NHK | 日本放送協会のプレスリリース
NHK放送技術研究所(技研)は、実世界に近い自然な見え方で、視覚疲労の少ないバーチャルリアリ
ティー(VR)体験の実現を目指し、「ライトフィールド方式」を採用したヘッドマウントディスプレー(以下、ライトフィールドHMD)の開発を進めています。
今回、役割が異なる2種類のレンズを接触して配置する独自の光学系と、高精細なマイクロディスプレーを組み合わせることで、従来よりも大幅な薄型化と高精細化を両立したライトフィールドHMDを開発しました(図1)。



図1 開発したライトフィールドヘッドマウントディスプレー
【開発の背景:なぜ従来のVRは目が疲れるのか?】
一般的なVRゴーグル(HMD)は、2枚のディスプレーの映像をそれぞれレンズで遠方に拡大表示し、左右の目に少しずれた映像(視差)を見せることで立体感を作り出しています。しかし、この二眼方式には「視覚疲労」という課題がありました。
映像上の物体が前後に動いても、目のピント(焦点)はレンズで拡大されたディスプレーの位置に固定されたままとなることで、「視差によって知覚される奥行き位置」と「目のピントを合わせている位置」が一致せず、疲労や不快感の要因になると考えられています。
【「ライトフィールド方式」による解決】
ライトフィールドは、物体から放たれて目に到達する「光線の集まり」を再現する技術です。
メリット:実世界で物を見るときと同じように、見たい位置に目のピントを合わせることができます
効果:長時間視聴しても疲れにくい、自然な3次元映像の表示が可能になると期待されています
【技術的ポイント①:光学系の大幅な薄型化】
従来のライトフィールドHMDには、装置が大きくなってしまうという課題がありました。
■従来の仕組み(中間像を形成して拡大)
従来のライトフィールドHMDは、ディスプレーとレンズアレー(※1)で一度空中に中間像(※2)を形成し、それを接眼レンズで拡大することで遠方に3次元映像を表示していました。しかし、この方法では、レンズアレーと接眼レンズの間に約4cmの間隔が必要となり、HMDが大きくなることが課題になっていました(図2)。
(※1)レンズアレー:微小なレンズを平面状に並べた光学素子
(※2)中間像:レンズアレーによってディスプレーの背後に形成される微小な3次元映像

図2 ライトフィールドHMDの光学系の比較
■今回の新技術
今回、レンズアレーと接眼レンズを接触配置する新しい光学系を考案しました。接触させることで実質的に1枚の光学素子として機能させ、光線制御と集光を同時に実現するとともに、この光学系に適した要素画群像の生成手法を組み合わせることで、中間像を介さず直接3次元映像を目に届けることに成功しました。光学系の奥行きを従来比で79 %削減し、大幅な薄型化を達成しました。
【技術的ポイント② : 高精細な映像をリアルタイムで表示】
薄型化に加え、「高精細マイクロディスプレー」を採用しました。さらに、膨大な光線の計算を高速で行う「レイトレーシング技術(※3)」による要素画像(※4)の高速生成と組み合わせることで、高精細な3次元映像をリアルタイムに表示できることを確認しました(図3)。
(※3)レイトレーシング技術:光源から出て光学系を通過する光線の経路を追跡し、映像を生成する描画手法
(4)要素画像:3次元映像をつくる光線の色や明るさの情報が含まれた映像

【今後の展望】
本技術は、5月28日(木)~31日(日)に開催する「技研公開2026」で展示します。
今後は、3次元映像の高精細化と表示範囲の拡大に向けた改良を進め、教育、医療、エンターテインメントなど、さまざまな分野で活用できる、自然で視覚疲労の少ない快適なHMDの実現を目指します。
技研公開2026 「拓く、支える、これからも」
■開催期間:5月28日(木)~31日(日)
午前10時00分~午後5時00分
(入場は終了30分前まで)
■会場:NHK放送技術研究所(東京都世田谷区砧1丁目10-11)
■入場:無料(事前予約不要)


