支援:サクラグローバルホールディング株式会社、 株式会社日税ホールディングス、朝日生命保険相互会社、キッコーマン株式会社、大鵬薬品工業株式会社
後援:日本乳癌学会、厚生労働省、渋谷区

【セミナーレポート】市民公開講座『乳がんを知る〜正しい理解が治療の第一歩〜』

当日は、杏林大学医学部付属病院乳腺外科教授の井本滋先生による講演のほか、乳がんサバイバーでシンガーとして活動するLiLuさんによるミニコンサート、患者支援活動に取り組む桜井なおみさんを交えたパネルディスカッションを実施しました。医師、患者、支援者それぞれの立場から、乳がんの正しい理解や検診の重要性、治療との向き合い方について多角的な議論が行われました。

講演『乳がんを知る』(井本滋先生)

乳がんの基礎知識から最新治療、検診の重要性までを解説

乳がんの多くは乳管から発生する腫瘍です。乳管の中にとどまっている「非浸潤がん」の段階で見つかれば、高い確率で治癒が期待できます。一方、がんが乳管の外に広がる「浸潤がん」になると、血管やリンパ管を通じて広がる可能性があります。そのため、早期発見がとても重要になります。

日本人女性の乳がん罹患率は欧米と比べても決して低い水準ではありません。特に日本を含む東アジアでは40代に罹患のピークがあります。そのため、40歳以上の方はマンモグラフィ検診を定期的に受けることが大切です。
また、検診だけでなく「ブレスト・アウェアネス」の考え方も重要です。乳房の左右差や形の変化、しこり、乳頭分泌などの変化に気づくためにも、普段から自分の乳房の状態を知っておくことが必要です。

乳がん治療は必ずしも「まず手術」というわけではありません。がんの進行度やサブタイプに応じて、手術・薬物療法・放射線療法を組み合わせて治療を行います。ホルモン受容体やHER2の有無によって治療の選択も変わります。術前に薬物療法を行うことで、がんが大きく縮小し、場合によっては画像上見えなくなることもあります。

近年は分子標的薬や抗体薬物複合体など治療法も進歩しています。進行乳がんであっても長期にわたり病勢を抑えながら治療を続けられるケースも増えてきました。一方で、副作用への理解や対処、患者自身の価値観を踏まえた治療選択も大切です。

今後の乳がん診療では、AI診断やリキッドバイオプシー、遺伝子情報を活用した個別化医療なども進んでいくと考えられます。また、患者向け乳がん診療ガイドラインを活用し、正しい知識を得ることも重要です。

2年ごとのマンモグラフィ検診に加え、機会があれば超音波検査も受け、自分の正常な乳房の状態を知っておくことが大切です。早期の乳がんは9割以上が治るとされています。まずは正しい知識を持つことが、早期発見と適切な治療につながります。

ミニコンサート(LiLu氏)

自身の経験を重ねた歌声とメッセージで、検診の大切さと希望を届ける

続いて、乳がんサバイバーであり、シンガー・ライバー・ピンクリボンアドバイザーとして活動するLiLuさんによるミニコンサートが行われました。
LiLuさんは、「アンパンマンのマーチ」のバラード版と、自身が初めて作詞作曲したオリジナル曲「ソラの約束」を披露しました。自身の体験と重なる歌詞に支えられたことから、検診の呼びかけとともに歌を届けていると語り、会場に優しくも力強いメッセージを響かせました。

また、定期検診について「忙しい」「痛みが怖い」「予約が面倒」「まだ健康だから大丈夫」と先延ばしにする理由はいくらでもあるが、最も怖いのは発見が遅れることだと語り、「ご自身のため、大切な人のため、どうぞ定期検診を受けてください」と力強く訴えました。

パネルディスカッション(井本滋先生、桜井なおみ氏、LiLu氏)

治療法、妊孕性、医師とのコミュニケーションをテーマに、多角的な視点から議論

休憩後は、井本滋先生、桜井なおみさん、LiLuさんによるパネルディスカッションを実施。

テーマ1:治療法
井本先生からは、乳がん治療ではがんの性質や進行度に応じて、手術を先行する場合と薬物療法を先行する場合があることが改めて説明されました。
LiLuさんは、自身がステージ2A・ルミナルBと診断され、当初は部分切除の可能性も示されたものの、精密検査の結果、全摘手術と抗がん剤治療を受けることになった経緯を共有。
桜井さんも、希少なタイプの乳がんを経験した立場から、手術・抗がん剤・ホルモン療法を受けた経験を語りました。
副作用については、LiLuさんが支持療法の薬によって吐き気をかなり抑えられた一方、別の副作用や薬との相性があるため、我慢せず医師に相談することが重要だと述べました。
桜井さんは、抗がん剤治療後よりも、その後長期に続くホルモン療法の方が「じわじわと効いてくるようなしんどさがあった」と率直に語り、長期治療特有の負担にも言及しました。

