株式会社WOWOWのプレスリリース
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昨年、CDデビュー20周年を迎えたフジコ・ヘミング(年齢非公表)※以下、フジコ。壮絶な人生経験を経て、60代に花開いた遅咲きの天才ピアニストである。2018年には彼女に密着したドキュメンタリー映画「フジコ・ヘミングの時間」が公開されるや、連日立ち見が続くほどのロングランヒットを記録した。現在でもカナダや台湾、中国など海外でも公開され人気を博しているという。世界的ピアニストでありながら、永遠の少女でもあるフジコの魅力は、今や幅広い世代のファンを魅了し続けている。
いまなお精力的に演奏活動を行うフジコが、8月、東京・阿佐ヶ谷教会で無観客のコンサートを行った。レアな選曲も多い一方で、演奏されたのはショパンやモーツァルト、リストといった定番人気の曲目もふんだん。普段あまりクラシックに触れる機会がない人も十分に楽しめる内容だ。奇をてらわぬ選曲には、「音楽はもっと自由であるべき」というフジコの意思が反映されている。演奏後、フジコと番組のナビゲーターを務めたシンガーソングライター・陣内大蔵へのインタビューで、フジコは今回の選曲についてのこだわりをこう語っている。
「今回は、素敵な曲ばかりを選んで演奏しました。演奏家の中には、わざとあまり知られていない曲を選んで弾く人もいますが、私は子供のころに、そういう曲をさんざん弾かされて嫌になりましたから(笑)、自分の演奏会では名曲ばかりを演奏します。陣内さんが演奏した「Amazing Grace」も、世界で最も知られた美しい讃美歌。ですが、誰が作曲をしたのか分かりません。音楽とは、そういうものです。放送を見て、聴いてくださる方も、自由に楽しんでいただけたら」
フジコの思いが詰まった本番組は、彼女の通常コンサートに倣って1部と2部で編成されている。
真夏の陽射しの余韻が窓から差し込む第1部は、ピアノの詩人と称されるショパンの名曲「別れの曲」からスタート。温かくそっと寄り添うような調べに、張り詰めていた心の緊張がふっと緩むのを感じるだろう。ピアノ教師であった母が、フジコの少女時代、寝る前によく弾いてくれたという細やかなタッチが美しい「ノクターン 第2番」では、心が清められるような心地がするだろう。
暴風雨や騒動を意味する「テンペスト」は、性急さや緊張感漂う楽曲で、今の不安な時代にある意味で非常に寄り添う選曲だ。序盤の緊張感あふれる旋律の繰り返しから、徐々に感情が高まっていくような劇的な展開にただただ圧倒。遅咲きのシンデレラに潜む勇ましさを感じる事になるだろう。
映画「フジコ・ヘミングの時間」のエンディングでも奏でられた、彼女の代表曲の1つ、ドビュッシー「月の光」の厳かで凛とした調べは、きっと耳に心地よく響くことだろう。蒼ざめた光にも似た音色のせいか、一筋の月の光がフジコを照らし出しているかのように聴こえるかもしれない。優しく奥ゆかしいピアノの演奏と教会の清廉とした佇まいとが相まった映像に導かれ、見えない重圧にいつしかこわばった魂がゆっくりと解放される感覚を味わえるだろう。
1部の最後を飾ったのは、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」というレアな選曲。丁寧な鍵盤のタッチ1つ1つが、祈りの言葉を思わせる神聖さに満ちていた。指先から紡ぎだされる鎮魂の祈りに、”魂のピアニスト”と呼ばれるフジコの神髄を垣間見た思いがした。
無観客での教会ソロ演奏について伺った際、フジコは自らの言葉でこう述べている。
「今回の無観客ライブを提案されたとき、春からのコンサーツアーが中止となっていたので素直にうれしいと思いました。チケットを買って楽しみに待っていてくれたファンの方々に、テレビを通して私の元気な姿と演奏を届けられるのですから。無観客は、特に気になりませんでした。だって、私は毎日自宅では無観客でピアノを弾いていますから。まあ、猫が聴いてくれていますが(笑)、なぜか猫たちは今回演奏した「トルコマーチ」を弾くと逃げ出してしまいます。かと思えば、以前にはそれを聴くためにわざわざドイツまで来てくださった人もいましたね。人も動物も、それぞれということです(笑)。
教会での演奏は、音響の良さを感じます。これまでにロンドンやパリの教会で何度も演奏して、そう感じていました。それに、やはりホールと違ってどこか厳かな雰囲気があり、特別な場所だなと思いますね」
また、今回、牧師というキャリアを生かし、演出の小松莊一良(映画「フジコ・ヘミングの時間」監督)とともに会場の選出などに尽力した陣内も、フジコの魅力、そして番組へ寄せる想いを語ってくれた。
