公益財団法人東京都歴史文化財団のプレスリリース
いまや認知症は身近な存在となりましたが、あなたは認知症に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。かつて経験したことがない超高齢社会で、100年以上続く長い人生を私たちはどのように生きたら良いのか、そして長く生きることを喜べる社会にするにはどうしたら良いのか、誰しもの大きな課題です。
音楽で認知症を緩和したり、病気を治すことはできないかもしれません。しかし言語や身体機能が衰えてしまっても、音楽やアートがあなたの〈ことば〉〈表現〉となり、あなたの生活に社会性や創造性を与えてくれるとしたら…。この公開レクチャー&ディスカッションでは、高齢社会におけるウェルビーイング、クリエイティブ・エイジングとは何かをレクチャーとディスカッションで考えます。
現在、世界的に多様性やSDGsへの社会的関心が高まっています。特に日本では人生100年時代を誰もが心豊かに暮らせる共生社会の実現に向けて、自治体や様々なセクターが連携したアクションが各地で生まれるようになりました。
一方で、アート界では近年、障害者芸術に関する法整備が進むなど、高齢社会や認知症、社会的孤立などの社会課題に対して、アートが持つ多様性や包摂性に着目したインクルーシブ事業やアクセシビリティ向上にむけた施設整備も行われ始めています。
東京文化会館と豊中市立文化芸術センターは、2022年8月から11月にかけて「クラシック音楽と高齢者」「クリエイティブ・エイジング」をテーマに、以下4つを目的として、世界的に先進的な取組みを行う室内管弦楽団マンチェスター・カメラータと日英共同事業を実施しました。
(1)人々が音楽や芸術を通じて、あらゆるライフステージで喜びや生きがいを共有できる音楽プロジェクトの日本国内での展開と充実を促す。
(2)上記を実現するために必要な具体的なスキルや思考を備えた人材を育成する。
(3)この領域における現状や課題への理解形成と意識醸成を促すとともに、芸術文化が社会に果たしうる役割や可能性を検討する。
(4)英国と日本の専門人材の交流、および関係団体のネットワーク構築に寄与する。
3カ月におよぶ協働では、マンチェスター・カメラータの認知症対応プログラム「Music in Mind」を参考に、認知症のある方むけの音楽プログラムについて芸術団体の視点から考えるオンラインレクチャーや音楽家のためのトレーニング、実際に当事者をお迎えしたワークショップを行いました。
この公開レクチャー&ディスカッション第4回では、マンチェスター・カメラータと東京と豊中での実践をふりかえりながら、協力・参加くださった様々な機関の方にお話しいただきました。
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Music Program TOKYO Workshop Workshop! コンビビアル・プロジェクト
社会包摂につながるアート活動のためのレクチャー&トレーニング
公開レクチャー&ディスカッション 第4回
「音楽とクリエイティブ・エイジング――マンチェスター・カメラータとの協働をふりかえって」
【内容】
1. 基調講演 [約30分]:日下菜穂子(同志社女子大学現代社会学部 学部長/教授)
「クリエイティブ・エイジング―アートによる創造性と人生100年時代」
2. 活動報告 [約10分]:杉山幸代(東京文化会館 事業係)
3. オープン・ディスカッション [約60分]
【登壇者】
日下菜穂子(同志社女子大学現代社会学部 学部長/教授)
小川和代(日本センチュリー交響楽団 ヴァイオリン奏者)
ヘレナ・ブル(マンチェスター・カメラータ シニア・プロジェクト・マネジャー)
アミーナ・フサイン(マンチェスター・カメラータ首席フルート奏者/音楽療法士、Music in Mind音楽家)
ナオミ・アタートン(マンチェスター・カメラータ首席ホルン奏者/Music in Mind音楽家)
名倉友紀(特定非営利活動法人オリーブの園)
川野圭一(社会福祉法人千代田区社会福祉協議会)
柿塚拓真(神戸市民文化振興財団事業部演奏課 演奏担当課長)
上段左から:日下菜穂子、小川和代、ヘレナ・ブル、アミーナ・フサイン
下段左から:ナオミ・アタートン、名倉友紀、川野圭一、柿塚拓真
【参加者コメント】
〈英国〉
・日本の音楽家や芸術団体がコロナ禍でも工夫をしながら、様々な場で実践を継続していることを体感できた。多世代を対象にしたワークショップなど、英国ではまだあまり着手できていないジャンルにも挑戦でき、嬉しかった。
・英国と日本では文化的な違いがあるとより強く感じた。今回は私たちの英国での実践内容に基づいたトレーニングを提供したが、今後は日本の皆さんから学ぶ機会を期待している。
〈日本〉
・共生社会への関心は高まる半面、社会格差や孤立は増大傾向にある。特性や個性を魅力に変えられるアートのマジックを介したコミュニケーションが、人々の関係性の新しい作り方を提示してくれると確信した。(社会福祉団体職員)
・認知症や病気、施設に暮らしていても、どのような状況でも人生において音楽やアートを楽しめることは、心の自由という意味でとても大切ではないかと日々感じている。現行の介護現場では芸術を取り入れられる部分が少ないが、どのようにしたら芸術的要素を取り入れられるのか、まず考えることが必要だ。(NPO法人職員)
・オンラインのトレーニングも内容の濃いものでしたが、実際の対面でしか学べないことがたくさんあった。もしこのトレーニングを音楽家だけでなく、日本の医療福祉の専門家が受けたなら、認知症の治療や対応の仕方、世の中のマイナスなイメージはもっと変わっていくと思う。(音楽療法士)
・言葉では叶わないコミュニケーションがその場の流れる音楽とマイスターによってなごやかにできてしまう不思議。それに体感的に気づいた貴重な経験となりました。プログラム内容も、強制はいっさいなく、参加者自身が自然に楽器やリズムを楽しめて、ちょうどよかったです!(認知症のある方のためのワークショップ参加者・介助者)
・劇場や芸術団体がそれぞれの地域の特性を生かして、地域の社会福祉法人やNPO、自治体と連携し、実績を作りながら、財政的にも持続可能な仕組みを作っていくことが、これから重要になるだろう。(音楽関係者)
【詳細・申込み受付】
詳細:https://www.t-bunka.jp/stage/18030/
動画配信期間:2023年2月16日(木)14:30~4月28日(金)17:00
料金:視聴無料(要申込み)
申込ページ:https://tbk-openlecture4-jp.peatix.com/
【内容に関するお問合せ】
東京文化会館 事業係 コンビビアル・プロジェクト担当
Email: convivial_info@t-bunka.jp
TEL: 03-3828-2111
主催:東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団 東京文化会館
協力:豊中市市民ホール等指定管理者
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会/ブリティッシュ・カウンシル
◎『あらゆる人が音楽で交流できる社会をめざして』
東京文化会館ではアートによる多元共生社会の実現に向けて、社会包摂につながる様々な取り組みを行っています。
https://www.t-bunka.jp/about/on_stage.html
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