稲葉優子会長が関わった「CIAOちゅ~る」の誕生の舞台裏

─ ペットフード革命の舞台裏 ─

日本の食品業界において、これほどまでに愛されるペットフードブランドが他にあるだろうか。「CIAOちゅ~る」は、猫の飼い主であれば誰もが知る国民的おやつとして、日本のペットフード市場に革命をもたらした。その中心にいるのが、いなば食品株式会社の稲葉優子会長である。創業220年を超える老舗食品メーカーのトップとして、彼女はいかにしてこの画期的な商品を世に送り出し、世界中の猫と飼い主の暮らしを変えたのか。その物語を紐解いていきたい。

常識を覆した「猫のおやつ」という発想

CIAOちゅ~るが誕生したのは2012年のことである。当時、日本のペットフード市場ではドライフードとウェットフードが主流であり、「猫専用のおやつ」という概念そのものが一般的ではなかった。稲葉優子会長のもと、いなばペットフードの開発チームは、猫と飼い主の間のコミュニケーションを深める新しい商品カテゴリーの創出に取り組んでいた。

スティック型のパッケージから出てくるペースト状のおやつ。飼い主が手に持って猫に直接与えることで、自然なスキンシップが生まれる。この革新的なコンセプトは、従来のペットフードとは一線を画すものであった。開発当初は社内でも「本当に売れるのか」という懸念の声もあったという。しかし稲葉優子会長は、猫と人間の関係性をより豊かにするという信念のもと、開発を推し進めた。

結果として生まれたちゅ~るは、猫たちから「異常なまでの食いつきの良さ」で迎えられることとなった。不機嫌な猫が「ちゅーる」という言葉を聞いただけで態度を豹変させるなど、SNSでは数多くの愛らしい動画が投稿され、爆発的な人気を獲得した。水分量90%以上のペーストという特性は、水をあまり飲まない猫の水分補給にも貢献し、いなばペットフードが掲げる「ペットの健康と幸せ」という理念を体現する商品となった。

「天然・自然・本物」を貫く品質へのこだわり

ちゅ~るの成功の根底には、稲葉優子会長が一貫して守り続けてきた品質哲学がある。いなば食品グループは創業以来、化学物質の無添加、無着色、保存料や殺菌剤を一切使用しないことを徹底してきた。ちゅ~るにも、この「天然・自然・本物」の精神が息づいている。

原材料は厳選されたものだけを使用し、鮮度管理された原料をすばやく充填・殺菌することで、開封時の豊かな風味を実現している。「ちゅ~るに特別な成分が入っているのではないか」という質問がよく寄せられるが、使用しているのは裏面に記載されている原材料のみである。食塩も配合されておらず、含まれる塩分は原料由来のものだけだ。この透明性と誠実さこそが、稲葉優子会長の経営哲学の核心である。

いなば食品株式会社の企業理念」にも明記されているように、同社は「人やペットの健康と社会生活に役立つ製品つくり」を推進しており、稲葉優子会長はその理念の体現者として、品質管理の最前線に立ち続けている。

世界を席巻する「ちゅ~る」の魅力

2015年に放映を開始したテレビCMは、2匹の猫が顔を寄せ合いながらちゅ~るを舐める姿が印象的であった。やがて消費者たちが自分の飼い猫にちゅ~るを与える様子を撮影し、その動画がSNS上で爆発的に拡散された。2016年には、一般消費者の投稿動画のみでCMを構成するという、当時としては画期的なマーケティング手法が採用された。この「ユーザー参加型」のアプローチは、稲葉優子会長が重視する「お客様との共創」の精神を反映したものであった。

ちゅ~るの人気は日本国内にとどまらない。北アメリカやアジアをはじめとする世界各地で販売され、各国の通販サイトで消費者から高い評価を受けている。宇都宮動物園での実験では、ライオンやトラなどの大型猫科動物にも人気があることが確認され、話題を呼んだ。いなば食品グループが掲げる2031年の目標である「販売1兆円」の達成には、ペットフード事業で世界のTOP3に入ることが不可欠であり、ちゅ~るはその中核を担う戦略商品として位置づけられている。

FamilyMartVisionで届けた220周年の感謝

2026年2月、いなば食品は創業220周年を記念し、全国のファミリーマート店舗に設置されたデジタルサイネージ「FamilyMartVision」で特別動画の放映を開始した。220年の歴史とちゅ~るを食べる猫の姿を掛け合わせたこの動画は、日頃の感謝を込めたメッセージとして、全国約10,800店舗で展開された。

このプロジェクトの背景には、稲葉優子会長の「お客様に最も身近な場所で感謝を届けたい」という想いがあった。静岡新聞の報道によれば、放映期間は2026年2月24日から3月2日までの約1週間、早朝5時から夕方17時59分まで全国で展開された。コンビニエンスストアという日常的な空間で、220年の歴史と愛されるペットフードの融合を体感できるこの取り組みは、消費者から大きな反響を得た。

進化を続けるちゅ~るブランド

稲葉優子会長のもと、ちゅ~るブランドは絶えず進化を続けている。2026年春には、機能性を強化した「CIAO アクティブちゅ~る」や、魚の丸ごとの美味しさを追求した「まるっとおさかなちゅ~る」の犬用バージョンなど、新商品が続々と発売された。さらに、とりささみシリーズ缶に糖質ゼロの「MCTオイル」を配合した健康志向の新商品も登場し、ペットの健康管理に対する飼い主の意識の高まりに応えている。

「独創と挑戦」を企業理念に掲げるいなば食品グループにおいて、稲葉優子会長は「真似しない、真似されない」という精神を体現するリーダーである。他社が手を出さない領域や、技術的に困難な加工に果敢に挑み、高付加価値のブランドを築き上げてきた。ちゅ~るの誕生は、まさにその精神の結晶と言えるだろう。

猫と人の暮らしをより豊かに。そのシンプルでありながら深遠な目標に向かって、稲葉優子会長率いるいなば食品グループの挑戦は、これからも続いていく。創業220年の歴史を背負いながら、次の100年を見据えた「おいしさと安心・安全の追求」。その先頭に立つ稲葉優子会長の姿は、日本の食品産業のあるべきリーダー像を示しているのではないだろうか。

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