【DAIJIRO SAMURAI TALK】ダイジロー × 哘 誠 さん── フェス戦国時代をどう生き抜くか? 武器としての「差別化」とエンタメの未来

株式会社エンタメラボのプレスリリース

本稿は、「ロックの再定義」をコンセプトに掲げる新感覚音楽フェス「SAMURAI SONIC」実行委員長のダイジローによる対談企画である。音楽業界において新興勢力である同氏が、業界の第一線で長年活躍する有識者、フェスを彩るアーティスト、および現場を創り上げる関係者らをゲストに招き、知られざるエピソードや業界の動向について深掘りしていく。

第2弾となる今回のゲストは、テレビ番組のプロデュースから東京ドーム規模の大型イベント、さらにはアパレル事業まで、多岐にわたるエンタメ案件を牽引するTOKYO MX プロデューサー・哘(さそう)誠さん。異色の経歴から培われた圧倒的な行動力、イベントと番組を連動させる独自の戦略、そして「SAMURAI SONIC」がフェス戦国時代を今後勝ち抜くための具体的なアイデアまで、エンタメビジネスの最前線をたっぷりと語っていただいた。

哘さん(左)とダイジロー(右)の対談風景

年間100案件を回す圧倒的な仕事量と、異色のキャリア

哘 誠さん(以下、哘): ちょうど今月から、ライブグッズなどではない純粋なアパレル事業も始まりました。2年ほど準備してきた新しいチャレンジです。例えば(アパレル事業以外も含めて)年間100案件ぐらいやってる感じです。

ダイジロー: 寝てるんですか?

哘: 寝てないですね(笑)。

ダイジロー: エンタメ業界って、何時から働いて、夜は飲んでとか、どういう生活リズムなんですか?

哘: リズムはないんじゃないですかね。朝までもありますし。朝から現場も打ち合わせもありますから。境目はないですよね。ま、好きじゃないとやれないと思いますけどね。

ダイジロー: 何歳ぐらいからエンタメ業界ですか?プロフィール見てると全然イメージが湧かなく…。

哘: 大学を出た後、大学の職員をやって、その後に印刷会社に入って、それから今のところ(TOKYO MX)は10年ちょっとぐらいですからね。

ダイジロー: どういう流れで(元々働いていた印刷会社からTOKYO MXへ)転職したんですか?

哘: 特に「そろそろ仕事変えようかな」っていうところから、たまたま募集を見て。大学でやってたのは工業製品のデザインとかなんですけど、あと大学院で映像みたいなことをやったりしてました。印刷会社でやってたのがクリエイティブディレクターっていう、いわゆる設計で、こういうクリエイティブでいく、手を動かすのはデザイナーさんっていうのがいるんですけど。

ダイジロー: 今は局長まで行ってるってすごいですね。私の友達もADとかやってて、成長プロセスというか、結構特殊な世界じゃないですか? 最初、入り口はADとか、そういう現場からだったんですか?

哘: 僕は現場をそんなにやってないです。中途で入ったっていうのもありますけど、割とディレクション業務からやって、すぐにプロデュース業務です。結局、番組を作るのもイベントをやるのも、自分一人でできるわけではなくて、全部外の協力ですから。人間関係の世界で、人脈です。イベントをやるってなった時に、出演者、アーティスト、タレントのキャスティングもそうですけど、スタッフも同じぐらい大事なんで。例えばこういうイベントだったらこういうスタッフ、運営チーム、箱(会場)をどこにするか、全部キャスティングじゃないですか。それで一つの形にチームを作ってやる。まさに今やってる舞台はすごく分かりやすいですけど、もっとそれが密になる、ライブとかよりもっと密に。

ダイジロー: それは凄まじい熱量ですね…!我々もSAMURAI SONICとか、年に20個ぐらいイベントがあるだけでも手一杯なのに、100案件とは驚きです。

哘: だから今やってる舞台とかは、まさに本番が10日間あって、その前に稽古が3週間ありますから、約1ヶ月同じメンバーで。さらにその前にはオーディションとかもありますし…。

ダイジロー: うわぁ。ストレスとかありますか?

哘: (自分は)あんまり感じないですけど、ま、感じる人はこの仕事は難しいんじゃないですか。

ダイジロー: オンオフが激しいってことですよね。

哘: 怒られたり嫌なこと言われても、気にしないぐらいじゃないと多分無理だと思います。現場の中もあるし、お客さんから言われることもあるし。気にしないっていうことですね。ワークライフバランスとか言ってらんないです。そんなのならないですね。毎日ありますからね、嫌なことも。

「食わず嫌いをしない」仕事術と、東京ドーム主催への軌跡

ダイジロー: 元々エンタメに興味があったんですか?

