文化庁のプレスリリース
2021/2022シーズン演劇公演『イロアセル』(作・演出:倉持 裕)の全キャストをオーディションにて募集します!小川絵梨子芸術監督が、就任とともに打ち出した支柱の一つ、「演劇システムの実験と開拓」として、出演者すべてをオーディションで決定する公演の第4弾です。今回は2011年に新国立劇場に書き下ろされた『イロアセル』を、その作者でもある倉持裕が自ら演出いたします。フルオーディション企画が始まって以来、初の現代劇です。2020年10月から12月にかけてオーディションを開催、合格者には21年11月の公演にご出演いただきます。
<演劇『イロアセル』公演概要> 会場:新国立劇場 小劇場 公演日程:2021年11月 作・演出:倉持 裕 芸術監督:小川絵梨子 主催:新国立劇場 オーディション詳細:https://www.nntt.jac.go.jp/play/news/detail/13_018645.html 一般発売日:未定 / 料金:未定 チケットに関するお問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00) |
オーディション企画第4弾の開始にあたって、芸術監督の小川絵梨子、演出家の倉持 裕より応募してくださる皆様に向けたコメントが到着しました。
<演劇芸術監督・小川絵梨子より>
フルオーディションの第4弾となる今回は、初めて現代の作品となります。演出家として、そして劇作家として、倉持裕さんにご登場いただけることになりました。
この『イロアセル』という作品は、以前に倉持さんが新国立劇場に書き下ろして下さった戯曲ですが、今こそ語られるべき物語でもあると思います。新型コロナウイルス感染症拡大という未曾有の事態が起こり、不安の続く日々の中で、人とのコミュニケーションのありがたさや大切さを改めて感じると同時に、その難しさも感じています。危機的な状況下では、誹謗中傷や暴言やどこかから借りて来ただけの正論など、人に対して不安や不快さを更に煽るような言葉が多く飛び交います。何かを伝えたり議論していくために意見を述べることと、相手のことを何も考えないまま自分の不満や苛立ちを主張することは全く違うものです。
ネット社会化やコロナ禍において、対面をせずに言葉だけに頼るコミュニケーションが増えている今こそ、私たちの日常における言葉や発言のあり方を、もう一度見つめ直したいと考えています。その思いから、この度、『イロアセル』という作品を選ばせていただきました。初演時は鵜山仁さんが演出を担って下さいました本作を、今回は倉持さんご自身が演出して下さいます。
どなたでも、この作品に出たいと思って下さった方は、是非ご応募下さい。作品に出たいと思って下さった方の中からの、役に合ったキャスティングと、何にも縛られず公平でのびのびとした稽古場からこそ、観客を魅了する作品が生まれると信じています。
何卒よろしくお願い申し上げます。
<演出家・倉持 裕より>
フルオーディションは長年の夢だったので、新国立劇場がそれに挑んだ第1弾『かもめ』は真っ先に観に行きました。すべての役にぴったり合った俳優が配されている、期待通りのまっとうな舞台でした。
相変わらずテレビも映画も演劇も、商業的であればあるほど、集客力のある俳優を一人でも多く確保しようと躍起になっています。もちろん利益第一に考えれば、それも間違ったやり方ではないでしょう。
しかし、何事も偏ってはいけません。人気優先で、役に合うかどうかは二の次のキャスティングばかりでいいわけがない。
まず役があり、その人物を演じるのに適した俳優を探す、あるいは俳優自身が演じたい役を見つけて来る、という内容優先の作品も、儲け主義の作品群に負けないぐらい存在しているべきです。そうでないと「“推し”が出てさえいれば中身はなんでもいい」というお客さん以外は誰も楽しめない作品だらけになってしまいます。
今回演出する『イロアセル』は、2011年に僕が新国立劇場に書き下ろした戯曲です。
とある島に暮らす住人達の声にはそれぞれ固有の色が付いていて、おかげで口を開けばすぐに発言者が特定されてしまう。ところがある日、住人達は声が無色透明になる場所を発見し……という、匿名性を手に入れたことによって豹変する人間達の物語です。
はじめはまさか自分の戯曲を演出しようとは思っていなかったので、小川絵梨子芸術監督始めプロデューサー達からこれを勧められた時は驚きました。しかし、ネットを中心とした匿名による集団リンチや同調圧力は十年前より激化しているし、このコロナ禍、現実世界でもそうした風潮が露呈しています。そんな今、この作品を再演する意味は大きいと思い、選びました。
応募する際は、登場人物の年齢設定に囚われ過ぎないようにお願いします。ご自分の年齢と開きがあっても「成立させられる」と踏んだら、迷わず希望して下さい。
あと、冒頭で商業的キャスティングについて書きましたが、別に僕はそれに対抗して、「有名人を使わずにいい芝居を作ってやる」なんて意気込んでいるわけではありません。あなたが有名であろうとなかろうと、この芝居に出演したいと思って下さったなら、また、演じてみたい役が見つかったなら、どうぞご応募下さい。お待ちしております。