「フジコさんは、ご自身が歩んでこられた人生の全てが演奏に含まれていて、表現者としてすごくインスパイアされます。今回の演奏も拝見して、フジコさんは、客席にはいないけれど演奏を聴いている今生きている私たちにはもちろん、過去の命、そしてこれからの命に向かっても演奏しているのだなと感じました。そして、祈りの人でもあるのだなと。
教会は、産まれてこの世を去るときまで、命に係わる場所です。コロナでたくさんの方が傷ついているいま、祈りの場所である教会でコンサートが実現できたことは意義深いと思います。すばらしい演奏で、傷ついた心を解放し、ときに涙を流しながら心をやわらげていただけるのではないかと思います」
番組では、フジコの大好きな「Amazing Grace」を初め、陣内が歌声を3曲披露している。陣内の温かな歌声は、コロナ禍で蓄積された心の痛みを包み込み、そっと癒してくれる優しい処方箋のようだ。また、昨年、満を持してソロデビューを果たした元キャンディーズの伊藤 蘭へ楽曲提供した「マグノリアの花」を、今回の番組のためにセルフカバーとして初披露している。
第2部は、仄かな暗がりのなかキャンドルが揺らめくという幻想的な光景が、さらに祈りを連想させるかもしれない。(今回の教会でのライティングは、吉川晃司や米米CLUBのコンサート・ライティングを手がける重鎮・清水淳が担当し、サウンドエンジニアには同じく吉川晃司や佐野元春を手がける坂元達也が参加している。)
重厚な調べが印象的な「ハンガリー狂詩曲 No.2」で幕を開ける第2部。続く、弾むような演奏に心が軽やかになる「春の宵」とあわせて、ピアニスト泣かせの難曲が多いことで知られるリストの楽曲で、フジコのファンにとって垂涎もののレアな選曲でもある。彼女の妙技にどっぷりと浸りたいものだ。
モーツァルト「ピアノソナタ 11番」の「第1楽章 アンダンテ・グラツィオーソ」「第2楽章 メヌエット」「第3楽章 トルコマーチ」は、童心に還って音楽の楽しさを謳歌できるひとときになるだろう。フジコと猫たちのエピソードを思い浮かべると、さらに「トルコマーチ」が親しみやすく感じられ、思わず笑顔になってしまうだろう。
フジコの代表曲として名高い、リスト「ラ・カンパネラ」は、2部のクライマックスと言えるだろう。丁寧できめ細やかなタッチを披露したかと思えば、ダイナミックでドラマチックな演奏で心にぐっと訴えかけてくる。波打つように全身を駆使し、あたかもピアノの一部…、音楽の一部と化して、教会の空間と響き合っているかのような姿は神々しくすら見えた。深い悲しみや愛、祈りなどが高い純度を保ちながら織り込まれた調べに、心が洗われ、重荷から解き放たれることだろう。
ラストの「トロイメライ」を演奏する前、「大変な時代。気を落とさないで」と短いメッセージを贈ったフジコ。その柔らかく、ふわりと包み込むような音色は、まるで安眠へと誘っているかのようだ。言葉数は少ないが、演奏から彼女の優しさと祈りの深さが十二分に伝わってくるはずだ。
「私は機械じゃないから、演奏は毎回変化するんです。誰が弾いても同じなら、私が弾く意味なんかないですよね。その曲をどういう音で、私らしく表現するかが大切なんです」と話すフジコの言葉に、彼女のアーティスティックなオリジナリティーが伺える。歴史の彼方の、偉大なる作曲家たちに、まるで恋をするように演奏するフジコの音色。そして、師であるレオニード・クロイツァーから教授された1920年代のスタイルを継承するアンティークな奏法。この独特のブレンドが、現在でも年間約60本のワールドツアーを続ける孤高のピアニスト フジコ・ヘミングの人気の一つかも知れない。
教会というどこか非日常的で厳かな空間において、フジコが奏でる慈しみに満ちた演奏が響き渡る。まさにそれこそが奇跡…、そんなふうに感じられるスペシャルプログラムだ。深い癒しの音色にしばし耳を傾け、心を癒し、潤してみてはいかがだろうか。
【番組情報】
“魂のピアニスト”フジコ・ヘミング特集
フジコ・ヘミング ソロコンサート ~いと小さきいのちのために~ WOWOW Special Version
9月27日(日)午後2:30 WOWOWライブ
映画『フジコ・ヘミングの時間』
9月27日(日)午後3:30 WOWOWライブ
フジコ・ヘミング 教会ソロ演奏 2020 ~くすしき調べ、とこしえなる響き~
9月27日(日)午後5:30 WOWOWライブ
【番組サイト】
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