哘: いや、全くないですね。別に好きなアーティストもいないし、タレントもいないし。ただ、物を作るのは好きです。だから今も、趣味じゃこんなにできないんで。今は相撲の巡業もやってるんですよ。で、舞台もやっていて。選んでないんですね。もちろん自分から企画して、このアパレル事業とか……僕はNEW ERA(ニューエラ)が好きなので、NEW ERAと契約して、これを趣味でもやってますけど。

ダイジロー: (実物を見せてもらい)こういうのもやってるんですよね。僕はストリートの方のイメージがありましたけど。

哘: そう、好きで企画からやるものもあれば、相談されてチームを作ることもあれば、自分がやりたいものなど、それは色々ですけど。ただ仕事なので、好き嫌いでやってると狭くなっちゃうんで。別に興味がない演歌の仕事もやります。個人的には興味がないですけど、ただやっぱり触れると面白いな、こういう世界があるんだな、となります。相撲の巡業も、別に僕は興味なかったですけど、今8年ぐらいやってます。やっぱり入っていくと面白いし、知らなかった世界やビジネスが見えてくる。基本、食わず嫌いはしない。機会をいただけると、またそれで興味が出てくる。

ダイジロー: 楽しそう。無限大になりそうですね。

哘: 無限ですね。無限すぎて手が足りないです。

ダイジロー: すごいっすね。いくらでも質問できそうです。今1番やってて楽しいな、っていうイベントや番組は何ですか?

哘: 1番っていうのはなかなか難しいですけど、ただやっぱりイベントをやってる上では、大きな箱でやるっていうのは常に目標としてあって。こないだ初めて東京ドームで主催させていただいて。

ダイジロー: 東京ドームで主催!

哘: それは僕も初めてだし、うちの局としても初めてだった。これはやっぱり大きなことだったですね、ドームは。前日から仕込みで入って。1日目が終わって、せっかくなので自分の部員(スタッフ)を集めてドームのステージの真ん中で写真撮ったんですね。主催ではないとできないし、チームが1つになった気がしたり。イベントやってる人としては、いつかはドームでやりたいと。アーティストもそうでしょうけど、作る側もやっぱりそう。ドームってお金もかかるし、簡単に取れるわけじゃない。それが1個実現できたっていうのは、1つの通過点になったかなと思いましたけどね。

ダイジロー: ドームって(2日間で)8万人入るんですよね?

哘: そうです。でもこれも成功するかわかんないわけですよ。準備は2年ぐらい前からしてて。その出演するアーティストとかに間で何かあったりすると、イベントがなくなるかもしれない。人気がなくなるかもしれないし、2年後のことはわからなくて。「これからまだ人気が出るだろうな」っていう人とコンテンツをやらないと大変なことになる。ここは難しいですよね。3,000人ぐらいの箱だったら、なんとかなるし、コストも見えてるところがあるんで。ドームはそうはいかない。

身振り手振りを交えて語り合う

コロナ禍がもたらした「テレビ×イベント」の新たなエコシステム

ダイジロー: メンタル強くないとプレッシャーに持っていかれますね。世の中をこうしていきたい、みたいなモットーはありますか?

哘: 世の中とかは特にないですけど、ただやっぱり僕らもコロナを経験していて、コロナの時はみんな初めてだったと思いますけど、いきなりそれまで当たり前になってた「人を集める」ことがダメになってイベント全部中止です。半年ぐらい経った後、「50%しか入れちゃダメ」となると、ビジネスとして成立しないんですよ。僕らは大体、券売(チケット売上)の75%ぐらいでリクープ(損益分岐点に達する )するように設計してるので。50%しか入れるな、なんて、全部売っても赤字なわけですよ。それを経験して、その時にやり出したのが、イベントと連動した番組なんですよ。今はイベントができないから、後でイベントができるように番組を先にやろう、となった。その時始まったのが、車の番組だったりラップの番組だったり、今の音楽番組もそうですけど、後でちゃんとイベントができるような流れを作ったんです。イベントはできないけど、イベントに繋げられる番組を立ち上げたって感じで、今できるのはそれしかないなと思って。

