すみだ北斎美術館のプレスリリース
すみだ北斎美術館 展覧会開催のお知らせ
すみだ北斎美術館では2021年10月12日(火)から12月5日(日)まで「学者の愛したコレクション ―ピーター・モースと楢﨑宗重―」展を開催します。
※「楢崎宗重」の名前について、機種依存文字に該当するため通常の「崎」で代用しておりますが、「立崎」が正式です。
当館では、北斎の研究者であり、世界有数の北斎作品コレクターであったピーター・モース氏と、葛飾派作品以外にも貴重で多種多様な資料を収集した浮世絵研究の第一人者・楢﨑宗重氏の二大コレクションを有しています。本展ではピーター・モースコレクションより江戸時代の風俗・流行が窺える作品、楢﨑宗重コレクションより江戸から昭和期にかけて特に人気や評価が高かったとされる絵師・画家の作品を厳選し、約140点を展観します。希少な北斎作品や、高名な絵師・画家たちによる貴重な作品の数々を展示し、両氏が生涯をかけて収集、研究した珠玉の名品に対するこだわりと研究業績を紹介します。
第1章 ピーター・モースコレクション
ピーター・モース(1935-93)は、北斎の「諸国瀧廻り」に関する論文を執筆、「百人一首乳母かゑとき」シリーズに関する単著『Hokusai: One Hundred Poets』を刊行し、また、北斎のカタログレゾネ(全作品目録)の作成を試みるなど、北斎の研究者であり、北斎作品の収集家でした。
北斎作品や研究資料など総数約600点に及ぶピーター・モースコレクションは、欧米における北斎の個人収集としては最高・最大の内容といわれており、研究者の眼で収集された希少価値の高い作品が多く含まれていることが特徴です。本章ではピーター・モースコレクションから95点の作品を展示します。
ピーター・モース氏が最も愛したシリーズ作品から
「新板浮絵三囲牛御前両社之図」
江戸の名所が描かれた本浮世絵版画シリーズは、赤いすやり霞が使われていることが特徴で、現在13図が確認されています。ピーター・モースコレクションでは12図が収集され、保存状態が極めて良く、ピーター・モース氏が最も大切にした作品群と伝わります。
「新板浮絵三囲牛御前両社之図」は、画面の左側に牛御前(現:牛嶋神社・墨田区向島)、右側に三囲稲荷(現:三囲神社・同)が配され、それぞれ参詣に向かう人々の賑わいが細かな風俗描写とともに表されています。
鮮明な空摺が白眉
ピーター・モースコレクションの「冨嶽三十六景 武州玉川」
「冨嶽三十六景 武州玉川」は、川面の波に凹凸だけで表す空摺(からずり)が使われた作品です。
空摺は後摺(あとずり)では省略されることの多い手の混んだ技法です。現存する同じ構図の作品は、版木の摩耗により空摺がはっきりとしないものや、波形を藍色の線で摺った後摺が多いことから、空摺が鮮明に見える本図は、初摺か初摺に極めて近い稀少性の高い逸品といえます。
ピーター・モース氏が単著にまとめたシリーズ作品
「百人一首乳母かゑとき」より「猿丸太夫」
「百人一首乳母かゑとき」(ひゃくにんいっしゅうばがえとき)は、北斎の大判錦絵(*1)のシリーズの中で最後に制作されたものにあたり、現在27図が確認されています。それまでの北斎の大判錦絵シリーズと比較すると、色数が多いことや細部にわたって凝らされた表現が特徴です。
本図は百人一首のうち猿丸太夫(さるまるだゆう)の「奥山に紅葉ふみわけ啼(な)く鹿の 声きく時ぞ秋はかなしき」の絵解きとして描かれています。画面全体では秋の夕暮れの風景が描かれ、手前を横切る女性が指さす先(左上の丘の上)に、鹿がシルエットで表現されています。ピーター・モース氏はこうした構図の工夫などから、著書『Hokusai: One Hundred Poets』で「この作品は多くの点から見てまったく完璧な絵である。」と評しています。
*1 大判錦絵|約39cm×26~27cmの錦絵(浮世絵の多色刷り木版画)のこと。大判は天明年間(1781-89)以降に標準サイズになった判型で、北斎の錦絵では「冨嶽三十六景」、「諸国瀧廻り」、「諸国名橋奇覧」や「百人一首乳母かゑとき」が大判錦絵で制作されました。
第2章 楢﨑宗重コレクション
楢﨑宗重( ならざきむねしげ・ 1904-2001)氏は、昭和から平成にかけて活動した美術史家です。戦前より浮世絵雑誌の発行に携わり、国際浮世絵学会の前身である日本浮世絵協会(第二次・第三次)を設立し、会長などをつとめました。また、戦後間もない時期に『北斎論』を刊行し北斎研究の分野でも活躍し続け、浮世絵を美術史の中で学問的に位置づけることに尽力しました。