テーマ2:妊孕性
妊孕性については、井本先生が、乳がん患者の中には妊娠・出産を考える年代の人も多く、診断時に子どもを望むかどうかを確認することの重要性を説明しました。治療前に卵子や受精卵、卵巣組織の保存を検討するケースもあるものの、実際の選択は患者ごとの価値観や状況に大きく左右されることが紹介されました。
LiLuさんは、当初は抗がん剤治療が妊娠に影響する可能性を知らず、治療前に初めて説明を受けたと振り返ったうえで、さまざまな事情を踏まえて妊孕性温存を選ばなかった自身の判断について語りました。
桜井さんもまた、治療前にパートナーと1週間かけて話し合い、自分たちで納得して決めた経験を語り、「周囲に合わせるのではなく、自分で決めることが大切」との考えを示しました。

テーマ3:医師とのコミュニケーション
医師との向き合い方についても、多くの示唆が共有されました。
LiLuさんは、最初の医療機関では質問しづらさを感じていた一方、転院先では医師が十分な説明のあとに「聞きたいことはありませんか」と声をかけてくれたことで、安心して疑問を相談できるようになったと振り返りました。また、患者向け乳がん診療ガイドラインを参考にしながら、聞きたいことを整理して受診していたことを語りました。
桜井さんは、受診前に疑問や不安を整理し、「心」「体」「社会」の3つに分けて考える方法を実践していたことを明かしました。そのうえで、診察では「今日は3つ質問があります」と最初に伝えることで、限られた時間でも必要な情報を得やすくなるという工夫を共有しました。
井本先生からは、医師と患者の相性も含めたコミュニケーションの重要性について説明がありました。セカンドオピニオンについても、目的を明確にしたうえで活用することが望ましいとされ、大規模病院では一人の医師だけでなく院内で複数の専門家が治療方針を検討していることも紹介されました。

登壇者紹介

井本 滋 先生
(杏林大学医学部付属病院 乳腺外科 教授)

1985年慶應義塾大学医学部卒業。国立がんセンター東病院乳腺外科医長などを経て2007年より現職。2018年から日本乳癌学会理事長、2021年には学術総会会長を務める。がん集学的治療研究財団 理事。

桜井 なおみ 氏
(一般社団法人CSRプロジェクト 代表理事)

都市計画を学んだ後、コンサルティング会社勤務を経て、がん経験をきっかけに患者・家族の支援活動を開始。技術士、社会福祉士、精神保健福祉士、産業カウンセラー。

LiLu 氏
(シンガー・ライバー・ピンクリボンアドバイザー)

乳がん経験を経て歌手活動を本格化。ライブ配信やメディアを通じて「定期健診の大切さ」を広めている。自作曲「ソラの約束」はCMにも起用。

アーカイブ動画もYouTubeにて公開中

当日の講演、ミニコンサート、パネルディスカッションの模様は、以下よりご視聴いただけます。
アーカイブ動画:https://youtu.be/nwTDDI9_Mik

「公益財団法人がん集学的治療研究財団」について

公益財団法人がん集学的治療研究財団は、2つ以上の治療法を組み合わせて行う集学的治療の重要性に早くから着目し、50を超える臨床試験を実施して新たな知見を内外に発信してきました。また、これらの臨床試験データを統合したデータベースを用いて解析研究を行い、単独試験では得られない知見を論文化、公表しています。加えて、有望な若手研究者に対する研究資金助成事業、医療機器分野の優れた製品開発に対するバックアップ事業を行っている他、企業や一般の方々を対象とした講演、啓発イベントなどを主催し、医療界全体への貢献を使命として活動を行っています。

【財団概要】

組織名称:公益財団法人がん集学的治療研究財団

設立日:昭和55年6月23日(厚労省医政局所管の財団法人として設立)

所在地:〒136-0071 東京都江東区亀戸1-38-4 朝日生命江東ビル3階

財団HP:https://www.jfmc.or.jp/

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