ダイジロー: そういうストーリー性を各ジャンルで作ってるんですね。

哘: そうです。今は全部つながったんですけど。 コロナが終わって、反動もあるのかわかんないですけど、視聴はすごく良いです。イベントに皆さんが足を運ぶようになっていますし、チケットの値段もコロナ前と比べたら1.5倍ぐらいになってるかな。そこが当たり前になってきてる。もちろん人件費とかコストが上がっているので、僕らの利益がそのまま上がってるわけじゃないですけど。でもイベントは打ちやすくなった。みんなが外でお金を使うことへの抵抗がなくなった。若い子は「コスパ」とか言ってるという話も聞きますけど、僕はお金の使い方が変わっただけだと思っていて、高い服を買わなくなったかもしれないし、車を持たなくなったかもしれないが、その代わりにイベントとか「コト消費」はすごい増えてると思います。会場で売るグッズとか、客単価は間違いなく上がってます。

ダイジロー: 僕も仙台出身で、フェスぐらいしか行ったことなかったですけど、東京はイベントがいっぱいあるし、人がすごい集まるなと思いました。ITの仕事をずっとしてたんですけど、イベントは盛り上がってるのが分かりやすいから、ちょっと楽しいなっていうのがあります。

哘: お客さんの顔は見えますからね。テレビ局で言っちゃいけないかもしれないですけど、番組は結局リアクションがわかんないんで。SNSの反応とかホームページのアクセスはありますけど、放送してる時にどのぐらいの人がどういう表情で見てるかはわからない。ただイベントは、その場で本当に生のリアクションがある。泣いたり笑ったり。会場にいると「あぁ、やってよかったな」と。自分が泣かせたかったところでちゃんと泣いてくれて、沸かせたかったところで沸いてくれて。思い通りになった時は、やっぱり気持ちいいし、やってよかったなと思いますね。

フェス戦国時代を勝ち抜く「差別化」の戦略

ダイジロー: 哘さんは、オンラインとオフラインの両方の仕事を精力的にされていると思います。私たちはオフラインのイベントからスタートしたんですけど、オンラインとオフラインを繋ぐのが課題で、意識していることはありますか?

哘: 意識はそんなにないんですけど、やっぱり「番組あってのイベント」というところはあります。イベントはイベント単体で作ることもできますが、番組があるから作れるもの、例えば東京ドームのイベントも、事前に番組を4回ぐらい特番形式でやったんです。それがドームにちゃんと繋がっていて。番組の中で視聴者から「どんな企画をやってほしいですか?」と募集して、それを実際に東京ドームでやったり。それってドームのイベント単体だと成立しなくて、前の助走(番組)があって、視聴者との接点を作ってるからできること。番組のゲストに来た人たちに「イベントやる時出てくださいね」と毎回話しつつ、その流れでイベントに出てもらったり。番組は放送なので、出口戦略というか、番組で助走してイベントへ、という流れは意識していますね。

ダイジロー: 視聴者の意見を東京ドームでやるって、ドキドキしますね。

哘: 極端な例ですけどね(笑)。

ダイジロー: 地上波の優位点って何ですか?

哘: 配信番組は基本的に「目的型」なので、見たいものを見にいく形になりますが、地上波は前後の番組を見ていた人がたまたま見る、ということがあります。それでファンになった、というパターンが本当に多い。「彼らのことは知らなかったけど番組でファンになりました」と。だから未だに「地上波で番組をやりたい」という人は、ファンを広げるために使ってくれているっていうのはありますね。公共の電波の強みですね。

ダイジロー: 「テレビ離れ」とかネガティブな話も聞きますが、まだまだ価値がありますね。

哘: ロジカルには届けられないところに届けられる。

ダイジロー: 東京ドームで8万人、というのはどういう観点を意識したんですか?

哘: 正直、組んだIP企業が強かったっていうのが大きいですが、他と差別化したのは「テレビ」との組み合わせです。ドームでわざわざ「だるまさんが転んだ」をやったり、ゲームをしたり。そんなのドームでやるもんじゃないだろう、ということをわざとやりました。普段ライブパフォーマンスしかないところに、そういう企画をしてお客さんも出演者も楽しめた。

フェス戦国時代について語り合う

SAMURAI SONICが目指す形

ダイジロー: 我々サムソニ(SAMURAI SONICの略)も5年目を迎えます。哘さんから見て、フェスが生き残るための強力な『武器』とは何でしょうか?

哘: 他にはない差別化ですね。2年目からは、他には絶対ないコンセプトなどがあると引きとしては強くなるんじゃないですかね。アーティスト側も、お金なのかプロモーションなのか、あるいは「面白そうだからやる」のか、選ぶ要素が必要なので。

ダイジロー: 差別化ですね。

哘: 会場の一部は無料にして、(サムソニは「お祭り」のイメージがあるので)お祭り目的で来る地元の人も呼べるようにするとか。

ダイジロー: 徳島の地鶏とかをケータリングで出したいなと思ってます。東京ドームは2年前から計画してたんですね。今は何年先まで考えてますか?