これらの研究活動の中で収集された楢﨑コレクションは、美術史研究上、貴重な美術資料・歴史資料を含んでおり、すみだ北斎美術館では約480点を所蔵しています。本章では、楢﨑コレクション作品の中から北斎をはじめ様々な絵師、時代、形態のものを、一部楢﨑氏が著した作品解説とともに紹介します。
北斎の画法を受け継いだ葛飾派の絵師の作品
蹄斎北馬「夕立図」
蹄斎北馬(ていさいほくば)は、北斎の門人の中でも優れた浮世絵師として知られ、北斎の画法を継承しながら独自の画風を確立、文政年間(1818-30)からは肉筆画(*2)に注力し、美人画を多くのこした浮世絵師です。
楢﨑宗重コレクションの本作は、縦54.3cm、横86.0cmの大きな画面に、夕立に見舞われる峠の茶屋の様子が描かれた肉筆画です。茶屋でくつろぐ人や、商いをする人々、雨宿りする人など様々な人物の様子が詳細に描き込まれており、風俗描写に秀でた北馬の特徴をよく表す作品です。
*2 肉筆画| 浮世絵の中でも、錦絵や摺物といった木版画とは異なり、絵師が絵筆で直接紙や絹に描いた作品のことを指します。
蘆雪がこだわった犬の毛の質感
長沢蘆雪「洋風母子犬図」
長沢蘆雪(ながさわろせつ)は、円山応挙に学んだ江戸時代中期の画家です。
母犬と乳を飲む子犬が描かれた本作は、胡粉をはじめ日本の伝統的な画材が使われていますが、西洋の油彩画を強く意識して描かれた作品です。毛並みの1本1本がわかるほど描きこまれていることから、熱心な写生や質感の追及がうかがえます。
楢﨑氏と直接交流があった
版画家・川瀬巴水の作品
川瀬巴水は(かわせはすい)は、大正から昭和時代に活動した版画家です。巴水の生前から交流があった楢﨑氏は、巴水に取材を重ねて論考を発表するなど、早くから巴水の版画芸術の評価を試みました。楢﨑コレクションの「雪の寺」は、小品(17.8cm×12.9cm)ながらも、「旅情詩人」とも称される巴水の作風をよく表しています。
開催概要
学者の愛したコレクション ―ピーター・モースと楢﨑宗重―
会期 2021年10月5日(火)~12月5日(日) ※前後期で一部展示替えあり
前期|2021年10月12日(火)~11月7日(日)
後期|2021年11月9日(火)~12月5日(日)
休館日 毎週月曜日
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
主催 墨田区・すみだ北斎美術館
お問い合わせ 03-6658-8936 (9:30~17:30 ※休館日を除く)
公式サイト https://hokusai-museum.jp/gakusha/
●新型コロナウイルス感染予防・拡大防止のため、会期・開館時間・観覧料・イベント・講演会の開催など変更、中止の可能性がございます。
●最新の状況は、すみだ北斎美術館公式ホームページにて最新情報をご確認ください。
企画展観覧料 ※AURORA(常設展示室)観覧料含む
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一般 | 高校生 大学生 | 65歳以上 | 中学生 | 障がい者 | 小学生以下 |
個人 | 1,000円 | 700円 | 700円 | 300円 | 300円 | 無料 |
団体 | 800 円 | 560 円 | 560 円 | 240 円 | 240 円 | 無料 |
●本展のチケットは、会期中観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)をはじめ全ての展示をご覧になれます。
●団体でのご来館は、当面の間、受付を行いません。
※「楢崎宗重」の名前について、機種依存文字に該当するため通常の「崎」で代用しておりますが、「立崎」が正式です。
すみだ北斎美術館
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 毎週月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌平日)、年末年始(12月29日~1月1日)
所在地 〒130-0014 東京都墨田区亀沢2-7-2
お問い合わせ 03-6658-8936 (9:30~17:30 ※休館日を除く)
公式サイト https://hokusai-museum.jp/
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アクセス 都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口より徒歩5分
JR総武線「両国駅」東口より徒歩9分
JR総武線「錦糸町駅」北口より墨田区内循環バスで5分