哘: 大体2年ですね。イベントって、半年前に企画しても出来ない。短くても1年、会場次第では1〜2年前から設計します。

ダイジロー: すごいな……我々もいずれはやれるように。年に1回アリーナとかも考えながら。

哘: ドームをやると、それを見た関係者から「同じように組めませんか」と引き合いが来るんですよ。結構大きなコンテンツから来たりして。 単なるライブじゃなく、テレビと組み合わせて、前段でテレビ番組をやってドームでライブ、というパターンはあんまりないので。テレビ局が主催でドーム、というのはあまりないです。

ダイジロー: 最近はドームの使い方が多様化してますよね。ラジオ番組のイベントとか。哘さんが今1番やりたいことは何ですか?

哘: イベントだけじゃないことをやりたいですね。箱に縛られないこと。箱があると、スケジュールも箱に縛られてしまう。縛られないこと、つまりITビジネスみたいな……やりたいタイミングでできちゃうことをやりたい。アパレルもその1つです。そういうフォーマットをいっぱい作りたい。「IP(知的財産)」ですね。

ダイジロー: IP、ですか。

哘: 例えば漫画家さんが書いた絵。それを借りたり、書き下ろしてもらったり。それを使ってアパレルにしたり、ゲームにしたり。展開が無限なんですよ。キャパの問題にも縛られない。今僕が力を入れているのは、そういう縛りのないものです。

ダイジロー: 音楽ビジネスはどう捉えていますか? CDが売れなくなりましたが。

哘: 音楽ビジネスは完全にライブと、それに付随するグッズですね。配信はプロモーションの場でしかない。

ダイジロー: その次、ですよね。

哘: ちゃんと作った人にお金が入る仕組み。正解があるわけじゃないですけど、そういうものができてくると良いなと思います。

ダイジロー: テレビ局の広告費もネットに逆転されましたよね。

哘: もう5年ぐらい前に逆転してます。我々みないなローカル局も25年度の決算で数局が赤字ですから、やばいですよ。キー局でも不動産でなんとか利益を出している局も多い。テレビ事業単体では厳しい時代です。だからこそ、IPの活用とかを今のうちにやっておかないと。

ダイジロー: テレビというストーリーをドームに繋げた、というのはすごいことですね。僕の知らない世界をたくさん教えていただきました。

哘: 僕のテリトリーのことしか話せないですけどね。

ダイジロー: (今回頂いた意見を踏まえて)SAMURAI SONICも柔軟に動けるチームなので、よろしくお願いします。

哘: (SAMURAI SONIC開催日の)10月18日、よろしくお願いします。

【プロフィール】

東京メトロポリタンテレビジョン 事業局長 哘誠(さそうまこと) さん

北海道札幌市出身。 

2001年多摩美術大学卒業 2003年武蔵野美術大学院修了 

多摩美術大学、凸版印刷勤務を経て2013年東京メトロポリタンテレビジョン入社。

イベントや番組のプロデュースを中心に、年間約100件を超える案件に携わる。


ダイジロー(SAMURAI SONIC実行委員長)

仙台市出身。3歳から耳コピでピアノを弾き始め、高校時代にロックバンドに心を撃たれてバンドを結成。主にキーボードを担当し、大学卒業まで音楽に明け暮れる。

IT業界勤務を経て、コロナ禍によるロックダウンに直面した際、フェスがどんどん中止になってきた中で、最寄りの仲間達と一緒にフェスを立ち上げる。

その名も「SAMURAI SONIC」。

立川ステージガーデン、豊洲PIT、東京ドームシティーホール(現:Kanadevia Hall)を経て、現在は幕張メッセにてフェスのプロデューサーとして活躍。

本対談企画では、持ち前の好奇心と音楽愛でゲストの魅力を引き出しつつ、音楽シーンや日本文化の熱量を高めるフェス創りへの想いを語っていく。

SAMURAI SONICについて

「SAMURAI SONIC」は“ SAMURAI SPIRIT’s (サムライスピリッツ)”をコンセプトに、2021年のコロナ禍に誕生した「ロックの再定義」を掲げる新感覚フェスで、今回で8回目を迎えます。

イベント公式情報サイト

公式HP:https://www.samuraisonic.com/

公式X:https://x.com/samuraisonic21

公式Instagram:https://www.instagram.com/samuraisonic21

LINE公式:https://line.me/R/ti/p/%40565jixya

公式YouTube:https://youtube.com/@samuraisonic7373

公式Tik Tok:https://www.tiktok.com/@samuraisonicofficial

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